Special Issue
PCの再定義から生む、新たなビジネスチャンス データレスクライアント座談会2026
2026/09/17 09:00
週刊BCN 2026年09月14日vol.2120 第2部掲載
急速に拡大する市場 VDIからの置き換えも進む
セキュリティーの向上が社会的な要請となる中、サイバー攻撃や、持ち出しPCの紛失・盗難などによる情報漏えいリスクへの対策が、以前にも増して強く求められるようになっている。この課題を解決する手段として、PC内にデータを残さない「データレスクライアント」への注目が高まっている。コストがリーズナブルで、今あるPCを活用でき、利便性の低下を最小限に抑えられるメリットがあるからだ。(司会・進行 週刊BCN 編集長 日高 彰)

このソリューションに注目した「週刊BCN」では、2022年、24年の2回にわたり、ベンダー各社に市場のポテンシャルを聞く「データレスクライアント座談会」を開催。その後25年に、ソフトウェア協会(SAJ)の技術委員会内でデータレスクライアント研究会が立ち上がり、いよいよ業界の中でデータレスクライアントの存在感は重みを増してきた。
26年度のIT市場では、「サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策(SCS)評価制度」の開始に伴いセキュリティー製品の需要が高まっているほか、販売パートナーにとっては、メモリー価格が高騰する中でいかにコスト効率の良いシステムを提案するかが大きな課題となっている。SAJデータレスクライアント研究会で活動するアップデータ、e-Janネットワークス、ZenmuTech、ソリトンシステムズ、横河レンタ・リースの各キーパーソンに、市場動向と販売戦略を聞いた。
市場は急速に拡大 コスト・運用面で“脱VDI”の有力選択肢に
──(司会・進行:週刊BCN編集長 日高彰)調査会社・MM総研の最新のレポートでは、2027年度の国内データレスクライアント市場の売上高は、4年前に比べて3.8倍に成長すると予測されています。SAJデータレスクライアント研究会の皆さんも、日々のビジネスの中でこの勢いを実感されていますか。小川(アップデータ) 急速に伸びているという実感を強く持っています。予測値は4年で3.8倍ということですが、私の肌感覚としては、それを上回る勢いに感じます。特に顕著な変化はターゲット層の拡大です。もともとデータレスクライアントは、通常のいわゆる「FAT PC」は不安だがVDIには手が届かない、中堅・中小企業が主要なターゲットでした。しかし昨今は、VDIを全社規模で運用していたエンタープライズ層が、本格的に移行を検討するというケースが増えており、手掛ける案件の規模自体が大型化しています。
代表取締役社長
小川 敦
楠木(e-Janネットワークス) 当社のビジネスも非常に好調で、昨年比で3倍近い伸びを記録しています。要因の一つは既存のVDI環境からの乗り換え需要の顕在化、もう一つはネットワーク分離機能を持つ製品への強い引き合いです。官公庁・地方自治体や文教向けでは、インターネット接続系と内部ネットワークの分離が必須ですが、コスト面から端末の集約が求められており、データレスクライアントの仕組みがフィットします。一般企業は本格的な普及、拡大フェーズに入りつつあり、公共セクターでは大規模な導入検討が進んでいます。
執行役員 製品企画・マーケティング・カスタマーサクセス担当
楠木慎二
岡田(ZenmuTech) 当社では、市場が伸びている理由は、コロナ禍を契機としたテレワークの急速な普及と、その後のハイブリッドワークの定着という変化に行き着くと考えています。PCのモビリティーが劇的に高まる中、どこにいてもオフィス同様に安全かつ快適に業務ができる環境が強く求められています。その観点で、Web会議を利用する際のパフォーマンスの問題や使い勝手の悪さなど、VDIに対して従業員から不満の声があがっている企業では、データレスクライアントに追い風が吹いている形です。
パートナー営業部 部長
岡田昌徳
光井(ソリトンシステムズ) 当社製品のニーズはリモートワーク環境の見直しと、公共・医療・金融を中心としたネットワーク分離の二つに大別でき、特に後者が大きなボリュームを占めています。ここではVDIが従来的な選択肢でしたが、ハードウェアとライセンスの高騰でその導入が困難になり、必要十分な代替ソリューションとして選ばれている状況です。インターネット分離だけでなく、マイナンバーなど機微な情報を取り扱う特定業務を、安全な隔離環境で実行するというニーズも旺盛ですね。民間企業においても、データレスクライアントの認知は拡大している印象があります。
