Special Issue

パートナーと伴走し、新たな価値を共創するネットワールド 刻々と進化する製品の情報を継続提供する「Smart Libero」

2025/10/30 09:00

週刊BCN 2025年10月27日vol.2080掲載

<第5回>

 継続的な技術支援のニーズが高まる中、ネットワールドでは柔軟なパートナー支援サービス「Smart Libero(スマートリベロ)」を発表し、第1弾として仮想化プラットフォーム「Proxmox VE」向けのノウハウ提供を開始した。背景や狙いについてキーパーソンに聞いた。

継続的な技術支援のニーズが高まる中 パートナーの後方支援をスマートに

 ネットワールドはITソリューションのディストリビューターとして、国内外の先進ITベンダーと連携して、インフラ領域を中心に幅広く販売や技術支援を手がけている。販売パートナー向けの技術支援や検証環境の提供なども充実させており、ディストリビューターでありながら技術力と提案力も兼ね備えているのが強みだ。技術支援のプロフェッショナルサービスは年間800件以上の実績があり、多くの企業から高い評価を得ている。
 
高田 悟 マーケティング副本部長

 近年、サブスクリプション型サービスが増加していることや、製品アップデートの頻度が増えていることを受け、顧客から継続的な情報提供や技術支援を求める声が高まっているという。ネットワールド 執行役員 マーケティング本部 副本部長の高田悟氏は「昨今の製品はアップデートの頻度も多く、技術的な追随の難易度も上がっている。これまではアフターメンテナンスの範囲で必要な情報を提供していたが、それだけだとどうしても限界がある。当社が持つナレッジやノウハウをいち早く、継続的に提供できないかと考え続けてきた」と話す。

 そこで今回、パートナーのSIerを支えるための仕組みとして、新たに生まれたのが「Smart Libero」だ。「Libero(リベロ)」はイタリア語で「自由」を意味し、サッカーで攻守どちらも臨機応変に立ち回れるプレイヤーを表現する言葉として知られている。高田マーケティング副本部長は「名前の通り、柔軟なポジショニングができて、縁の下の力持ちのような後方支援をスマートに提供するサービスだ」と説明する。

 Smart Liberoはまだスタートしたばかりで、2025年11月に開催される「Networld Wiz 2025」が実質的なお披露目の場になる。サービス詳細やサポート対象となるソリューションは今後拡充させていく予定で、基本的にはニーズが高いプロダクトを対象として、有償で技術情報や技術支援を提供していく方針だという。

Smart Liberoの第1弾に仮想化プラットフォームで人気急上昇Proxmox VE

 ネットワールドが現在戦略的に注力していて、技術支援のニーズが高いプロダクトの一つに、オープンソースの仮想化プラットフォーム「Proxmox VE」(以下、Proxmox)がある。近年急速に利用者数を伸ばしているものの、商用製品発売元の日本法人はまだなく、オフィシャルな技術情報が限られている。ネットワールドはオーストリアのProxmox Server Solutionsとリセラー契約を締結し、24年10月からProxmoxの公式リセラーとしてパートナーに同プロダクトを展開しており、日本語による導入支援やハンズオントレーニングも用意している。
 
工藤真臣 部長代理

 技術本部ソリューションアーキテクト部の工藤真臣・部長代理は「昨今の利用者のセキュリティ意識の高まりから脆弱性情報に関する問い合わせが多い。例えば、緊急性が高い脆弱性情報を配信するサービスを求める声が数多く寄せられている。特にProxmoxは、ユーザーこそ非常に多いため情報はあふれているが、その多くが英語であるため、日本語のオフィシャルな情報やサポートのニーズが高い」と説明する。

 Proxmoxは仮想マシンとコンテナの両方を扱えて、使い勝手もよい仮想化プラットフォームとして注目されている。高田マーケティング副本部長は「実際に導入したユーザーからは『とても使いやすい』と評判だ。しかしオープンソースであるため、導入前は不安に感じる方も多い。そこで、判断材料として事例の提供やPoC(事前評価)支援などを実施して販売する工夫を凝らしており、その甲斐もあってか売り上げは好調だ」と話す。

 Smart Liberoでは、Proxmoxのように高いニーズがありながらも、現時点で、まだ日本語の情報が充実しておらず信頼できる技術情報が得にくいようなプロダクトを対象に、独自の検証レポートといった情報提供や技術支援を柔軟に行っていく予定だ。「将来的には、専用サイトを通じて技術情報だけでなく学習用コンテンツなども提供していきたい」(工藤部長代理)

 ネットワールドが持つエンジニアの知見を集約し、価値に変えていくという狙いもある。工藤部長代理は「まずはバリューが出せるものからとなるが、パートナーからの要望を聞きながら一緒に作っていくことも視野に入れている」と話す。高田マーケティング副本部長は「Smart Liberoはネットワールドの技術力を最大限に活かした、オリジナルのリカーリングモデルの一つとして形成していくつもりだ。対象となるサービス・プロダクトもどんどん増やしていくことで、パートナーやユーザーにとってより価値ある形でITソリューションを届けていきたい」と意欲を見せる。

