三菱東京フィナンシャル・グループとUFJグループが統合に向けて着々と準備を進めるなか、ダイヤモンドコンピューターサービスは、新しく生まれ変わる銀行にふさわしい金融サービスの実現に向けた情報システムの提案に力を入れる。もともと金融分野に強い同社だが、今回の統合案件で得たノウハウを、次のビジネスへと積極的に展開していく。
銀行のシステムを“塊”で受注、新しい金融サービスの創出に力を入れる
──2005年10月1日までにグループ会社の三菱東京フィナンシャル・グループとUFJホールディングスをはじめとするUFJグループが統合する予定になっています。超メガバンクの誕生で巨額のIT投資が見込まれています。
後藤 96年当時、三菱銀行と東京銀行の合併時に取締役システム第二部長だった経緯もあり、銀行合併にともなうシステム統合の経験があります。今回のUFJグループとの統合においても、このノウハウが生かせると考えています。
来年10月までの統合を目指すことから逆算すると、年内までに統合の方法やロードマップが大方決まるものと見られます。まずは、銀行の基幹システムである勘定系システムの統合よりATM(現金自動預払機)やキャッシュカードの統一などフロント系の統合の方が先に着手されることになるでしょう。顧客から見て2つの金融グループがしっかり統合して、同一の銀行に見えるようにすることが大切だからです。
フロント系の統合が完了したあと、勘定系、証券系、海外系など基幹系システムの統合作業が3年ほど続くことになります。この間にデータベースの統合も順次進みます。基幹系の統合に向けた投資は、実質来年度(06年3月期)から始まります。推定ですが3年間で数百億円規模の投資になるのではないでしょうか。当社は、向こう3年間で累計100億円規模の受注獲得を目指しています。
──大きなビジネスチャンスとなりますね。
後藤 銀行の情報システムの構築案件では、銀行の情報システム部門に技術者を派遣するビジネスモデルがよく見られます。これでは、何人の技術者を出したかで売り上げが決まり、業務の内容も受託作業に近いためノウハウが身に付きにくいという欠点がありました。当社は、銀行のシステムの部品をつくるのではなく、ある程度まとまったシステムを“塊(かたまり)”で受注できるよう提案活動に力を入れます。
三菱東京フィナンシャル・グループとUFJグループの統合により、銀行の顧客は当然これまでにない新しい金融サービスの登場を期待します。新しく誕生する「三菱東京UFJ銀行」(仮称)も、顧客の期待に応える新しい金融サービスの創出に力を入れることになります。その際に金融業界向けに長年培ってきた当社の技術やノウハウが存分に生かせると考えています。
新サービスの創出に向けて、こちらが積極的に提案活動を展開し、新サービスを実現するための情報システムを丸ごと受注できれば、これまでの技術者派遣では実現できなかった主体性を発揮することができます。こちらから提案するわけですから、競合他社との差別化にも結びつき、収益性が高いビジネスが期待できます。
また、三菱東京フィナンシャル・グループとUFJグループ統合案件で得た最新のノウハウを、他の顧客のシステム構築案件へと展開していくことも考えられます。当社にはビッグカスタマーである東京三菱銀行とカード会社2社以外に5000社あまりの顧客ベースがあります。このなかで、1社あたりの年間取引額が5─10億円と大規模の優良顧客が昨年度(04年3月期)で数社ありました。これを06年度(07年3月期)までには20社に増やそうと考えています。
こうした既存の大口顧客以外の優良顧客を開拓していくには、当社しかない技術やノウハウを蓄積し、顧客の収益に大いに貢献する情報システムの提案を展開していくことが必要不可欠だと考えています。東京三菱銀行をはじめ既存の大口顧客の案件を提案型で受注し、この一連のシステム構築の経験のなかで技術者を育て、その先にある一般優良顧客の積極的な開拓に結びつける考えです。
「新生・プロサーブ事業」で売上増へ、IT投資の追い風を存分に活用
──昨年度(04年3月期)は5期ぶりに増収増益になりました。この原動力は、既存大口顧客以外の一般優良顧客の売り上げが伸びた点にあります。これからも一般顧客向けの売上増大の方針は変わりませんか。
後藤 一般顧客向けの事業拡大の方針は、今後とも変わりません。これまで東京三菱銀行やカード会社など大口顧客のIT投資の増減で、当社の業績が大きく左右されてきました。98年度(99年3月期)に東京三菱銀行関連およびカード会社の連結売上高に占める比率が61%もありました。これでは安定した経営はできません。
