グローバルメディアオンライン(GMO)は、6月1日付で社名をGMOインターネットに変更し新たなスタートを切る。「『インターネットのことならGMO』というメッセージを明確に伝える」ため、熊谷正寿会長兼社長は3度目の社名変更に踏み切る。「ホームページの数を増やすことが最大のミッション」と、M&A(企業の合併・買収)などで企業規模をさらに拡大し、「2009年度(09年12月期)に売り上げ1000億円の突破」を目指す。
「インターネットのことならGMO」ビジネスの相乗効果狙いM&Aを推進
──6月1日付で社名を「GMOインターネット」に変更します。今回の社名変更は、GMOにとってどのような意味を持ちますか。
熊谷 GMO(グローバルメディアオンライン)はこれまで同様、「ホームページの数を増やしていく。ユーザーのホームページを楽しくする」ことにビジネスを集中します。この方向性は、私が創業した時から現在まで変更はなく、これからも変えるつもりはありません。
ホームページを運用するためには、ドメインの登録からサーバーの運用、ホームページの制作がまず必要です。日本でホームページを持つ企業ユーザーのうち、約15%はeコマースを手がけますから、セキュリティを確保するための電子証明書や電子決済システムも必要になる。GMOは、これらすべてを提供できる基盤を持ちます。つまり、インターネットを使いホームページを運用するためのサービスがすべて揃っているわけです。現在約44万法人のユーザーがおり、日本企業のホームページ作成・運用を最も多く手がけている企業であると自負しています。
ただ、GMOは20社以上の子会社を持ち、サービスメニューも多岐にわたるので、何をビジネスにしている企業か、分かりにくい印象を与えてしまっていた。そこで、社名を「GMOインターネット」に変更し、「インターネットのことならGMOに任せてください」というメッセージをさらに明確に伝えていく意味で、社名変更を決断しました。
企業には経理部や財務部、人事部といったセクションが当たり前に存在しますが、近い将来はどの企業にも「インターネット部」がある環境になると私は予測しています。日本には約635万の事業所があり、約280万の法人がある。それにも関わらず、日本にはホームページがまだ100万サイト程度です。まだまだホームページの数が少なすぎる。インターネットやホームページは、企業にとってますます身近になり、有効活用することで各企業のビジネスを拡大させるツールにさらに成長する。GMOは、企業のITアウトソーシングを請け負うプロバイダとしてさらに飛躍します。
──インターネット関連企業のM&A(企業の合併・買収)には以前から積極的に動き、現在子会社は22社にものぼります。今後も自社技術にこだわることなく、M&Aを活発化させていく計画ですか。
熊谷 もちろんです。インターネットの進化によって魅力的な技術やサービスは、これからもどんどん創出されていくと思いますから、GMOのビジネスと相乗効果が生まれると判断した企業が見つかれば、M&Aを含めた資本提携を精力的に提案していくつもりです。魅力的なサービスを創造するために必要な技術は、自社開発にこだわりません。
現在、M&A戦略は、企業規模を大きくするためだけにさまざまな業種の企業を無闇に買収している企業も少なくないですね。ですが、GMOは「ホームページの数を増やすため」に必要な企業をM&Aしており、GMOの方向性とM&Aの対象はしっかりとリンクしています。
──M&Aで組織が急速に肥大化すれば、トップとしては組織のマネジメントが一層重要になると思われます。
熊谷 私は経営のなかで、社員をマネジメントしないことをモットーとしています。ですから、急速に組織が拡大することで特別、社内マネジメントを強化する必要性は感じていません。目標を明確に伝え、責任と権限を与えて後は好きなように仕事してもらうスタイルを貫いています。
「コンテンツ」、「金融」を第3の柱に 目標は売上高10兆円、従業員20万人
──従来の主軸事業であるインターネットインフラ事業とネット広告事業に加え、第3の柱として「デジタルコンテンツ事業」と「インターネット金融事業」を強化する方針を掲げていますね。
熊谷 デジタルコンテンツは、音楽、映像、そしてゲームの3つに分けられると思いますが、なかでも当社はまずゲームに集中します。韓国で人気を集めるオンラインゲーム「コルムオンライン」の運営を手がけ始め、昨年11月から本格的にサービスを立ち上げました。11─12月の2か月間で売り上げは約8000万円を突破し、順調な滑り出しを見せています。このジャンルは今後期待できる分野ですから、売り上げや利益をすぐに求めるのではなく、徐々に成長させていこうと考えています。
