日本初のSAPパートナーとして、ERPビジネスを開始した東洋ビジネスエンジニアリング(当時は東洋エンジニアリング)。三井系のエンジニアリング企業を出自とし、製造業向けソリューションを得意としてきた。近年は海外事業を強力に推進し、SaaS/クラウドにも照準を合わせた。中国・上海に現地法人を設立し、SaaS型の原価管理システムを提供している。新機軸を打ち出して持続的な成長を期す石田壽典社長に戦略をうかがった。
シビアさをもって経営にあたる
──2009年度は売上高、営業利益が軒並み前年度比マイナスと落ち込みました。今期の目標は保守的な印象を受けます。円高に歯止めがかからない昨今の状況は、製造業をユーザーとして抱える御社にとって、不安要素ではないでしょうか。
石田 2008年を振り返ると、大きな出来事としてリーマン・ショックがありました。グローバル展開している日本の製造業は、もろに影響を受けた。08年度下期から10年度にかけて、厳しい状況のなかでいかに事業を再建するかということで、企業の多くは事業統合や生産・販売拠点の統廃合を図りました。ですから、新規のIT投資は絞らざるを得ない状況にあったわけです。
今年の1月から6月にかけて、全般的に製造業は回復基調にありました。経営者層もかなり前向きになってきた折に、この円高、そしてギリシャ危機に端を発する欧州の金融不安、アメリカの経済不況の抱き合わせですから。こんな状況ですから、今一度、シビアさをもって経営にあたらなければなりません。 円高はユーザー企業、とくに輸出型の製造業に対して強烈なインパクトを与えました。当社は、製造業向けに集中して事業を展開していますから、製造業のIT投資の動向がもろに業績に響きます。昨年度の売り上げは、前年比で26%ダウンしてしまいました。今年度も引き続き厳しい情勢が続くと覚悟しています。
──この厳しい情勢下にできることは何ですか。売上高の半分ほどを占めるSAP事業は、製造業のIT投資抑制が響いて受注状況が芳しくなかったようですが…。
石田 SAPのユーザーは大企業が多く、コアカスタマーをたくさん抱えています。子会社や関連会社への横展開などに取り組んでいきます。
──事業セグメント別にみると、日本オラクルのERP(統合基幹業務システム)「Oracle E-Business Suite」(EBS)などを販売するeビジネス事業の不振が目立ちました。
石田 ご指摘の通りで、オラクルのEBSの売り上げは半減しました。理由は二つあります。大企業でERPの新規導入が厳しかったことが一つ。もう一つは、オラクルがどちらかというと「JD Edwards EnterpriseOne」(JDE)を前面に打ち出して中堅規模企業以上のクラスを攻めていき、EBSは超大手向けにという戦略の転換があったことです。規模的にEBSの展開が手薄になりました。
当社は、中堅企業向けに自社パッケージ「MCFrame」を販売しています。これはパートナーが三十数社いる領域。JDEは扱いにくいので、販売代理店契約は締結していません。とはいえ、オラクルはアプリケーションもミドルウェアもあるし、最近はハードウェアも加わりました。多くの商材を揃えているという意味では期待しています。EBSオンリーではなく、サービスメニューを広げていく戦略を打ち出そうと考えています。
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