情報セキュリティ投資の追い風を受け、エムオーテックス(MOTEX)のネットワーク管理ソフト「LanScopeシリーズ」が好調だ。導入クライアント数は200万を突破、今年末には350万クライアントの達成を見込む。創業以来、かたくなにネットワーク管理という分野にこだわり続け、市場の先導役を務めてきた同社は昨年15周年を迎えた。節目となる20周年に向け、高木社長はどんなビジョンを描いているのか。好調の理由と今後の成長戦略に迫る。
全自治体の3割に導入 導入数は200万クライアントを突破
──情報セキュリティに対する投資が活発化しています。エムオーテックス(MOTEX)のビジネスにも追い風が吹いていると思われますが…。
高木 確かに個人情報保護法や、情報漏えい事件などで、ネットワーク管理の需要が加速してきたという感じはありますね。ただ、「LanScope(ランスコープ)シリーズ」の場合はずいぶん早い時期から住基ネット(住民基本台帳ネットワーク)の管理に採用されてますからね。いまでは長野市など全自治体の住基ネットの約3分の1に導入されています。導入クライアント数は200万を突破し、また、調査会社の富士キメラ総研の調べでは、04年度の端末操作監視・ログ管理ソフト市場で63.7%のシェアを確保しているというデータもあります。おかげさまで好調ですよ。
──業種、企業規模などで特に強いのはどこですか。
高木 業種については、偏りはほとんどありません。製造業や流通業など、さまざまな業種に利用されています。地域の面でも北は北海道から南は沖縄県まで、全国的に顧客が広がっています。
ただ、顧客の企業規模では、500クライアント以上の中堅・大企業が中心で、全顧客の95%以上が500クライアント以上の大手企業です。約4万台のクライアントコンピュータを抱える大手保険会社とか、世界的な超大手企業にもたくさんの導入実績がありますよ。
──競合企業が増えているにもかかわらず好調を持続できる、その秘密は何ですか。
高木 ネットワーク管理に早くから取り組んできたという強みですね。日本でインターネットがブレークしたのは95年ですが、ぼくらは92年にはネットワーク管理商品としてランスコープの第1号を製品化しているんです。それにネットワークのトラフィック状態を把握できるアナライザを始め、ネットワーク管理の全商品をラインアップしている。これは世界で唯一当社だけなんです。現在、ランスコープは12製品のラインアップが揃っています。だから、他社には絶対に真似できないだけの技術力とノウハウがある。
──なぜ同じようにラインアップを揃えようという競合が出てこないのですか。
高木 ネットワークのアナライザをつくれる技術者なんてそんなにいませんからね。ネットワークのドライバをつくれる技術者も、マイクロソフトを除けば世界で100人くらいのものです。うちにはそういうとびきりの技術者がいる。もうひとつの理由としては、そうやって最高の技術を投入して製品化したとしても、全社のネットワークを管理できるソフトというのは、グループ会社に1本しか売れない。これじゃ儲からんと、他社はみんなそう思うんでしょうね。だから、もっと大量に売れる製品に走ってしまう。われわれは、そこが違う。とにかくネットワーク管理にこだわり抜いて、その結果が世界で唯一という技術につながっているんです。
海外市場への進出も視野に入れる、新製品「Eco」で新領域にも挑戦
──そうなると、日本市場だけではなく海外にもビジネスチャンスがありそうですね。海外市場への進出予定は。
高木 売上高50億円を突破したら、海外市場に打って出る計画を立てています。まずは米国市場にアプローチする予定で、世界でシステムハウスが最も多いといわれるワシントン州シアトルに拠点を設置する予定です。時期は、来年度か再来年度になるでしょう。
──海外市場での売上規模は、どの程度を見込んでいますか。
高木 海外進出の狙いは、販売面よりも開発力の強化の意味合いが強いので、売り上げはあくまで二の次です。
当社の技術者が米国に行って、そこで優秀な技術者と触れ合い、帰国すると1つ商品ができてしまう。それほど、米国は商品作りに役立ちます。日本では得られない経験やアイデアが米国には転がっています。また、シアトルに開発拠点を設ければ、日本が夜の時間帯は米国は朝ですから、24時間の研究開発体制が築ける。これも大きなメリットです。拠点を設ければ、プチマーケティングのような営業活動も進められると思いますが、まずは開発力の強化拠点として活用していこうと考えています。
──裾野の拡大ということを考えれば、従業員規模500人未満の企業が重要なターゲットになりそうですね。
