パートナー拡大で大企業開拓
──マイクロソフトはシトリックスのパートナーであり、一方で仮想化ソリューションでは競合となりますね。
キング 私たちの会社は非常にオープンで、多様なソリューションを展開してきました。仮想化をどのようなシステム、どのような機器に対しても提供していける唯一の企業なのです。パートナーに対してフレンドリーであり、顧客からみても非常にフォーカスしたビジネスを遂行しています。
例を挙げれば、つい先日シスコシステムズのサーバー製品「UCS(Unified Computing System)」とデスクトップ仮想化製品「Citrix XenDesktop」を組み合わせたソリューションで、シスコシステムズとのパートナーシップを発表しました。先ほどのWindows 7もそうですが、とくにマイクロソフトとの関係は非常に密で、デスクトップ仮想化に関してはシトリックスとビジネスを進めていきたいと指名してくれています。そこで、共同で仮想インフラ向けライセンス「Microsoft Virtual Desktop Infrastructure」と「XenDesktop」を組み合わせたソリューションを展開しています。
マイクロソフトとともに共同開催したセミナーには、延べ1000人ほどの参加者を集めた実績があります。10月にはまたジョイントセミナーを開催して、マイクロソフト製品とシトリックス製品を一緒に採用することのメリットをユーザー企業に伝えていきます。
──今年度は「デスクトップイノベーション」を掲げて、「デスクトップの仮想化」「エンタープライズビジネスの拡大」「アライアンスパートナーシップの拡大」を重点的に強化されるとのことですが…。
キング 「デスクトップイノベーション」を「ハイタッチセールス」「SIerとの連携強化」そして「マイクロソフトとのパートナーシップ」を高めることにより推進していきます。
「エンタープライズビジネスの拡大」では、トップ200の顧客とのビジネスを集中的に拡大させます。先ほど申し上げたマイクロソフトとの協業ソリューションの展開や、先頃、NTTデータとのデスクトップ仮想化における協業を発表しましたが、SIerを中心に据えてソリューションを提案していきます。またこうしたパートナーに対し、販売面や技術的な知識を提供するための教育プログラムを提供していきます。
パートナーとは、いかに同じレベルで情報を共有するかを考えていて、マイクロソフトとはお互いにトレーニングをしあうことで、エンドユーザーにきちんとソリューションを提供していけるように進めていきます。やはりデスクトップ仮想化を進めていくうえで大事なのは「ヒト」ですから、教育がキーになります。
──シトリックスの中期的ビジョン、そして、これから必要なこととは?
キング 短期から中期といった意味では、とくに変更はありません。デスクトップ仮想化は、日本では初期の段階です。調査会社のガートナーからは、2012年には世界中のデスクトップの60%は仮想化されるだろう、という予測が出ています。当社でも過去3四半期でデスクトップ仮想化のライセンス提供が世界で350万に達しました。パートナーにとっても大きなチャンスが到来しているということです。爆発的な展開をするためには、パートナーをどんどん増やしていくことがカギとなります。顧客の大規模導入がこれから見込めるわけです。日本企業の従業員はオフィスから非常に離れたところに住んでいて、また、長い時間働きます。在宅で働けるようにセキュリティを確保したうえで仕事をできるようにする。デスクトップ仮想化は、日本のビジネスを今後変えていく大きな転機となります。シトリックスのソリューションは柔軟性や安全性を提供するということを実現できます。当社のソリューションは実にユニークなのです。
眼光紙背 ~取材を終えて~
シトリックス日本法人では週刊BCNを購読していただいており、キング社長にとってもお馴染みの業界紙のようだ。「パーソナルな目標ですが、この新聞にいつか載りたいと思っていました。それを今日、達成することができました」と、笑顔で語ってくれた。
不況が逆にチャンスとなって、デスクトップ仮想化への関心が高まっている。仮想化の本格導入が進むなか、この波に乗り、デスクトップ仮想化対応製品が国内でも増え始めている。シトリックスは、アライアンスパートナーを強化する施策を展開しており、今年3月にはISV、IHV向けのアライアンスプログラム「Citrix Ready」を刷新。市場の開拓を加速させる。このプログラムには、現在、グローバルで1000製品が登録されている。
大きな波に乗るシトリックス。13年間、日本のビジネスを見てきたキング社長の手腕が発揮されようとしている。(環)
プロフィール
マイケル・キング
(マイケル キング)スターリングコマース、ガートナー・グループ、スターリングソフトウェアなどで上級管理職を歴任後、ボーランドソフトウェアのアジア太平洋担当バイスプレジデントと日本の営業担当バイスプレジデントを兼任し、同社の営業活動を指揮。2008年3月にシトリックス・システムズに入社。アジア太平洋地域のXenServer部門の責任者とシトリックス・システムズ・ジャパンの最高執行責任者(COO)を経て、09年3月より代表取締役社長に就任。
会社紹介
米シトリックスの日本法人として1997年に設立。製品は大きく分けて「デスクトップ製品」「サーバー製品」「ネットワーク製品」の三つ。米シトリックスの売上高は前年度比2%増の16億1000万ドル。日本法人の業績は非公表。Windows向けアプリケーション仮想化製品「Xen App」は100万ライセンスのインストールを達成。デスクトップ仮想化製品「Citrix XenDesktop 4」の提供を開始し、大規模導入が本格化している。