ITセキュリティ事業部 プロダクト推進部 担当部長
光井一輝
松尾(横河レンタ・リース) 当社でも、データレスクライアント領域は年率2桁成長を継続しており、特に自治体からの引き合いが急増しています。一般企業でも、ランサムウェアなどのサイバー攻撃への対策として、エンドポイントのあり方をゼロベースで見直す動きが広がっており、端末にデータを保持させないデータレスクライアントという解に行き着くケースが多くなっています。ITインフラの有力な選択肢の一つとして、市場に確実に定着してきたと感じます。
デジタルサービス事業本部長
松尾太輔
──皆さんのお話の中で共通して、VDIからの移行という言葉が出てきました。“脱VDI”のニーズと動向についてもう少し詳しく聞かせてください。
小川(アップデータ) VDIの構築・維持には、莫大な初期投資と高い専門知識を持つ運用人材が不可欠です。また、スケールアップ/ダウンの柔軟性にも限界があります。運用負荷の高さとコストの硬直性に限界を感じた企業が、より身軽で柔軟なデータレスクライアントへ移行を進めていると思います。
岡田(ZenmuTech) 当社もその認識です。ただ大企業の場合、全社の端末をVDIからデータレスクライアントへ一斉に切り替えるお客様もいらっしゃいますが、まだ少数で、適材適所なハイブリッド運用が現実的です。
光井(ソリトンシステムズ) 移行のタイミングという点では、ハードウェアやソフトウェアの保守切れが大きなトリガーになっています。全業務を一律に移行するわけではありませんが、部門ごとの業務特性や必要なセキュリティーレベル、コストを総合的に勘案した結果、データレスクライアントが選択されています。
松尾(横河レンタ・リース) 半導体不足や円安の影響で、VDIのハードウェアや仮想化基盤のライセンス費用まで含めたコストを見直した際、全員にVDI環境が必要なのかという疑問に企業は直面します。最適なPC環境を検討した結果、データレスクライアントに置き換えるケースが増えています。
楠木(e-Janネットワークス) 特に自治体など予算の制約が厳しい組織では、既存のVDI環境をそのまま維持・拡張することが財政的に困難なケースがあります。そこでコストパフォーマンスに優れ、かつ同等以上のセキュリティーを担保できるデータレスクライアントへのリプレース案件が急増しています。
SCS評価制度が市場拡大の追い風に
──26年度末からの開始が予定されるSCS評価制度は、市場の拡大に向けて、どのようなポテンシャルを秘めているとお考えですか。松尾(横河レンタ・リース) 確実に市場の追い風になります。特に「サイバーハイジーン(サイバー衛生管理)」の観点から、その価値が再評価されるでしょう。サイバーハイジーンの基本は、OSやアプリケーションの脆弱性を放置せず、最新パッチを適用し続けることです。一方、PC内のストレージがユーザーデータで圧迫され、空き容量が少ない状態だと、パッチ適用が失敗することが多いことが分かっています。このため、端末の障害やデータ消失を恐れてパッチ適用を後回しにするケースがあります。データレスクライアントであれば、PC内に重要なデータが存在しないため、容量ひっ迫によるアップデート失敗を可能な限り回避でき、たとえアップデートでOSがクラッシュしても、別のPCに交換するだけで即座に業務を再開できます。この身軽さは、運用負荷を下げ、常にクリーンなセキュリティー状態を保つ上で大きな強みです。
光井(ソリトンシステムズ) 当社では「SCS Navi」という評価制度適合診断サービスを提供し、高い評判を得ています。現時点では「何をどう進めればよいか分からない」というお客様も多いため、コンサル的な要素も含めてパッケージ化し、リーズナブルに提供しています。データレスクライアントの観点では、サプライチェーン間のデータのやり取りにおける情報漏えいリスクの低減に寄与できると考えています。例えばSCS評価制度では「取引先との契約終了時に機密情報を回収または破棄」といった項目がありますが、実運用でその証明は困難です。データレスクライアントで「データを見せ、使わせるが、ローカルには残さない(渡さない)」という環境を提供すれば、スマートな解決策になります。当社の仕組みでは接続経路と多要素認証がバンドルされ、アプリ配布だけで済むため、子会社や取引先などへの展開も容易です。
