キヤノンMJアイティグループホールディングス(キヤノンMJ-ITHD)が、年商3000億円を目指して、再スタートを切る。同社は、キヤノンマーケティングジャパン(キヤノンMJ)グループのITソリューション会社を集約した中間持ち株会社で、今年4月1日に発足。今年7月には、キヤノンソフトウェアなどを傘下に収めて、年商1000億円規模の統一感あるITソリューション事業体制を構築する。キヤノンMJ-ITHDを軸に、グループの総力を発揮することでビジネス拡大を目指す。
一丸となって競争力を高める
──今年7月、キヤノンソフトウェアをキヤノンMJ─ITHDの傘下に入れるなど、ITソリューション事業の再編を急ピッチに進めておられますね。
浅田 キヤノンMJ-ITHDは、キヤノンMJグループのITソリューション会社をまとめる中間持ち株会社として、今年4月に発足しました。ただ、この段階では、キヤノンソフトウェアなどがITHD傘下に入っていないなど不完全だったのですね。そこで、今年7月1日付でほぼすべてのMJグループITソリューション会社をITHD指揮下に集約。グループの総力を結集してITソリューション事業を拡大させる体制を構築します。
──昨年度(2009年12月期)は、キヤノンMJグループの連結売上高が前年度比17%も減るなど、試練の年でした。
浅田 今回の経済危機の影響を大きく受けました。景気減退で、複合機などハードウェアやプリンタトナーの販売が落ち込むのはある程度予想していたものの、私の担当するITソリューションセグメントでも前年度比16%も落ちてしまいました。ビジネスの厳しさを痛感しているところです。
──新体制の目指すべき方向は。
浅田 キヤノンMJは、キヤノン製デバイスを国内で独占的に販売する会社です。キヤノン製品を販売するという使命を担うわけですが、ことITソリューション事業に関しては、少し毛色が異なる。これまでは、キヤノンデバイスの販売とITソリューション事業が入り組んでいて、ややもすればITソリューション事業のまとまり感がなかった。これをキヤノンMJ-ITHDが軸となり、迅速で一体的なビジネスを推進する。これが今回の新体制の一番の狙いです。ITソリューション会社が一丸となって、情報サービス市場での競争力を高めていきます。
──老舗の大手SIerでさえ、昨年度は一様に苦戦しました。御社のITソリューション事業は歴史が浅く、経験値の差からくる弱さが、業績の落ち込みにつながったのではないでしょうか。
浅田 当社の本格的なITソリューション事業の立ち上げは、7年ほど前。その母体となっているのが、03年にグループ入りした旧住友金属システムソリューションズです。08年には旧アルゴ21も加わり、今のITソリューション事業の中核事業会社であるキヤノンITソリューションズ(キヤノンITS)を設立しました。旧住金システム、旧アルゴ21とも実力あるSIerであり、キヤノンITSを構成するメンバーの多くは、製造業や金融業に深く精通しています。決して経験値が低いわけではありません。
──では、どこが一番の課題となるのでしょう。
浅田 ITHD体制では、年商で1000億円強、人員数で6000人近い規模になります。とはいえ、現状ではソフトウェア開発のリソース比率が少し高すぎるように思います。これは日本の情報サービス産業が開発メインで発展してきた経緯もあり、当社でも同様の構造問題を抱えている。
世界の先進的なSIerをみると、顧客の経営課題を解決するコンサルティングや情報システムの企画・設計などの上流工程、そしてITライフサイクルを完結させる運用サービスやBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)などの下流工程がとても充実しているのですね。逆に、ソフト開発のリソースの多くは、インドなど海外へアウトソーシングしているケースが多い。
新体制では、SEやプログラマのスキルを一度棚卸しして、ソフト開発以外の工程やシステム基盤系の領域にスキル転換する必要がありそうです。
6000人の陣容で3000億円への道筋をつくる。
ハードルが高いことは重々承知している。
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