野村総合研究所(NRI)は、4月1日付で8年ぶりのトップ交代を行った。新社長に就任した嶋本正氏は、2015年までに連結売上高ベースで平均年7%成長の収益基盤づくりを本格化させる。取締役会長に就いた藤沼彰久・前社長は、これまでNRIの売り上げを大きく伸ばし、トップSIerとしての地位をより盤石なものにした。しかし、金融業顧客への過度な依存といった課題の解決は道半ば。嶋本・新社長はNRIが抱える構造的な弱点を解消しつつ、再び成長軌道に戻す強い意欲を示す。
いまを超える、自らを超える
──8年ぶりのトップ交代ですね。藤沼彰久・前会長兼社長(現取締役会長)は、トップ在任中に連結売上高をおよそ1000億円拡大させた辣腕ぶりでした。それだけに、プレッシャーも大きいのではないでしょうか。
嶋本 社長になるということは、専務時代の延長ではありません。まず、格段に責任が重くなります。当社の長期経営計画「ビジョン2015」のミッションステートメントが、イノベーションを起こし、「いまを超える、自らを超える」ことですから、この当社の進むべき方向を自分自身にも当てはめ、現状を打破して、自らを超えていきたいと思っています。
──経済危機のあおりを受けて、ここ2年間の御社の業績は伸び悩みました。一方で徐々に明るさもみえており、トップ交代で反転攻勢に出るタイミングではないですか。
嶋本 経営計画の「ビジョン2015」は、2年前に私も参加して策定したものです。ところが、リーマン・ショック以降の経済危機、主に当社の主要顧客層である証券業界が大きなダメージを受けてしまいました。私の最大のミッションは、NRIを経営計画で掲げた力強い成長軌道に戻すということです。
──成長軌道とは、どのくらいの数値をイメージしておられますか。
嶋本 2015年までに、連結売上高ベースで7%成長、営業利益率で15%程度を安定的に打ち出せる体制づくりをイメージしています。「ビジョン2015」では、経営環境がどれだけ厳しくても売り上げも利益も成長できる体制づくりを目指して策定したのですが、リーマン・ショックが主要顧客の証券業を直撃したこともあって、業績はご覧の通りです。今のままでは、中期計画も絵に描いた餅でしかありません。
──では、どうするお考えですか。
嶋本 事業ポートフォリオを変えます。直近の売上高構成比は、証券や保険、銀行などの金融関連業種が約7割を占めます。証券業だけ切り出しても売り上げ全体の約37%を占めるなど、金融・証券の比重が大きいのですね。これは、当社の強みでもありますが、見方を変えれば弱みでもあります。これまでにも「NRIは金融一本足打法で伸びている…」などと揶揄されてきましたので、私の代でこの事業構造を変えるつもりです。
──つまり、これまで構成比があまり大きくなかった産業分野を拡大するということですか。
嶋本 そうです。社内では“参勤交代”にかけて“産金交代”などと言っています。金融系のビジネスを伸ばしつつ、産業をより大きく伸ばすことで、構成比をいずれ逆転させてやろうというメッセージです。今は金融系が7割、その他が3割という構成比ですが、これを2015年には流通・産業系を少なくとも1割増やして4対6にはしたい。
過去の成功体験の延長線上で考えてはダメだ。
創業、合併に続く“第三の創業”を目指す。
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