企業がソフトをクラウドから買う時代 パートナーのAWS Marketplace事業を支援

 「AWS Marketplace」を通じたソフトウェア販売が広がっている。ベンダー直販に加え、近年ではディストリビューターが入り価格調整や契約支援が可能となるなど、仕組みが大きく変化している。その最前線にいるのがネットワールドだ。

AWS Marketplaceの新潮流 CPPO・DSOR 販売パートナーに門戸が開かれた

 ECサイト感覚でソフトウェアやサービスの検索や購入が可能な「AWS Marketplace」は、企業が必要とする多種多様なサードパーティー製品を調達できるデジタルカタログだ。ユーザーはスピーディーかつ安全にソフトウェアを調達可能で、契約や支払手続きをAmazon Web Services(AWS)の料金に一本化できるといったメリットがあったが、かつてはベンダー直販の定価販売が基本で価格交渉の余地がなく、販売パートナーが商流に入る余地がなかった。

 しかし、今は違う。潮目が変わったのは20年9月、AWS MarketplaceにCPPO(Channel Partner Private Offer)モデルが導入されたタイミングだ。チャネルパートナーが、製品発売元のISV(独立系ソフトウェアベンダー)に代わりプライベートオファー(優待価格)を提示できるようになった。

 ネットワールドでは24年から、AWSアカウントの再販や「CloudPath Services」を通じて、パートナーのAWS活用を支援してきた。さらに25年6月にはAWS認定ディストリビューターとして国内初となる、DSOR(Designated Seller of Record)モデルでのAWS Marketplace製品の販売を開始した。これによりネットワールドは特定のISV製品を、AWS Marketplace上でも卸提供できるようになった。
 
嶋田 悟 氏

 ネットワールドでAWS Marketplaceビジネスを推進しているマーケティング本部クラウド推進部クラウドビジネス課の嶋田悟氏は「AWSはAWS Marketplaceを本気で大きくしようとしている。同社からはその熱量が感じられる」と話す。AWSにおけるCPPOからDSORといった商流の発展を同氏は「必然」と見ている。

商流構造の再編によって競合とも協働する可能性も視野に

 ディストリビューターと再販パートナーの2階層を通じて製品を販売するDSORの仕組みは一見複雑ではあるものの、かつてのベンダー直販の定価販売に比べ優待価格を柔軟に設定できるほか、パートナーは一般のIT製品の商流と同じポジションでAWS Marketplaceビジネスに取り組めるため、ISV、チャネルパートナー、エンドユーザーに至るまで誰もがメリットを享受できる。ネットワールドはその商流の間に立ち、ハブの役割を果たす。

 また、クラウドのインテグレーションを得意としているSIerが、付加価値となるソフトウェアの供給をネットワールドから受けるといった形で、新たなチャネルパートナーとして協働できる可能性も開けてくる。現在ネットワールドはDSORを推進すべく、さまざまなISVやパートナー企業と交渉を進めている。交渉相手は従来からの取引先だけにとどまらず、新たな取引先も開拓しているという。

 ネットワールドが最初にAWS Marketplace DSORモデルを適用したプロダクトが「CrowdStrike Falcon」だ。米CrowdStrikeが提供するクラウドネイティブなエンドポイントセキュリティプラットフォームで、次世代アンチウィルスやEDRなど多層防御機能を持つ。

 ビジネス面で見ると、CrowdStrikeはAWS Marketplace経由での販売に特に力を入れている。23年10月には、独立系サイバーセキュリティソフト開発会社では初めてAWS Marketplace経由のソフトウェア売上高が10億ドルを突破したほどだ。ネットワールドではCrowdStrikeをCPPOモデルで取り扱っていた実績もあり、DSORモデルの適用をいち早く進めることができた。

 このほかにもTrendMicroの製品も既にCPPOでの提供を開始しており、25年9月にはIBM、10月にはHCLSoftwareのDSORモデルでの製品提供を開始した。

「AWS Marketplaceが今後の主流になる」働きかけを進めるネットワールド

 これからますますAWS Marketplace経由でのソフトウェア販売は増えていくだろう。なぜなら今、クラウド導入が進み組織はサブスクリプション型サービスを次々に導入している、という時代の流れがあるからだ。ISVから個別にソフトウェアやサービスを購入すると管理が煩雑になるが、AWS Marketplace経由で購入すれば購入や契約の一元化ができる。特にAWSの利用に当たって予算を立てている企業なら、AWS Marketplaceの購入代金がAWSの利用料金と合算されることで、予算管理や経理処理が楽になるケースもあるだろう。嶋田氏は「市場のトレンドを見ても、AWS Marketplaceでのソフトウェア販売が今後の主流になることは明らかだ。この流れに後れを取らないようにしなくてはならない。パートナーにも『現在こういう形で業界が動いている』と伝えて、CPPOやDSORを一緒に進めていけるように働きかけている」と話す。実際に、必要に応じてチャネルパートナーになるための手続きなどを案内しているという。

 2025年11月のNetworld Wizでは、AWS Marketplaceをめぐる現状やCPPOやDSORモデルなどについても解説するセッションを設ける予定だ。クラウドにおけるソフトウェア調達の新たな展開に注目したい。

 
 
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外部リンク

ネットワールド=https://www.networld.co.jp