日本ユニシスグループのなかで、ユニアデックスの存在感が年々高まっている。日本ユニシスのITサービス子会社として業績を伸ばし続け、現在ではユニシスの連結売上高の約4分の1を稼ぐ。設立当時からその成長を支えてきた高橋勉社長は、「昨年までは準備期間、今年が花開く年」と一段の飛躍を期する。その自信の背景とユニアデックスの目指す姿を、昨年10月に就任した新トップから探った。
エンドユーザーの自社運用は限界に 顧客のインフラを丸ごと請け負う
──3か年の中期経営計画が走っている最中での社長交代となりました。高橋体制で、ユニアデックスの目指す方向性は変わるのでしょうか。
高橋 私は8年前のユニアデックス設立計画の立案にも参画していましたからね。現在の中期経営計画も福永努前社長をサポートする形で、一緒に策定しました。ですから、当然、方向性は変わりませんよ。
──日本ユニシスからさまざまな事業を引き継ぎ、設立当初に比べ事業領域がかなり広がってきましたね。今後、どのような企業ビジョンを描いているのですか。
高橋 私が描いている最終的な理想形は、大手企業の情報システムの運用管理を丸ごと一括で任せてもらえるITサービス企業になることです。情報システムインフラのサポートサービスでナンバーワンの地位を確立したい。
ユニアデックスは、創業以来一貫して業績も右肩上がりで順調に成長してきました。ただ、これまでのビジネスは、保守体制を持っていない外資系ハードベンダーやソフトベンダーを、保守サービスという面で支援することが中心でした。中期経営計画では、一般のエンドユーザー企業とのビジネスを増やすことが注力ポイントになります。
企業にはオープン系のシステムがどんどん増えています。大企業は何百台というサーバー、何万台というレベルのクライアントコンピュータを抱えている。それに伴って、ネットワークは大規模化、複雑化しています。もう、エンドユーザー自身が、セキュリティを確保しながら肥大化した情報システムを、自社内で運用管理するのは人的問題も含め限界にきているんですよ。情報システムの運用というのは、顧客のコア業務ではありません。したがって、情報システムのアウトソーシングニーズはさらに強まります。
──そのニーズに応えるために、必要だと感じた事業を日本ユニシスから譲渡してもらったわけですね。
高橋 そうです。97年の設立時は、ネットワークインテグレータ、保守サービス会社としての位置づけでしたが、00年以降はソフトウェアサービスやネット接続サービス、回線リセール事業など複数の事業部門を吸収してビジネス基盤を広げました。アプリケーションはやらないが、情報システムのインフラでは、ハード、ミドルウェアを含めたソフトウェア、ネットワークのすべての面倒をみれる体制を築いたわけです。
──サービスのワンストップソリューションという体制を着々と固めてきたわけですね。
高橋 そういう意味でも、昨年は引き継いだ事業部門を有機的に結び付け、一括アウトソーシングサービスの提供に向けて体制を強化できた有意義な1年でした。代表的な例が、昨年5月に開設した「マネージド・サービスセンター(MSC)」と、10月に開設した「セキュリティ・オペレーションセンター(SOC)」です。
MSCでは、ハードとソフトそしてネットワークに対するサポート窓口を1か所に集結させた。情報システムの運用管理機能を一元化したんです。これによって、コールセンターでの1次完結率が95%以上に高まり、障害解決能力が大幅に向上しました。また、SOCでは顧客の情報システムとネットワークのセキュリティ監視サービスを、リモートで24時間、365日休まず提供できるようになっています。
これによって、一括アウトソーシングに必要な機能はすべて揃った。自信を持ってそういえるだけの体制になりました。今年は結果を出していきますよ。このITサービス提供インフラを武器に、顧客のニーズにあわせて、何をどう提案していくか、それがカギになります。
ユニシスとは異なる企業文化 グループ3社の連携を模索
──ユーザーにとっては、日本ユニシスがやる場合と、ユニアデックスがやる場合で、どんな違いがあるのでしょうか。
高橋 個人的見解ですが、企業文化の違いがあると思いますね。
ユニアデックスは、ユニシスに比べ一歩前に出ようという姿勢が強い。俊敏に動ける軽さが備わっている。これは大事なことなんです。私たちが目指す姿へと成長するには、俊敏性やチャレンジ精神が不可欠ですから。
両社はもともとは1つの会社ですが、メインフレーマとして大手企業を中心にビジネス展開してきた時期が長いユニシスと、オープンでマルチベンダーのシステムを扱ってきたユニアデックスでは、こうした企業文化の違いが出てくるのは当然かもしれません。
──分社化したことで、企業文化の違いが明らかになってくると、課題も出てきますね。
高橋 もともとは一緒の組織でビジネスしてきた両社ですが、分社化したゆえに起こった課題もあります。例えば、ユニシスの大手顧客に対して、ユニアデックスが持つ製品・サービスをあまり売り込めていない。ハードの保守サービスやSEの派遣などでは協力することは多いのですが、それ以外の面では、関係は希薄だったと思います。ユニアデックス独自の製品・サービスをユニシスの既存顧客に売り込むケースが少なかったわけです。これは大きな反省点として受け止めており、今後の改善ポイントにおいています。
籾井勝人(日本ユニシス)社長は、情報システムインフラ構築・運用のユニアデックス、アプリケーション開発の日本ユニシス・ソリューション、そしてユニシスの3社の連携を非常に重要視して、これまで以上に連携を強めようという考えを持っています。具体的に10月から議論を進めて、それぞれの企業同士でコミュニケーションを密接にとりながら、1つの方向性を見出そうとしています。今年は具体的な連携施策を出せると思いますよ。
──来年度(07年3月期)の業績見込みは?
