計画達成に向けた「真」の挑戦
──ITソリューションの不調を補完できるほど、プロダクト関連の事業が好調だったとのことですが、その特徴はどんなところにあるのですか。
小川 当社は新聞、雑誌などで取り上げられるようなユニークな新規商品の開拓に非常に熱心に取り組んでいます。そのために、海外に現地法人を置いて目利きをしています。米国、中国、タイ、シンガポールの4拠点を設置しているのですが、昨年、中国とタイ、シンガポールを各事業本部の下に置き、会計的責任を各事業本部に負わせました。ただ、米国法人は情報収集、発信の拠点として、社長直轄組織として置いてあります。
──新規商材という点では、09年、社内連携、環境ビジネス、仮想化を検討する分科会を発足されました。この1年余りの活動の成果をどのようにみておられますか。
小川 09年に立ち上げたときは、どの方向を狙っていくのかという議論と、新規商材の発掘・開拓を主眼としていました。それが2010年にいくつか具体化して、ビジネスの成果として現れています。分科会を通じて具体的に生まれたビジネスはいくつかあるのですが、環境ビジネスではデータセンターのエネルギー管理システムを「Energy-Concierge iDC」というブランドで立ち上げました。仮想化ビジネスについては、クラウドビジネスの中身を具体的に議論をしている最中です。すでに商品化したものとしては、「MSYS Virtualization Package(MVP)」を商品化しました。ストレージ、サーバー、仮想化技術を一つのパッケージにして、さらに当社のデータセンターからその資源を利用してもらうプライベートのクラウドサービスです。
──クラウドビジネスは、今後、丸紅グループでの展開があり得るのでしょうか。
小川 あくまでも当社単独のビジネスです。丸紅グループのなかの横連携プロジェクトの一つとして議題に上がることはあるかもしれませんが、現段階では具体化していません。
──09年にインタビューさせていただいた際には、2010年は「挑戦」の年とおっしゃっていました。2011年は御社にとってどのような位置づけになりますか。
小川 11年こそ「挑戦」です。10年度は09年の奮闘を土台にして、11年度の目標の達成への大いなる足がかりにしようと、そういった意味で「挑戦」だったんです。11年度は本当の意味での「挑戦」だと思っています。中期計画最終年度の数字は当然ながら高い。これを達成するのは至難の業です。先ほど申し上げたように、社員の期待以上の踏ん張りによって、計画を超える実績を残すことができています。これから、まさに11年度の最も高みの目標に果敢に挑戦していきます。
──2011年、その大きな目標を達成しようという節目の年に、何がいちばん必要となりますか。
小川 組織再編も含めて取り組んでいるES事業本部とBS事業本部の組織再編の効果をきちんと出していくことが、非常に大きなポイントです。P&Nや製造ソリューションは目標を達成しています。ですから、社員にはそれ以上の数字をここでひと踏んばりしてもらいたい。ES、BS両事業本部のかつてあった収益性を復活することができれば、目標に大きく近づくわけです。
収益力の回復は市場環境次第だとは考えていません。自らが新しいビジネスチャンスを獲得し、強い営業力、そして質の高いサービスを提供できるか。これらを手に入れられれば、ITニーズは決してなくならず、商機は必ずやってきます。そのためには、環境が厳しくて苦戦しているなかでも、それに勝る実力を備えていく必要があるということです。
・こだわりの鞄2年前の父の日に、お嬢さんに買ってもらったというビジネスバッグ。通勤用として愛用している。ブランドはわからないが、革が柔らかくて非常に使いやすいと満足げ。鞄へのこだわりはあまりないそうだが、お嬢さんの愛情が詰まったこのバッグには愛着を感じているようだ。
眼光紙背 ~取材を終えて~
淡々とした語り口調で、丁寧に、わかりやすく事業について語る小川社長。2007年にグループ会社2社が合併し、丸紅情報システムズとして歩みだしてからまだ3年程度。この間に、海外拠点を各事業本部傘下に置き、社内では組織再編を継続的に行っている。「社内連携推進分科会」「環境ビジネス検討分科会」「仮想化ビジネス検討分科会」の三つの分科会を立ち上げるなど、多様な施策を展開してきた。最近はメーカー各社の販売パートナーとして、名前がよく出てくるようになった。製品販売にも積極的に取り組んでいることがうかがえる。
09年年末に取材した際、小川社長は商社系のSIerとして、他社と比べると規模感が違うことを意識していた。この「Pi11」が達成するか否かで、その存在感を示せるかが決まってくるので、2011年4月から始まる最終年度は丸紅情報システムズにとってことさら重要な年となりそうだ。(環)
プロフィール
小川 和夫
(おがわ かずお) 1947年生まれ。1970年、慶応義塾大学法学部卒業。同年4月、丸紅飯田(現丸紅)入社。2000年6月、取締役、化学品部門長代行、03年4月、代表取締役常務取締役、人事部 広報部 経営企画部担当役員を経て、05年4月、代表取締役専務執行役員、社長補佐、エネルギー部門 金属資源部門 金融・物流部門 ビジネスインキュベーション部管掌役員に就任。07年4月、代表取締役専務執行役員、社長補佐、資材・紙パルプ部門 化学品部門管掌役員。08年6月、丸紅情報システムズ代表取締役社長に就任し、現在に至る。
会社紹介
1965年エム・アイ・テクニカル・サービスとして設立。何度かの商号変更を経て、97年、グループ会社の丸紅エレクトロニクスとの合併を機に商号を丸紅ソリューションに変更。07年、同じくグループ会社の丸紅情報システムズと合併し、現在に至る。コンサルティング、システム、ハードウェア/ソフトウェアプロダクト販売、システム構築からカスタマーサポートまで、ITライフサイクル全般に対するソリューションを提供している。