中国ソフト産業のいま
<中国ソフト産業のいま>9.東軟のダイナミズム
2003/03/03 20:43
週刊BCN 2003年03月03日vol.980掲載
この連載は、これまで主に中国ソフト産業のファンダメンタルや、日本のソフト産業との関わりについて述べてきた。今号からは、中国ソフト企業の実像に迫っていきたい。最初は、日本で最も知られた中国ソフト企業、東軟集団を取り上げる。同社の概要については、ご存知の読者の方も多いと思われるが、簡単に触れておこう。(坂口正憲)
東北工学院コンピューター学科を出自として1991年に設立。日本のアルパインの出資を受けて企業化を進め、95年には中国ソフト会社として初めて株式公開を果たした。現在では、社員が5000人を超える中国最大のソリューション企業グループとなり、海外大手ベンダーと提携を進める。ここで紹介したいのは東軟集団のダイナミズムである。
同集団の劉積仁会長は47歳と十分に若いが、株式上場する中核会社、東軟股分の王勇峰総裁に至っては32歳。若いことは必ずしも良いとは言えないが、企業の躍動を示す指標だ。年齢に関係なく実力次第でどんどん上に上がれる。これが社員のやる気を持ち上げる。東軟集団日本法人の高堰茂社長は、こんな風景を中国本社で目にした。まだ社内で誰も手掛けたことがない開発案件でのこと。何百ページにも及ぶ英文技術仕様書の読破を前提に、開発希望者を募った。そうすると、「自分にやらせてくれ」と応募者が殺到した。少しでも自分を主張できる材料があれば食いつく。
社員のやる気の裏には危機感がある。中国最大のソリューション会社に就職できたからと言って、決して安泰ではない。東軟集団は01年から自前のIT専科大学を2校持ち、5000人が学ぶ(05年には2万人)。1、2年後から、早く自分を認めさせようという野心に溢れた人材が次々と社内に流入してくる。いつ、後輩に追い抜かれるかわからない。それは会社全体にも言える。“中国最大”に甘んじていたら、すぐに停滞してしまう。国際競争に打ち勝てるように、ソフト開発工程管理の国際基準で最高レベルを取得した。世界第2位のIT市場を持つ日本でも、これだけダイナミックな企業は見当たらない。
この連載は、これまで主に中国ソフト産業のファンダメンタルや、日本のソフト産業との関わりについて述べてきた。今号からは、中国ソフト企業の実像に迫っていきたい。最初は、日本で最も知られた中国ソフト企業、東軟集団を取り上げる。同社の概要については、ご存知の読者の方も多いと思われるが、簡単に触れておこう。(坂口正憲)
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