岡田(ZenmuTech) 当社は金融機関のお客様も多く、金融向けのフレームワークである「CRI Profile」への準拠も重視しています。データレスクライアントは端末側のセキュリティー対策であり、網羅性の点から見ればパーシャル(一部)なソリューションです。しかし、インシデント発生の際に「いかに迅速に復旧できるか」という点をSCSでは評価します。業務の継続性という観点で、当社のソリューションはネットワークの障害が発生してもオフラインで業務が継続できます。またディザスタリカバリ(DR) オプションもありますので、レジリエンスが高まります。提案の際も、この復旧の迅速さをアピールしています。また、VDIのような重厚長大ソリューションではサプライチェーンの末端まではカバーしきれませんが、データレスクライアントであれば10名、20名規模の企業でも導入でき、カバー範囲が広いのが強みです。
楠木(e-Janネットワークス) SCS自体は追い風になると思います。ただ、いつから本格運用されるのかなど制度の詳細がまだ曖昧な部分もあり、お客様側もまだそこまで熱が入っていないと感じます。また、データレスクライアントはサプライチェーン全体に対するソリューションの一部でしかないので、他社のソリューションと組み合わせた提案や、情報処理推進機構(IPA)の「サイバーセキュリティお助け隊」のような枠組みの中で、どのように担いでもらうか仕掛けを考えていく必要があります。
小川(アップデータ) インシデントの発生源をたどると、サプライチェーン末端の中小企業に行き着くケースが多いですが、そこまでをVDIでカバーするのはコスト的に不可能ですので、サプライチェーンセキュリティーの観点では、中小企業に向けたデータレスクライアントの提案が間違いなく大きな商機になります。ただ注意すべきなのは、仕組みを十分に理解していないお客様に無理に販売してしまうと、「思っていたのと違う」と解約率の悪化を招き、ビジネスとして長続きしません。したがって、従業員数名といった小規模事業者までではなく、その一つ上のレイヤーあたりまでが、データレスクライアントが適合する現実的なターゲット層と捉えています。
各社の異なる方式とターゲットとする顧客層
──皆さんそれぞれの製品の仕組みと、どのような顧客の課題解決に最も適合するのかを教えてください。小川(アップデータ) 当社の「Shadow Desktop」は、クラウド上のストレージ領域を仮想的なドライブとしてマウントする方式です。ユーザーはCドライブへの保存感覚で操作できますが、データはクラウドストレージへ同期され、ローカルには残りません。「Amazon Web Services」「Microsoft Azure」「Google Cloud」といった主要パブリッククラウドのオブジェクトストレージ、「Box」のような法人向けクラウドストレージともシームレスに連携できるのが強みです。既存のPCの使い勝手を一切変えずに、データレス化を実現したいという運用を志向する中堅・中小企業や、業種では監査法人のお客様に広く導入されてきましたが、最近では、ある中央省庁で数万台規模の導入例もあります。
楠木(e-Janネットワークス) 当社の「CACHATTO One」のデータレスクライアントには、「セキュアコンテナSwitch」と「セキュアコンテナAD」の2製品があります。Switchは専用のWindowsアカウントによる隔離業務領域を生成し、端末内の論理分離により、端末1台で二つのネットワークを使い分ける業務が実現できます。お客様の多くは自治体、文教分野です。もう一つのADは、仮想領域(セキュアコンテナ領域)しか使用させない製品で、サインアウトすれば仮想領域は一切消去され、独自のVPN接続機能によりクラウド/オンプレミスへのセキュアなアクセスができます。この仕組みにより持ち出しPCで安全に業務利用ができます。お客様は情報通信、製造、金融、士業を中心とした一般企業が多くを占めます。
岡田(ZenmuTech) 当社の「ZENMU Virtual Desktop」の特徴は、「秘密分散技術」という独自アプローチの採用です。これは、データを暗号化するのではなく、数学的に意味を持たない複数の「分散片」に分割し、PCと、クラウド上などの外部に分けて保存する仕組みです。この二つの分散片が揃わないと元データに復元できないので、PCを外出先で紛失したり盗難に遭っても、クラウド側のアクセスを停止するだけで、PC内に残るのはただの無意味なデータとなり、情報漏えいのリスクを完全にゼロにできます。端末が紛失しても、ZENMUクラウドサービスから各ユーザーに割り当てられている仮想ドライブの状態(ログ)を閲覧し、行動証跡をしっかりトレースできます。このような特徴から金融系からのニーズが圧倒的に多く、監督省庁へのインシデント報告を不要にしているお客様もいらっしゃいます。