高木 確かに、中堅・中小企業へのアプローチは今後の大きなテーマになります。高いシェアを持っているといっても、当社が販売している顧客層は大企業が中心です。日本には約633万社ありますが、その大半は中小企業。当社がアプローチしているのは、この約633万社のうち3%程度の大企業市場に過ぎない。だから、残りの97%の中堅・中小企業市場にアプローチするための新製品をすでに開発しています。
──具体的にはどんな製品ですか。
高木 社員の生産性向上や考える力を身につけるためのアプリケーションソフトで、「LanScope Eco」と名付けた製品です。中小企業向けに開発したソフトで、スケジュールや目標管理などのグループウェア的な機能のほか、資産管理やログ管理などの機能も付加。そして、最も特徴的なのが業務の進捗を入力して、予定通りに進んでいない場合などにはどうすればよいか、誰に報告しなければならないのかなどの判断をアプリケーションが支援してくれる機能を持っています。つまり、「気の良い秘書」のような存在です。現在、開発を進めている最中で、今春にはリリースします。目標としては、月500本の販売、06年中に1億円の売り上げを計画しています。
──「Eco」はネットワーク管理の枠を越え、新領域へのチャレンジとなりますね。
高木 ネットワークというのは、使わなければ意味がありません。当社の製品アイテムはネットワークを管理するツールがすべて揃っている。今後の展開としては、そのネットワークを有効活用して、社員の生産性を上げたり、面白いアイデアを生んだりすることが当社にとって重要な役割になってくると思うんです。堅牢でしっかりと管理されたネットワークに何を走らせるかが、今後の大きなテーマになります。
──5年後の姿は。
高木 昨年に15周年を迎え、20周年に向けて今新たなスタートを切っています。具体的な業績については控えますが、20周年を迎える段階では、従業員規模は800人ぐらいに成長していると思います。来年の今頃には200人体制になっていることもあって、今、新大阪駅の近くに、地下1階、地上十数階の本社ビルを設計中です。
また、売り上げはもちろん重要と捉えていますが、それよりも社員が自己実現できる場にMOTEXがなっていればいいなと考えています。肩書きを越えた仲間として社員みんなが自己実現できる会社にしたい。それが私の夢です。
眼光紙背 ~取材を終えて~
大阪府吹田市にあるMOTEX本社ビル。その最上階には、オフィススペースはない。筋力トレーニングするためのスポーツジムのほか、バンド演奏が可能なライブハウスを設けているなど、オフィスの雰囲気を全く感じさせない。
ライブハウスは音響設備やステージ、バーカウンター、厨房なども完備する充実した設備体制で、社員はそこでミーティングや打ち上げ会を開けるという。
撮影は、このライブハウスで行った。高木社長は、現在ブルースバンドを組んでおり、ベースを担当しているというが、最も得意というピアノの腕前を撮影の合間に披露してくれた。
「仕事の生産性を上げるためには、遊び心が必要。一般的なオフィスビルでは無駄と思えるものが、社員のモチベーションを上げるためには重要なんです」
本社最上階には、社長の社員に対する思いやりと遊び心が溢れている。(鈎)
プロフィール
高木 哲男
(たかぎ てつお)1948年、東京都生まれ。73年、大和紡績入社。82年、創業メンバーとしてダイワボウ情報システムの設立に参画。90年、エムオーテックス(MOTEX)を設立し、代表取締役社長に就任。
会社紹介
エムオーテックス(MOTEX)は、1990年に高木哲男社長が設立。ネットワーク管理ソフトの総合メーカーを標榜し、92年に初製品となるイーサネットモニタソフトを商品化した。以後、一貫してネットワーク管理ツールの開発に特化し、ネットワーク管理ソフトシリーズ「LanScope(ランスコープ)シリーズ」を展開する。現在、12製品をラインアップしている。
ランスコープシリーズは、04年11月に100万クライアントを突破し、05年5月に150万クライアントを超えた。現在では200万クライアント以上の出荷実績がある。また、IT関連調査会社のデータでは、端末操作監視・ログ管理ソフト市場で、63・7%のシェアを確保(04年度)しているという。
昨年度(05年5月期)の業績は、売上高が28億9900万円、経常利益が18億5500万円。今年度は売上高が37億6500万円、経常利益24億円を見込んでいる。
本社は大阪府吹田市。本社のほか、東京都港区に営業所を設置する。従業員数は74人。