クラウドは装置産業の一つ
──リーマン・ショックから1年余りが経過し、とりわけ地域の情報サービス産業の疲弊が目立ちます。岐阜県情報産業協会の会長として、どうみておられますか。
宮地 協会の会議などで、従来型の受託ソフト開発や客先常駐など派遣型のビジネスは先細りになると、ずいぶん以前から議題にのぼっていました。これに代わるビジネスとして「自社オリジナルのパッケージソフトを増やさなければならない」との認識でほぼ一致しています。
──御社はどうなのですか。
宮地 自身を振り返ってみれば、給与計算や販売管理などメジャーなソフトは揃えていますが、今の時代、これで十分な差異化ができるかといえば、残念ながらそうではありません。どこでもつくっているソフトを自社で開発しても、絶対的な強みにはなり得ない。だからこそ、歯科や収納代行サービスなど、他社では簡単に真似できない分野に力を入れているわけです。
パッケージソフトやサービスは、自らがよいと思うものをつくるだけではダメで、開発した商材を売る仕組みも一緒に構築することが大切です。当社でいえば、ソフトテックスをグループ化することで製販一体の仕組みを構築しようと取り組んでいます。
──ビジネスの“仕組み”を非常に重視される理由は?
宮地 冒頭でSI・情報サービス事業は苦戦しているけれども、収納代行サービス事業は増収増益だったと申し上げましたが、これは人員の配置にも深く関連します。当社は間接部門を除いて約600人体制なのですが、うち収納代行サービスを担当するのは約50人、SI・情報サービスが約550人の体制なのです。
収納代行サービスは、一つの仕組みを複数ユーザーで共有するモデル。製造業でいうところの“装置産業”のように、購入する人が増えれば増えるほど利益を得やすくなる仕組みなんですね。
SI・情報サービスでも、クラウド/SaaSのように一つのシステムを多くのユーザーでシェアすることで相対的にコストを下げ、利益を拡大する仕組みを早急に採り入れていく必要があります。
──最後に、中長期の経営目標やグローバル戦略を教えてください。
宮地 早い段階で年商300億円、営業利益率10%の達成を目指します。M&Aやグローバル展開は、当然ながら考えていく必要があるでしょう。当社の特徴である収納代行サービスは、残念なことになかなか海外ではマッチしません。中国などの有望市場での調査はすでに行っているのですが、コンビニなどの決済の仕組みが違いすぎる。
しかし、1970年代、人の手による集金を、収納代行サービスの原型となった口座振替決済に切り替える仕組みをつくろうとした当初は、銀行から「それは私たちの仕事ですから、手を出さないでほしい」と突き返されました。それでも粘り強く交渉し、理解を得たからこそ、今の仕組みがある。そのことを考えれば、ビジネスにはある程度の“しつこさ”が大切。制度の異なる海外でも、しつこくビジネスを追求していけば、チャンスは必ずあるはずです。
眼光紙背 ~取材を終えて~
「値下げや給与カットは“麻薬”のようなものだ」と、宮地正直社長は、そのあまりにも強い常習性による負のスパイラルを危惧する。
受注が厳しさを増すなか、安値受注をせざるを得ないケースが出てくる。利益を確保するために、やむなく役員や従業員の給与カットに手を出す。すると、あっという間に付加価値を出しにくい労働集約型のビジネスモデルができあがってしまう。「これでは立ち行かなくなるのは目に見えている」。
地元・岐阜県情報産業協会の集まりでも、最近では、行き詰まりの打開策として、半ば決まり文句のように「“自社パッケージソフトの強化”を挙げて会議を締めくくるパターンが目立つ」と嘆く。宮地社長は、自戒も込めて、「医療や環境、通信など社会基盤に深く根ざしたITシステムで強みをもたないと、勝ち残れない」と、業界の意識やビジネスモデルの変革を訴える。(寶)
プロフィール
宮地 正直
(みやち まさなお)1940年、岐阜県生まれ。65年、中央大学法学部政治学科卒業。同年、岐阜電子計算センター(現電算システム)設立準備に従事。67年、同社設立に伴い入社。75年、取締役。79年、常務取締役。85年、専務取締役。87年、代表取締役社長。
会社紹介
電算システムは、2008年10月に東証2部と名証2部に株式公開を果たした岐阜県の有力SIer。昨年度(08年12月期)連結売上高は前年度比4.8%増の168億円で、30期連続増収を達成。営業利益は同20.9%増の10億円だった。昨年度のセグメント別売り上げ構成比は、情報サービス事業が約64%の108億円、収納代行サービス事業が約36%の60億円。今年度連結売上高は同0.1%増の168億円、営業利益は同46.8%減の5.4億円の見込み。