光井(ソリトンシステムズ) 当社の「Soliton Secure Workspace」は、PC上に生成したセキュアな隔離領域の中で、普段使用しているWebブラウザーやオフィスソフトなどの業務アプリケーションを動作できるようにするものです。隔離領域から外のローカル環境へは、データコピーや持ち出しができないよう厳密に制御しています。強みはアプリケーションウィンドウとしてデータレスな隔離領域を扱える点で、1台のPCでLG-WANとインターネット接続環境を分離したい自治体や、電子カルテシステムと外部ネットワークを切り離したい医療機関、高い機密性を求める金融機関などにおいて、厳格な情報漏えい対策と利便性の両立を実現しています。最近は、ITとOTのセキュアな分離が求められる製造業からのニーズも高まっています。
松尾(横河レンタ・リース) 当社が「Flex Work Place」として展開するデータレスPCソリューションは、リダイレクト技術を採用しています。PCの読み書きのすべて、ユーザーのプロファイルやデスクトップ上のデータを、社内のファイルサーバーや「OneDrive」、「Box」などのクラウドストレージに直接保存(リダイレクト)させる方式です。長所は低価格、柔軟な設定、そしてクラウドストレージの標準機能との連携です。設定に手間が掛からないだけでなく、お客様の環境に合わせて細かな設定ができます。クラウドストレージの標準機能を活用して連携しているため、データ共有やリモートでの共同作業、クラウドストレージが提供するAI機能の活用を妨げません。
新パートナーへアプローチ PCの付加価値を高める提案
──メモリー価格の大幅な上昇でIT投資の計画が見直されている中で、データレスクライアントを活かせる面はありますか。そこに対してどのような提案がフィットすると思いますか。岡田(ZenmuTech) 昨年はWindows 10のサポート終了(EOS)に伴う特需が大き過ぎたということがありますが、「今年何か新しい提案をしなければ」という危機感を持たれている販売パートナーの方々は多いでしょう。昨今の状況は、販売店の皆さんに毎年売上が立つSaaS型のソリューションとして目を向けてもらうきっかけになると思いますし、当社としても新しいパートナーにアプローチするチャンスです。
小川(アップデータ) 企業にとってPCの調達コスト上昇は頭痛の種です。その点からも、個々のPCに大容量ストレージを求めず、企業が既に保有しているPCを活用して業務環境を構築できるデータレスクライアントは魅力的な提案になると考えています。
楠木(e-Janネットワークス) パートナーの方々にとってはVDIのほうが案件規模は大きいですが、一般企業がVDI用のサーバーやストレージを購入するのはもはやコスト的に難しく、特別な要件への対応に限られていくと思います。その点でも、今あるPCをそのまま活用してセキュアにできるデータレスクライアントは有効な提案ですね。
松尾(横河レンタ・リース) 実際、今までVDIの構築を手掛けていたベンダーの方から、データレスクライアントを扱いたいという声をいただき、販売パートナー契約につながるケースは増えていますね。
光井(ソリトンシステムズ) 今は「ハードウェアに依存しない提案」が求められており、既存端末の活用+SaaS型のデータレスソリューションをご案内するケースが増えています。また全面的なシステム・ネットワーク更改にてサーバー調達の目途が立たないために、ソリトンのアプライアンスモデルならば即納できるという理由で目を付けていただき、販売パートナーが大きな商談を獲得されるという例も出てきました。
ユーザーが感じている 不安の解消に努める
──ユーザーにデータレスクライアントを提案する際、どのようなお話が最も“刺さる説明”になりますか。また、導入にあたってユーザー企業が抱く不安をどう解消しているのか教えてください。小川(アップデータ) Shadow Desktopは、PCのデータをクラウドへアップロードし、手元にデータが存在しない状態にします。クラウドから開いたファイルは一時的にPC上にキャッシュされますが、高度な暗号化処理により、HDDやSSDを別のPCに換装しても読み取りはできません。それでも「キャッシュが残るのは不安」という声もあるので、データ破壊レベルの消去ソフトをオプションで用意して、万全を期しています。例えば、5回連続でログインをミスする、あるいは2週間ログインしていないといった場合、OS自体を含め消去するなどの設定になっています。