98年度は、一般顧客向けの売上高は連結売上高に対して39%しか占めていませんでしたが、昨年度までの5年間でこれを59%までに高めてきました。一般顧客向けの売上高が伸びてきたことが経営の安定化に貢献し、増収増益を達成することができたと言っても過言ではありません。今年度以降も、一般顧客向けのビジネスはさらに強化していきます。
その第1弾として打ち出したのが当社の金融会計のノウハウを生かした“F&A(ファイナンス&アカウンティング)ソリューション”です。また、このF&Aソリューションのブランド名として「プロサーブ」を採用する方向で準備を進めています。今年度(05年3月期)末までには、F&Aソリューションを体系立てて整備し、中身の充実に努めます。早ければ来年度(06年3月期)から本格的なF&Aソリューション事業を立ち上げることになります。
「プロサーブ」は、もともと当社が提供してきた、給与人事のアウトソーシングサービスのブランドでした。多くの企業に活用してもらっており、知名度も高まっています。このサービスの範囲を大幅に広げ、金融会計分野全般のソリューションとして体系づけていきます。これにより「新生・プロサーブ事業」として、今後、数年のうちに新規で30─40億円の売上増を見込んでいます。
──財務会計や金融分野に強いシステムインテグレータとして攻めていくことになりますね。
後藤 今年度(05年3月期)から06年度(07年3月期)までの3か年の中期経営計画では、連結売上高を毎年度約10%ずつ伸ばし、06年度には連結売上高440億円を目指しています。経常利益は昨年度実績の18億円から06年度には33億円を見込んでいます。
この計画を達成するには、東京三菱銀行とUFJ銀行の統合に伴うIT投資の追い風を存分に活用することに加え、一般顧客向けの売上高をどこまで伸ばせるかがカギとなります。F&Aソリューションに象徴されるように、「会計や金融に関することならダイヤモンドコンピューターサービスの“プロサーブ”だ」と、顧客から指名をもらえるように実績を増やしていきたいと考えています。
くだけた表現をするならば“お金に関する情報システムに強いシステムインテグレータ”として売り込んでいく方針です。企業活動の根幹であるF&Aをソリューションとして体系化、システム構築に加えて、アウトソーシングなどの総合力を発揮し顧客からの支持を獲得していきます。
眼光紙背 ~取材を終えて~
「成長なくして生存なし──。業績が停滞したら顧客や市場から見放される」成長し続ける決意を強く示すと同時に、継続的に売り上げを伸ばすメカニズムの構築を急ぐ。後藤社長が打ち出す行動指針は「3現主義と3S」の2つ。「3現」とは現場、現物、現実で、常に現場で真実を見極める認識力の重要性を指摘する。「3S」とはシンプル、スピード、セルフマグマを指す。セルフマグマとは「自ら心の内に持つ熱い思いを爆発させる」の意。「マグマは溜めているだけではダメで、爆発させてこそ威力を発揮する」ことから考案した言葉だ。 「ビジネスの厳しい現実を乗り越えていくには、自己実現、自己変革のパワーが欠かせない」と変化適応の重要性を説く。(寶)
プロフィール
後藤 明夫
後藤明夫(ごとう あきお)1947年、静岡県生まれ。69年、東京大学工学部卒業。同年、三菱銀行入行。93年、システム部長。96年、東京三菱銀行システム第二部長。同年6月、取締役システム第二部長。97年10月、取締役システム部長。98年5月、取締役本部賛事役。同年6月、ダイヤモンドシステム開発社長。00年3月、ダイヤモンド・ビジネス・エンジニアリング社長を兼務。同年4月、東京三菱インフォメーションテクノロジー社長、ダイヤモンド・ビジネス・エンジニアリング社長兼務。00年6月、ダイヤモンドコンピューターサービス副社長兼総務部長。01年7月、同社副社長。04年6月、社長就任。
会社紹介
ダイヤモンドコンピューターサービスは、三菱東京フィナンシャル・グループの総合力を高めるため、今年12月22日をめどに上場廃止し同グループの子会社となる。再編後は東京三菱銀行の法人顧客に向けたITソリューションの提供業務の一部をダイヤモンドコンピューターサービスに移管する予定。これにより、従来から担ってきた三菱東京フィナンシャル・グループにおけるITソリューション事業の中核的な役割がさらに明確になる見通し。また、今回のグループ再編の一環として、ダイヤモンドコンピューターサービスは三菱総合研究所との包括的な業務提携に踏み切った。三菱総研と連携した経営コンサルティングや業務改革など総合的なサービスを提供することになる。ダイヤモンドコンピューターサービスでは、企業の会計や金融を柱としたF&A(ファイナンス&アカウンティング)ソリューションの立ち上げに力を入れている。再編によりF&Aソリューションの拡充をより一層加速させる。