ITホールディングスグループのユーフィットは、金融業顧客のシステム開発・運用で培ったIT基盤技術をベースに、ビジネス拡大を推し進める。金融再編や法改正などの煽りを受けて、不安定な業績が続く同社。特定業種への過度な依存を改め、強みの運用アウトソーシングやIT基盤技術を前面に押し出す。また、ITホールディングスグループの有力SIerとの連携をより強め、相乗効果を最大限に発揮することで早期の業績回復を目指す。今年4月1日にトップに就任した西野隆英社長に話を聞いた。
全国基盤・グローバル展開へ
──銀行顧客のシステム統合案件の収束やノンバンク系顧客の経営環境の激変など、極めて厳しい状況下でのトップ就任となりました。
西野 当社は金融業界にとても強いSIerなのですが、金融業界そのものが大きく変わり続ける状況には、手の打ちようがありません。銀行の再編はもとより、利息制限や総量規制などによるノンバンク系の変化は、SIerとして抗うことができない。しかし、だからといって縮小均衡に陥ることは、絶対に避けます。売り上げを5%ずつ伸ばし、営業利益率は8%に戻す。これが当面掲げる目標です。
──今期(2011年3月期)、ユーフィットの連結売上高の見通しは前年度比8.7%減の390億円と発表しておられます。売り上げが、とうとう400億円を切る見込みです。
西野 銀行の統合案件が終了すれば、あとは効率化、統合化されたシステムの維持運用がメインになります。関連のソフト開発も必然的に縮小します。クレジットカードや信販会社などのノンバンク系はまだ再編の余地があるといわれていますが、今の段階では明確にはみえていません。当社は名古屋が本社なのですが、地元東海地区の製造業においても、明るさはみえるものの、全快とはまだ言い難い状況なのです。
では、当社はどうするのか? 愚直に技術力を高め、課題解決型の提案営業を強化し、コストを徹底的に削減する。これによってビジネスモデルを徐々に変えていくしか、業績回復の道はないと考えています。幸い、当社は元をたどれば銀行の連結子会社であり、金融業に精通し、とりわけクレジット・信販会社の情報システムに強い。控えめにみても、当社の業界における実力は年商400億円、営業利益率8%は安定的に維持できると自負しています。
──クレジット・信販会社などの金融系に強いということですが、直近の売上高構成比はどのくらいありますか。
西野 クレジット・信販でおよそ売上高の半分を占め、金融全体では6割余りに達します。地元を中心とした公共顧客に向けた売り上げが15%ほどあり、その他は製造業や流通など一般産業向けが占めるという構造です。
業種別にみれば“金融への依存度が高い”という印象が強いですが、一方、業務別でみると運用アウトソーシングの仕事が売り上げの約5割を占めています。金融系のミッションクリティカルなシステムをきちんと運用してきた技術と実績を、今後、例えばクラウド/SaaSといったサービス型のビジネスへ積極的に応用し、こうした新しい領域でのビジネスの可能性を探ります。
──TISやインテック、ソランなどから構成されるITホールディングスグループが発足して、今期で3年目。御社は初期からのメンバーですが、クロスセルなどの相乗効果はいかがですか。
西野 ITホールディングスグループ全体でのクロスセルビジネスは予想を上回る速度だと聞いていますが、当社が直接関わる部分は、まだ年商規模で数億円程度です。
ただ、今実行しているクロスセルは、主に既存の手持ち商材を、グループ企業の既存の顧客に対して相互に売り込んでいくのが中心。もちろんこれも大切なことなのですが、これからは、グループの強みをさらに融合して、新しい商材を開発していく必要があります。顧客の新しい需要を引き出していく活動がより重要になると考えているからです。キーワードは「全国基盤」「グローバル展開」といったところでしょうか。
「同一労働同一賃金」に照らせば、同じソフトを開発するなら
“国や地域が異なっても同じ報酬にすべき”となる。
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