楠木(e-Janネットワークス) 当社の場合、お客様はセキュリティーに加え運用も心配されるケースが多いので、その懸念の解消に努めています。販売パートナー各社も取り扱う製品が多岐にわたるので、現場SEの方々がキャッチアップしきれないことも少なくありません。そこで各種サポートメニューを用意し、導入前のPoCの段階からパートナーの方々と共にお客様に寄り添い、「これなら安心して利用できる」と確信してもらえるようサポートしています。
岡田(ZenmuTech) 秘密分散技術により意味のあるデータが残らず、ネットワークの影響を受けずオフラインでも利用できる反面、分散管理するので、データ保全に関してはご指摘を受けます。意味のあるデータをバックアップしてもセキュリティー面では問題が残りますので、分散ファイルのバックアップやローバックの機能で、予期せぬPCやネットワークのトラブル時にもデータが保護できるような仕組みを施しています。また今、取り組みを進めているのは、クライアントだけでなく他に配置されたデータも保護の対象にすることで、最終的にはそれら全てをオーケストレーションして全体を守るという世界をつくることを目指しています。
光井(ソリトンシステムズ) データレスクライアントに触れたことがないお客様は、レスポンスや、各ユーザーのやりたいことが本当にできるのかを気にされます。当社は、お客様がしっかり検証し納得できるよう、販売パートナーをサポートし、技術支援やトレーニング、パートナーサイトの運営を通じて、商談のバックアップを丁寧におこなっています。また、ネットワーク分離に関連するお客様からは、業種ガイドラインへの対応をよく問われますので、その準拠の徹底は常に意識しています。連携する当社の多要素認証サービス「Soliton OneGate」も、2024年5月にISMAP(政府情報システムのためのセキュリティー評価制度)を取得していますので、それもお客様への強いアピールになっていると感じます。
松尾(横河レンタ・リース) お客様がどうしてもキャッシュ上のデータを気にされるのなら、VDIをお選びいただいた方がいいと思っています。当社の営業担当者にも、そこは厳密にご説明するよう釘を刺しています。ちょっと怖いのは、PCの管理者権限を現場のユーザーに与えているケースを、大手企業でも見かけることです。その状態ではデータレスクライアントにする意味が無くなりかねないので、「データレスクライアント導入よりも、ユーザーから管理者権限をはく奪するのが先です」とお伝えしています。当社には、ユーザーに権限を与えずに、管理者が許可したアプリケーションだけをユーザー自身でインストールできるようにする「AppSelf」というツールがあります。それをセットにして、セキュリティーと利便性を両立するソリューションとして提供しています。
クラウドストレージ、アプリなど 組み合わせ提案でクロス・アップセルへ
──SIerや販売代理店にとって、データレスクライアント単体ではなく、他の製品と組み合わせていかに案件を高付加価値化するかは重要です。どんな組み合わせが有効でしょうか。松尾(横河レンタ・リース) 相性が良いのは、やはりクラウドストレージとのセット提案です。もう一つ、当社では「Device as a Service」を展開しており、PCの提供形態の一つにデータレスPCを組み込んでいます。当初は、セキュリティー目的でデータレスPCを導入するお客様が8割を占めましたが、後に、PCの故障やリプレースの際にデータ移行をしなくて済むというメリットを発見いただいています。Device as a ServiceはPCのマネージドサービスなのですが、保守やサポートの際も、あまり手間を掛けずに済みますし、パートナーの方々にはPC運用の中に組み込んでいただくようお薦めしたいと思います。
光井(ソリトンシステムズ) やはりクラウド型のアプリケーションとの組み合わせが、イメージしやすいソリューションになりますよね。当社では、例えばBoxで取り扱うデータの分散・漏えい対策として、古くからデータレスクライアントソリューションを提供してきました。ストレージ以外にも、「Salesforce」のような営業支援システムをセキュアに利用する仕組みとしても機能します。また当社サービスになりますが、クラウドにアクセスするための認証・SSO基盤(Soliton OneGate)なども、併せて価値提供できるソリューションとして、パートナーの方々に多く取り扱っていただいています。
