中国大手SIerの東軟集団(ニューソフトグループ)は、中国国内で日系有力ITベンダーと協業関係を深めるとともに、グローバル市場への進出を加速する。同社は東芝ソリューション(TSOL)やNECと中国市場をビジネスターゲットとする合弁会社を相次いで設立。協業を通じて獲得したノウハウを自社のITソリューション開発に役立てるとともに、これらの競争力ある商材をテコにグローバル市場へと打って出る構えだ。劉積仁・董事長兼CEOに話を聞いた。
世界進出の“先輩”との絆を深める
――東軟集団は、東芝ソリューション(TSOL)やNECと、相次いで中国市場向けのビジネスを立ち上げています。狙いはどこにあるのですか。
劉 TSOLとは2011年7月、NECとは少し早い6月から新しい合弁事業を始めています。両社と中国市場をターゲットに合弁事業を立ち上げるのは、実質、初めてのことです。ただ、TSOLとは15年余りいっしょに仕事をさせてもらっていますし、NECや富士通、日立製作所など日系有力ITベンダーとは長年にわたって良好な関係が続いていますので、今回の合弁事業もその発展形という見方もできます。
これまでは、例えばTSOLから当社がオフショアソフト開発を請け負う、あるいは日本向けのITソリューションを開発するケースが多かったのですが、7月にTSOLと設立した合弁会社の瀋陽東芝東軟情報システムは、中国市場をともに深掘りしていくことを主な目的としています。つまり日本市場を前提としたこれまでの協業とは異なり、中国市場を強く意識したものです。NECとの合弁会社の日電東軟信息技術では、中国市場でクラウド/SaaS型のサービス事業を立ち上げることに主眼を置いています。
――中国のトップグループにいる御社が、なぜ自らのホームグラウンドで日系SIerと協業するのですか。
劉 まず一つは、TSOLやNECがもつ技術的優位性を採り入れることです。ご存じのように、当社は中国全国にサービス拠点を展開して、猛烈なスピードで成長してきました。そして、これからも確かな技術力をもって成長していくためには、世界の有力ベンダーと提携していくことも大切だと考えています。TSOLやNECからみれば、当社の中国全土に張り巡らせた営業・サービスネットワークは魅力的だと思いますし、実際、TSOLやNECの中国ビジネスを合弁事業を通じてサポートしていきます。
もう一つは、大手SIerに成長してきたとはいえ、当社は今年でやっと創業20周年を迎えたばかり。世界の大手に比べれば、まだ若い企業です。東芝やNECグループは、社歴においてもグローバルでのビジネス経験においても先輩ですので、中国以外の市場でも、将来的に協業関係を構築できればと思っています。
――中国の情報サービス市場は、ここ数年、年率およそ30%で伸びています。しかし、御社の直近の連結売上高は前年度比20%弱の増加でしかなく、営業利益は若干落ちています。
劉 中国の情報サービス市場が急拡大しているのは事実ですが、当社は割と堅実な道を進もうとしています。ハードウェア販売や大規模な受託ソフト開発に踏み出せば、年率3割以上のペースで売り上げを増やすのはたやすい。でも、当社はあくまでも競争力のあるITソリューションを軸に成長したいと考えています。通信や金融といった社会インフラ、製造・流通サービス、医療分野など、それぞれの分野で当社ならではの強みをもったITソリューションを開発し、ビジネスを伸ばしていく。このためには優秀な人材の育成、研究開発、商材開発にかかる先行投資が必要なのです。有力な日系SIerとの協業は、他社にはないITソリューションを手にするためでもあります。
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