MDSが国内に急ピッチで波及
──ところで、先ほどリコージャパンの役割として言及されていた新領域とは、どんな方向でしょうか。
畠中 今年1月に発表した「リコー、グローバルMDS(マネージド・ドキュメント・サービス)」事業を、世界展開することをリコー本体で決めました。
発表以前から、急ピッチで国内のサイト(顧客)で採用を増やしていて、官庁系を中心に見込み客もかなり出てきています。これからやらなければならないこととしては、当社で「CIS(Customer Innovation Support Service)」といっている顧客の業務やオフィス環境変革のために、リコー社内で実践したノウハウを提供するソリューションを、顧客先に移植するビジネスを幅広く提供したい。これは「モノ売り」でなく「コト売り」ですね。それと、これに関連して「CISギャラリー」というのを全国支社に設置します。顧客にそこに来ていただければ、当社の製造面や購買面などで培った業務改革の姿をご覧いただける。例えば、「Lotus Notes」を使った業務ノウハウは世界に誇ることができます。こうした活動を、リアルの場だけでなく、CISギャラリーと顧客をテレビ会議で結び、対話しながら当社の取り組みをお伝えすることも検討しています。
──畠中社長は「モノ売り」から「コト売り」と表現して、脱・箱売りを図っておられますが、営業の第一線に浸透するまでには時間がかかるのでは?
畠中 正確にいうと、「モノ+コト売り」なんです。モノを引っ込めてコトに代えるわけでなく、当社はメーカーだからハードウェアを大事にしないといけないと思っています。モノの進化がコトを促進させます。具体的には、デジタル複合機(MFP)などが進化することで、顧客の業務改善のツールになる。それをもっと使いやすくするために、業務のやり方を変えることがコトなんです。
──ただ、ハードを売り、アフタービジネスで儲けていた収益構造は大きく変わりますね。
畠中 コトが加わることで、「パフォーマンス・チャージ」の利益が上がることはない。ただ、コトの利益がそこにプラスされるので、全体の商談の収益性は高くなる。モノとコトがうまく提供できた顧客は、なかなかリコーから離れられなくなります。当社の国内市場は3割程度です。まだ、残り7割の市場があります。市場が成熟したといわれていますが、まだまだチャンスはありますよ。
・こだわりの鞄トゥミ(TUMI)製のアタッシュケース。畠中社長は、革製鞄より甲板の鞄が好きで、アタッシュケースを愛用している。この鞄は「米国の友人に頼んで購入した」というもので日本では販売されていない。機能がすぐれている点が気に入っている。短期の出張程度なら、迷わずこれを使う。
眼光紙背 ~取材を終えて~
記者会見で、畠中健二社長がスピーチをする場面を何度か取材しているが、うつむき加減で、しかも小声で話す印象を抱いていた。もしかしたら、いつも横にリコーの大御所、近藤史朗社長がでんと構えていたからかもしれない。ところが、個別にインタビューしてみると、実に明快な口調で熱意が伝わってくる。
リコー販売の社長時代も一度取材しているが、その時から基本姿勢は変わっていない。「モノ売り」から「コト売り」へという方針を貫く。今度は、リコー販売のように首都圏だけでなく、畠中社長の意思が全国へ伝わる。「新しい領域へガンガン出る」と、全国1社になったことのシナジーの発揮を狙う。
背が高いので見降ろされる感覚があるが、相対してみると威圧感はない。恐らく、いつも目線を相手に合わせられる人なのだろう。技術畑の近藤社長に対して営業色が濃い畠中社長との二人三脚で、リコーグループがどう変わるのかが楽しみだ。(吾)
プロフィール
畠中 健二
(けんじ はたなか)1946年、福岡県生まれ、64歳。69年3月、早稲田大学第一政治経済学部経済学科卒業。同年、リコーに入社。97年10月、販売事業本部大阪支店長。2000年6月、リコー執行役員。02年1月にはリコー関西社長。09年6月から販売事業本部事業本部長。10年7月1日付で「リコージャパン」が設立され、同社の代表取締役社長執行役員に就任。現在、リコーの常務執行役員、リコーリースの取締役などにも就いている。
会社紹介
リコージャパンはリコーの全国販売会社を統合して誕生した。リコー北海道、リコー東北、リコー販売、リコー中部、リコー関西、リコー中国、リコー九州の七つの販売会社とリコー本体の販売事業本部の機能を統合し、日本全国1社の販売会社となった。