岡田(ZenmuTech) PCのライフサイクルマネジメントの一環でのVDIの置き換えは大きな流れですが、それとは少し異なる系統として、SASE(Secure Access Service Edge)の導入を契機にデータレスクライアントが採用されるケースも増えています。その背景には、ワークスタイル変革の中でのロケーションフリー指向があります。そうなるとPCのモビリティーが高まるため、その環境下で安全を担保する有効な手段としてデータレスクライアントが選ばれます。また、当社では“三種の神器”と呼んでいますが、当社製品のZENMU+EDR+ゼロトラストという組み合わせの親和性が高いと考えています。
楠木(e-Janネットワークス) 当社では、CACHATTO Oneのシリーズとしてセキュアコンテナを始めとしたさまざまなサービスをラインアップしており、単一契約の下で、各種ライセンスを追加購入いただくことで、そのサービスを使える構成になっています。部門や業務内容、働く場所によってクラウドVPNやリモートデスクトップ、セキュアブラウザーを使い分けるといったように、一つのユーザー登録の中で各種サービスをこのユーザーに割り当てることができます。つまり、一つのサービスを販売してもらうと、他の色々な製品が売れていくという、アップセルもクロスセルも進めやすいビジネス戦略を取っています。
小川(アップデータ) パートナー支援の文脈では、当社では今年、直間比率を大幅にパートナー向けに振り分ける方針です。2019年まではパートナー販売比率が9割以上でしたが、コロナ禍でパートナーの方々が外に足を運べなくなりました。当時はデータレスクライアントの認知度が低く、当社もかなり苦しい状態だったため、展示会への出展をはじめ直販に力を入れたことで、昨年は直販比率が3割にまで高まっています。今年は、その比率を以前の状態、あるいはそれ以上に間接販売へシフトし、パートナー各社とのアライアンスを強化します。そのため新たなパートナー制度の設置、認定制度なども計画しています。
──最後に販売パートナーに向けた支援策、メッセージをお願いします。
楠木(e-Janネットワークス) 既存のパートナーに向けて、さらに充実した支援策を打つことに加え、新たなパートナーの方々との関係も築いていきます。現状は大都市部に偏りがちですが、全国で広く案件を拾い上げていくためにも、地方のパートナーの方々とのつながりを深めていきたいと考えています。
岡田(ZenmuTech) 当社もパートナーの販売比率が9割以上ですが、当社製品の取り扱いに積極的な方々とそうではない方々にどうしても分かれます。そこで、パートナー制度のリニューアルを進めており、ビジネスを活性化している方々をより強力に支援する施策を実施します。もう一つ、お客様環境の運用をしっかり担えるパートナーの認定制度も設ける予定です。
光井(ソリトンシステムズ) お客様へのハイタッチ営業を行いつつも、早い段階でパートナー様と商談連携し、技術サポートを含め伴走することで、中長期的な協業関係を築くことに注力しています。今年5月末に開催したパートナーカンファレンスでは、エグゼクティブ層を中心に220名を超えるご参加をいただきました。最近は、地方のパートナーの方々も気軽に参加できる二次店向けのパートナープログラムなどが良く機能しており、沢山のご加入をいただいています。
松尾(横河レンタ・リース) エンドポイントセキュリティーの選択肢にデータレスクライアントが入ってきたことから、パートナーに提案いただく案件が増えています。それを後押しすべく、データレスPCの露出を高める目的で展示会への出展を増やしています。パートナーがお客様に向けたプロモーションを行うためのマーケティング費用支援(MDF)も提供していますので、ぜひ、活用いただきたいと思います。
小川(アップデータ) これまで得意とした民需に加え、昨年から大規模な文教、官公庁の案件も獲得できてきたので、そこを得意とするSIerの方々と組み、今よりレイヤーを一段上げたビジネスにも注力したいと考えています。
急速に拡大する市場 VDIからの置き換えも進む
セキュリティーの向上が社会的な要請となる中、サイバー攻撃や、持ち出しPCの紛失・盗難などによる情報漏えいリスクへの対策が、以前にも増して強く求められるようになっている。この課題を解決する手段として、PC内にデータを残さない「データレスクライアント」への注目が高まっている。コストがリーズナブルで、今あるPCを活用でき、利便性の低下を最小限に抑えられるメリットがあるからだ。(司会・進行 週刊BCN 編集長 日高 彰)

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外部リンク
アップデータ=https://www.updata.co.jp/
e-Janネットワークス=https://www.e-jan.co.jp/
ZenmuTech=https://zenmutech.com
