30期連続の増収を成し遂げてきた岐阜県の有力SIerの電算システム。不況の荒波のなかで今期(2009年12月期)は痛恨の下方修正を行うものの、次の成長につなげる仕組みづくりを水面下で着々と進める。同社の成長を支えてきた「収納代行サービス」に続く成長エンジンとは何か──。自ら“売り上げ至上主義”と称し、トップラインを伸ばすことに並々ならぬ意欲をみせる宮地正直社長に、そのビジネス戦略を聞いた。
「分散」と「集中」使い分け
──30期連続増収を果たしてきた御社ですが、今期(09年12月期)見通しでは痛恨の下方修正を行いました。
宮地 大型の案件が先送りになるなど、経済環境の厳しさを痛感しています。利益は前年度比で半分近く少なくなる見込みですが、ただ、それでも売り上げは少しでも伸ばしたいと思っています。当社は、08年10月に株式上場を果たしました。上場した目的の一つが成長の持続です。経済が停滞するなか、「利益を重視する」と表明する経営者が散見されます。ですが、私は売り上げ至上主義者。トップラインを伸ばす戦略や仕組みがあってこそ、利益を創出できると考えています。昨年度まで30期連続で増収を維持できたのも、売り上げへのこだわりをもっていたからこそです。
──電算システムといえば、「収納代行サービス」が思い浮かびますが、この事業はどうですか。
宮地 ご指摘の通り、コンビニ収納やペーパーレス決済、口座振替サービスなど、多彩な決済関連サービスは、当社の主要な成長エンジンの一つです。公共料金やネット通販などでコンビニ決済や郵便振替用の帳票を発行したり、近年では電子メールを振込み票に置き換えるペーパーレス化も進んでいますよね。「収納代行サービス」は、こうした決済を必要とする事業者の情報処理部分を請け負うもので、全国トップクラスの実績とシェアをもっています。
もう一つの事業の柱に、いわゆるSIerとしてのシステム構築やソフト開発などの情報サービスビジネスがありますが、第3四半期累計期間(09年1~9月期)では、この部分が大きく落ち込んでしまいました。収納代行サービス事業の売り上げは前年同期比で1割余り増え、かつ増益だったことを考えると、SI・情報サービス事業をいかに強化するかが大きな課題です。
──そのSI・情報サービスの強化策については、どのようにお考えですか。
宮地 クラウドやERP、データセンター(DC)、M&Aなど、すでにいくつか手は打っています。クラウド関連では昨年11月、国内SIerでは富士ソフトなどと並んで最も早い段階でGoogle Appsの販売代理契約を結びましたし、今年7月には自社DCを大幅増設しています。岐阜県情報スーパーハイウェイなどと直結した高規格DCサービスを提供できる体制を整えました。既存施設と合わせて、サーバーを1000台ほど収容できるキャパシティで、東海地区のDC需要を獲得していきます。
ERPでは、まずは2010年度中にSAPを自社導入し、並行して外販に力を入れます。Google Appsはフロントエンド系のシステムですので、SAPのバックオフィス系と組み合わせた提案も積極的に行います。M&Aについては、長年にわたって取引のある宮崎県のソフトベンダー・ソフトテックスを10年1月にグループに迎え入れる予定です。この会社は、歯科向けの業務パッケージソフトを開発しており、当社は10年余りにわたって東海地区での販売代理を務めてきた関係です。
──矢継ぎ早に手を打っている印象を受けますが、基本戦略はどこにあるのでしょうか。
宮地 「分散」と「集中」です。当社は岐阜県に本社を構えるSIerですので、地域戦略と全国戦略の二つを分けて考えています。まず、地域に向けては分散戦略。顧客の細かな需要に丁寧に応えていくことで、地域に密着したビジネスを推進します。それこそ大塚商会のようにコピー用紙からERPまで全部揃えるという考え方で、当社でいうならGoogleからSAPまで、トータルで幅広い品揃えでニーズを掴みます。
一方、全国に向けては、集中戦略です。当社はなんといってもまだ年商170億円弱のSIerですので、地域と同じようなきめ細かい動きは体力的にできない。ならば、例えば歯科向け業務パッケージに集中して全国展開を図る──などの作戦が考えられます。現に、このソフトは九州と東海地区を合わせるとおよそ2000件の納入実績があり、全国展開は十分に可能です。
ビジネスは“しつこさ”も大切な要素の一つ。
粘り強く追求していけば、チャンスは必ずある。
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