グローバルパートナーの地歩を固める
──日本IBMは、5月15日付のトップ人事で、米IBM副社長でドイツ出身のマーティン・イェッター氏が社長に就任する予定です。この人事の最大の目的が「IBMグループのグローバルの経営リソースを日本に投資することだ」と、日本IBMの橋本孝之社長は話しています。日本IBMのトップソリューションプロバイダであるJBCCはどう対応しますか。
東上 日本IBMがグローバル対応を一段と強めるのであれば、当社も最有力のビジネスパートナーとして、グローバル対応をこれまで以上に進めるまでです。
JBグループは、中国4か所とASEAN地区に拠点を展開していますが、JBCCとしても既存顧客のアジア成長国への進出や、逆に海外から日本市場へ進出するユーザー企業をITの側面から支援する体制の拡充に引き続き取り組んでいきます。JBグループは、日本IBMのビジネスパートナーというだけでなく、すでにアジア太平洋地区での有力なビジネスパートナーの1社であるとIBMグループから認識してもらえるまでになっています。また、IBMというグローバルカンパニーの日本法人の経営に携わってきた私自身の経験も、今のJBCCのグローバルビジネスに役立っています。
──直近のグローバルビジネスに関する取り組みをお聞かせください。
東上 まず前提として、日本の製造や流通・サービス、金融のあらゆるユーザー企業がグローバル化を急ピッチで進めています。JBグループでは、3月15日に中国法人が3周年を迎えるなど、グローバルビジネスで一定の成果が出始めています。昨年度(2012年3月期)からは、国内の営業やSEが関与した主に日系ユーザー企業のグローバルビジネスについては、関与度合いを報酬と連動させる仕組みがスタートしており、モチベーションの維持向上にひと役買っています。
──中期経営計画では、2014年3月期の年商1000億円の目標のうち10%をグローバル関連事業で売り上げる見込みを示しておられる。この点については……。
東上 もちろんこの10%の少なからぬ部分は私の責任範囲ですし、中核事業会社であるJBCCがJBグループのグローバルビジネス拡大の原動力にならなければならないと考えています。
冒頭述べたように、イノベーションをスピード感をもって継続していくことは、口で言うほど容易なことではありません。イノベーションは自然に湧いてくるものではない。ユーザー企業とビジネスパートナー、当社を含むJBグループ自身の三者のアイデアを融合していくことで成し得るものです。このサイクルを迅速に回してビジネス拡大に努めていきます。
・お気に入りのビジネスツール お気に入りのビジネスツールは、スイス「BLANCPAIN(ブランパン)」の機械式腕時計だ。重要な商談に臨むときなど「“ここぞ”というときに愛用している」という。「機械式は実直な印象で、気持ちが引き締まる」と、これまで数々の商談を勝ち取ってきた“勝負時計”としてのゲンも担ぐ。
眼光紙背 ~取材を終えて~
新生JBCC社長を引き受けるまでは、日本IBMであまたのプロジェクトを指揮してきた東上征司氏。とりわけ印象に残っている仕事は、今からおよそ25年前、西濃運輸でのバーコードを活用した荷物のトラッキングシステムの開発だ。
「今ではあたりまえだが、当時としては大きなイノベーション。私自身はまだ20代だったが、西濃運輸の役員を前にしたプレゼンテーションをはじめ緊張の連続だった」と振り返る。
ほかにも、某大手ネット銀行のシステムでは、「金融業界特有の規制対応と、ユーザーの使い勝手の向上という相反する要望を実現し、1年半という短期間のうちに稼働までこぎ着けたプロジェクトが印象に残っている」という。
前者は「イノベーション」、後者は「スピード」がキーワードである。「顧客に徹底して張りつき、イノベーションとスピードで勝ち残る」ことを基本戦略に位置づける。(寶)
プロフィール
東上 征司
東上 征司(ひがしうえ せいじ)
1958年、大阪府生まれ。82年、名古屋工業大学工学部卒業。同年、日本IBM入社。06年、執行役員金融事業担当。07年1月、常務執行役員金融事業担当。同年10月、専務執行役員金融事業担当。09年、取締役専務執行役員営業担当。10年、取締役専務執行役員グローバル・テクノロジー・サービス事業・システム品質担当。12年2月、日本ビジネスコンピューター(現JBCC)顧問。同年4月1日、JBCC代表取締役社長。
会社紹介
JBCCはJBCCホールディングスグループ(JBグループ)の中核事業会社である。JBグループの社員数はおよそ2800人。そのうち、旧日本ビジネスコンピューター(JBCC)と旧JBエンタープライズソリューション、JBサービスの一部で再編した新生JBCCの社員数は約1000人を占める。JBグループ全体の2011年3月期の連結売上高は822億円で、中期経営計画では2014年3月期に年商1000億円達成を目指す。