組織再編でチャネル事業に本気
――今年度の期首にあたる2011年2月に、大きな組織再編を行いましたね。大企業と公共機関向け事業を手がける部門、SMB(中堅・中小企業)とコンシューマ向け事業部門に大きく分け、この二部門を横串しでみる組織としてパートナー事業部門を新設しました。ここまで大がかりなパートナー支援チームを組織したのは、初めてですね。
郡 二つの事業部門にまたがるかたちでチャネル(パートナー支援)部門があることは、とても重要なことなんです。海外のITベンダーは、大企業に強いとか、中小企業を得意にしているとか、ユーザー企業の規模や業種で色がある。ただ、日本のSIerは、ユーザー企業の規模や業種・業界を問わず、広く顧客をもっている例が多いですね。
新組織が発足する前は、パートナーから問い合わせがあった時に、ユーザー企業の規模や業種・業界によって支援する部門が異なりました。そうなると、案件ごとにパートナーを支援する部門が異なり、パートナーにとっては不便だったと思います。今回の組織は、どんな案件であれ、ユーザー企業の規模がどうであれ、一つの窓口で相談に乗ることができるようになりました。パートナーにご迷惑をかけていた部分を、少しは解消できたのではないかな、と。
また、パートナー向けのマーケティング活動を積極的に行う意味でも大きな役割を果たします。パートナー支援の専任組織がない頃は、ユーザー企業向けのマーケティング活動に終始しがちでしたが、これも改善できる。ユーザー企業向けと、パートナー向けのマーケティングをそれぞれ手がけられるようになります。
――新組織が発足しておよそ半年が経ちました。その成果は?
郡 まだまだやらなければならないことはたくさんあります。ですが、感触としてはよい方向に向かっています。一例を挙げれば、先日、ユーザー企業向けの自社イベントを開催したのですが、その時に初めてパートナー向けイベントを同時開催したんですね。おかげさまでパートナーから高い評価を頂けました。
――直販とパートナー経由のビジネスの比率にはこだわっていますか?
郡 いや、エンドユーザーの業種や企業規模での事業規模をレポートしているので、まだその区分けはしていません。
――最後に、パソコンとサーバーのマーケットシェアについての考え方を聞かせてください。デルの日本法人は、ここ数年、利益を大きく伸ばしたが、その一方でシェアをジワジワと落としています。今も歯止めがかかっていない印象です。郡社長は、シェアを追いかけますか?
郡 シェアだけを経営指標に挙げることは、当然ですが、しません。ただ、今のデルのシェアは下がりすぎです。非常によくないと思っています。「いつまでに、何%のシェアを獲る」とは明言しませんが、このままのシェアで満足することはありません。必ず引き上げます。
・お気に入りのビジネスツール 社長就任を祝って、部下がプレゼントしてくれた「MONTBLANC(モンブラン)」の名刺ケース。ビジネスツールの「デザインにこだわりはない」という郡社長だが、この名刺入れは「シンプルなデザインのなかに、モンブランのロゴがさりげなく飾られていて、気に入っている」そうだ。
眼光紙背 ~取材を終えて~
営業統括本部長からのトップ就任は異例の昇格だったはずだ。社長就任前の2011年6月22日に開いた新社長披露会見で、前社長のジム・メリット氏は、郡氏について「私が日本に来たときから、ずっとサポートしてくれた。次の変革に向けてリードする力があると信じている」と語った。前社長の郡氏に対する信頼は厚かったのだろう。
インタビュー中は、質問の意味を一つひとつ聞き取り、丁寧に答える。「クレバーでロジカル、ドライ」。受け答えの仕方と回答の内容からそう感じた。「トップになるとプレッシャーも大きいのでは?」との問いには、「いや、チャレンジを求めてきた結果として今があるから、そうは思わない」と断言。重圧はプラスに働くようだ。
世界第2位のパソコンメーカーの日本法人の陣頭指揮を執る若き司令塔が、デルをどう変えるか、楽しみだ。最初の試金石は、質問の時に少しだけ表情を曇らせた「シェア」だろう。 (鈎)
プロフィール
郡 信一郎
(こおり しんいちろう)1969年3月、東京都生まれ。横河メディカルシステム(現・GEヘルスケア・ジャパン)や、ブーズ・アレン・アンド・ハミルトン(現・ブーズ・アンド・カンパニー)を経て、04年4月にデルに入社。マーケティング・ディレクターに就いた。その後、公共営業本部長や執行役員、米本社の北アジア地域公共事業本部長を歴任し、11年2月に営業統括本部長。11年7月1日に代表取締役社長に就任。主な学歴は、1991年にタフツ大学の機械工学学士号、98年にハーバード大学にて経営学修士号を取得。
会社紹介
デルは米デルの日本法人で、1989年に設立された。パソコンやサーバー、ストレージ、ネットワーク機器といった情報システムを構築するためのハードウェアをひと通りもつ総合コンピュータメーカー。「デルモデル」といわれる、BTO(受注生産方式)で直販するという戦略を推進し、実績をあげた。07年に創業者のマイケル・デル氏がCEOに復帰したのを機に、間接販売を強化。ソフトウェアとソリューション事業にも力を入れている。