高橋 来年度は中期経営計画の最終年度を迎えます。計画立案時の目標を変更するつもりはなく、売上高1000億円の突破を目指します。
今年度の見通しは、昨年度に比べ伸びることは間違いはないが、上期が少し低調だったので、計画値に比べ40億円少ない840億円ほどになるでしょう。ですが、下期以降は順調に伸びていますし、景気も回復しておりマーケット環境も良い。ハイレベルなIT投資も増えるでしょう。今年度は準備期間、ギアチェンジの年と位置づけていましたから、来年度はきっちりと花を咲かせますよ。
──福永前社長はその後の中期経営戦略として、09年度には売上高2000億円の突破という挑戦的な数字も示していましたが…。
高橋 今の段階では、来年度売上高1000億円の突破に向けて頑張ることしか考えていません。しかし、情報システムのインフラサポートサービスでナンバーワンになるという地位を確立できれば、2000億円も夢ではない数値だとは思っています。
眼光紙背 ~取材を終えて~
「現場の人間を育てるためには上の人間も変わらないとダメなんです」
高橋社長の人材教育論だ。現場の担当者がいくら勉強してスキルアップしても、それを管理するマネージャーに力がなければ、意味がないというのだ。
高橋社長は、ユニアデックス設立から一貫して成長戦略遂行のための一翼を担ってきた。現在の中期経営計画立案にも当然携わっている。そのため、トップになったからといって、「特別やらなければいけないことはない」という。
ただ、1つだけトップとしての注力点を挙げていた。
「優秀な技術者の力を十分に発揮できる最適な環境をいかに用意することができるか。それが大きなポイント」
人を育てるためには上の人間が大事という持論を持っているだけに、人材教育の面からも、企業トップの責任の重さを受け止めている。(鈎)
プロフィール
高橋 勉
(たかはし つとむ)1948年8月12日生まれ、群馬県出身。1971年4月、日本ユニバック(現・日本ユニシス)入社。93年4月、カスタマーサービス推進本部カスタマーサービス管理部部長。97年3月、ユニアデックスに移り取締役に就任。02年6月、常務執行役員。03年6月、取締役常務執行役員。05年4月、取締役専務執行役員。05年6月、代表取締役専務執行役員。05年10月、代表取締役社長に就任。日本ユニシス執行役員も兼務する。趣味は、ゴルフとスキー。
会社紹介
ユニアデックスは1997年の設立当初はネットワーク構築とサポートサービスベンダーの位置づけだったが、00年以降そのビジネスモデルは大きく変化した。ソフトウェアサービスやネット接続サービス、回線リセール事業など複数の事業部門を日本ユニシスから譲り受け、ビジネス基盤を急速に拡大させてきた。
業績も一貫して右肩上がりで成長。昨年度の業績は、売上高が822億円、営業利益が31億円となった。売上高では、日本ユニシスの連結売上高の4分の1を占める。中長期的には06年度(07年3月期)に売上高1000億円の突破を掲げている。
昨年は、5月にサポート窓口を一本化するとともに、情報システムの運用管理機能を集約した「マネージド・サービスセンター(MSC)」を設立。また、10月にはセキュリティ監視業務をリモートから請け負うための専門部隊をつくるなど、運用監視サービス提供体制を強化した。