2011年7月1日、郡信一郎氏がデルの社長に就任した。デルに在籍7年、営業統括本部長から昇格して経営トップの任についた郡氏は、デルをソリューションプロバイダへ脱皮させようとしている。脱箱売り、脱直販──。ハードウェアの直接販売がお家芸だったデルが、大きく変わろうとしている。それを指揮する42歳の若きトップに、方針と戦略を聞いた。
ITソリューションの大衆化を
――「直販のデル」「ハードウェアのデル」というイメージを徐々に変えようとしているようにみえます。新しく就いた企業トップとして、郡社長が抱くデルの方向性を聞かせてください。
郡 確かに、デルは大きく変貌しようとしています。社長就任時、社員に対して「デルは世界的なソリューションプロバイダに変わろうとしている。長い道のりかもしれないが、リスクを恐れず、変革の道を進もう」と伝えました。今、デルが標榜するのはソリューションプロバイダです。
――「ソリューションプロバイダ」の定義は人によってさまざまです。郡社長が目指すデルの姿はどのようなものでしょうか。
郡 まず、デルが手がけるソリューションは、情報システムのインフラ周りで、アプリケーション開発は含みません。あくまでもアプリを動かすIT基盤をターゲットに置いています。そのうえで、何を特徴にしているかといえば、ミッドマーケット(中堅のユーザー企業)を対象としたソリューションに強い。つまり品揃えが充実していることです。たぶん質問に出てくると思うので、ミッドマーケットの定義を説明すると、従業員数が100人から1万人程度の企業と定めています。
私見を少しお話しすると、これまでのITソリューションは、大企業が導入するもので、それ以外の企業にとっては“高嶺の花”だったと思います。でも、もうそんな時代ではない。ITは誰でも利用できる大衆化されたツールなのに、ITソリューションと名を変えた途端に、敷居が高くなる。
高級車もあれば大衆車もある自動車のように、ITもそうあるべきだと私は思っています。機能はシンプルで必要最低限かもしれないけど、ミッド以下の企業が導入するには十分。価格は抑えてあり、IT予算が大企業に比べて乏しい中堅企業には最適。そんなITソリューションが充実しているソリューションプロバイダがいてもいいはずです。
もう一つ言いたいのは、多くのITソリューションは、ITベンダーが“(顧客を)囲い込む”ためのもののように感じるということです。「このシステムの変更は、開発したソフト会社しかできない」とか、「A社のサーバーを導入したら、ネットワーク機器もA社のものを利用しなければならない」とか。この点は、デルはまったく異なっています。20年以上、“オープン”にこだわっている。デルのサーバーは他社のストレージにつながるし、その逆も当然あります。デル製品を導入したから、ほかのハードやソフトもデル製品で統一しなければならないなどということは、絶対にありません。
――そのソリューションを提供する体制はすでに整っていますか?
郡 先ほど「直販のデル」という言い方をされましたが、確かに昔はそうでした。ですが、今はそうではありません。3年ほど前からチャネルビジネス(ITベンダーを通じた間接販売)を本格的に行っています。ソリューションビジネスを拡大するためには、パートナーの力が欠かせません。まだまだ未整備な点がたくさんありますが、今後はもっと強くします。今は、徐々に整備している段階だとみてください。
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