一方、インターネット金融事業は、証券、保険、銀行の3つに分けられると思いますが、そのうちネット銀行ビジネスにまずは着手しました。イーバンク銀行に出資し、ネット銀行ビジネスに参入しました。ネット銀行の運営をもとに、将来は保険や証券のビジネスも始める計画です。
──インターネット環境のなかで、今後さらにセキュリティが重要になると思います。現在、子会社の日本ジオトラストが電子証明書発行サービスを手がけていますが、その他のセキュリティサービスを展開する必要性は感じていませんか。
熊谷 セキュリティは、今後インターネットの世界でさらに必要性が増してくると感じています。私は、インターネットの利用で脅威となるのは、大きく分けて「盗聴」、「改ざん」、「否認」、そして「なりすまし」の4つだと認識しています。この4つの脅威に対する最適な防御策は、電子証明書だと思います。
セキュリティにおいて、さまざまなサービスを用意する必要は今後高まると思いますが、まずは電子証明書サービスを浸透させることが重要と認識しています。
まだまだ日本はセキュリティに対する意識レベルが低いのか、電子証明書の認知度も低い。ユーザーに向けて、電子証明書の必要性をアピールしていくとともに、電子証明書発行サービス市場での日本ジオトラストのシェアを高めることが、まずは先決です。
──海外にも拠点を設置していますね。海外ビジネスの現状は。
熊谷 現在、米国、韓国、そして中国にオフィスを構えていますが、今は活発に動いているというよりも各国の市場を見極めているレベルで、売上高も全体の2─3%です。日本国内のビジネスを成長させることを今は優先していますが、将来は海外市場にも積極的にアプローチしていきますよ。
──中長期的な目標は。
熊谷 まずは09年度(09年12月期)に売上高1000億円の突破を目指します。この目標数値は、今のサービスメニュー、組織体制で十分に達成できると思います。そして、気が狂っていると言われるかもしれませんが、私が90歳になる年を最終年度とする「55年計画」という長期経営計画を掲げており、その時には売上高10兆円、従業員数20万人の企業に成長させるつもりです。
かなり先の話になりますが、進むべき目標を立てて、そのための道筋を今から考えておかなければ成長はありませんから。
眼光紙背 ~取材を終えて~
書籍化もされている熊谷会長兼社長の手帳活用術。書籍を出版してから、手帳に関する取材も少なくないとか。
単なるスケジュール管理の枠を超え、自分の理想像やすべきこと、名言や戒め、行動基準などが書き綴られているという。外形は、手帳というよりも小ぶりなセカンドバック。チャックが閉まらないほどの大きさに膨れ上がっている。
「人間の記憶力は大したことないんです。目標を定め、実現するために必要なことを忘れないように書き残すこと。そして、それを常に持ち歩くことが成功への道。手帳はそのための最高のツールなんです。手帳がなければ今の自分はなかった」
20代前半に「35才で会社を上場させる」という目標を立てて実現した。その背景には、試行錯誤を繰り返しながら考え出した独自の手帳術がある。(鈎)
プロフィール
熊谷 正寿
(くまがい まさとし)1963年生まれ、長野県出身。91年、ボイスメディアを設立し、代表取締役に就任。95年、インタキューに社名変更し、代表取締役に就任。01年、グローバルメディアオンライン(GMO)に社名変更し、代表取締役会長兼社長に就任。総務省の「次世代インターネット政策に関する研究会」委員のほか、日本インターネットプロバイダー協会を設立し、副会長を務めるなど、業界団体の要職にも就いている。執筆活動にも精力的で、著書には独自の手帳活用術を綴った「1冊の手帳で夢は必ずかなう~なりたい自分になる簡単な方法~」(かんき出版)などがある。
会社紹介
グローバルメディアオンライン(GMO)は、1991年に設立されたマルチメディア事業のボイスメディアが母体。95年11月に社名をインタキューに変更し、インターネットインフラ事業をメインビジネスに据えた。01年4月に現在の社名となり、今年6月1日にはGMOインターネットに社名変更する予定。
現在の事業内容は、インターネットインフラ事業と広告メディア事業の2つ。インターネットインフラ事業では、ホームページの作成やレンタルサーバーの提供、ドメイン取得サービスなどを提供する。広告メディア事業では、広告販売代理業のほか電子メール広告などを手がける。
従業員数は連結ベースで約900人。連結子会社は22社。99年8月にジャスダック証券取引所に店頭公開。04年2月、東京証券取引所第2部に市場変更した。
昨年度(04年12月期)の連結業績は、売上高が前年度比50.3%増の235億6100万円、営業利益が同32.8%増の28億400万円、経常利益が同44.1%増の28億500万円、当期純利益が同146.4%増の25億6300万円。