SIerを中心に、事業会社を17社抱えるJBCCホールディングス(JBCC-HD、山田隆司代表取締役社長)が、2012年4月1日、大幅な組織改革に動く。年商約820億円、従業員数約2800人(グループ合計)という規模を考えれば、事業会社が多いという印象があった。「機能が細分化していた」(山田社長)という問題の解決に動く。JBCC-HDは、SMB(中堅・中小企業)をターゲットとする準大手クラスのSI集団として代表的な企業。規模こそ異なるが、同様の体制を敷くITベンダーも存在するだけに、試金石になりそうだ。
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| 来年度期首にトップ就任三年目を迎える山田隆司社長 |
JBCC-HDは、M&Aと海外事業への進出、経営のスピードアップなどを目的に、ここ数年で事業会社を増やしてきた。JBCC-HDが発足した2006年4月1日時点では、事業会社は3社だったが、現在は17社と5倍以上。2010年4月1日にトップに就いた山田社長は、就任直後に事業会社が多いことを課題として認識しており、「社長に就任する前、2~3年前からグループ再編は社内で議論されていた」とも打ち明ける。今回のグループ体制の見直しには、こうした背景がある。
再編の大きなポイントは二つある。一つは、大手企業向けビジネスを手がけるSI会社であるJBエンタープライズソリューション(JBES)と、SMB向けSI会社である日本ビジネスコンピューター(JBCC)の経営統合。もう一つが、ユーザー企業の情報システムの運用代行サービスを企画・提供するJBサービス(JBS)から企画部門を切り離し、JBESとJBCCの統合会社に移管することだ。つまり、対象顧客と、業務の内容で分けた事業会社を統合する、というわけだ。
ユーザー企業の規模で、事業会社を分けたことによる情報・ノウハウの共有不足と、中核事業会社が明確ではなくなったことによるグループの統率力低下といった課題を解決する。そして、サービス事業専門会社がメニューを企画していたために、ユーザー企業が要請する「全体の要望を把握したうえでの新サービスの創出がうまくいかず、商品力の低下を招いた」(山田社長)ことも改善する。
JBCC-HDは、東日本大震災が起きた直後にもかかわらず、今年度(12年3月期)から3か年の中期経営計画をスタートした。売上高1000億円の到達と営業利益率3.5%の確保という目標に向けて動き出し、今年度上期は増収増益で上々の滑り出しだ。今回の組織再編は、「中計を完遂させるための重要な基盤」と山田社長は位置づけている。
JBCCのように顧客の規模や業務内容で事業会社を分けるSIerは多い。時期や各企業の個別の事情によって、体制の分散と統合は繰り返されるのが普通ではある。だが、準大手クラスのSIerとして代表的なSI集団であるJBCC-HDが、用意周到に準備してこの時期に再編を手がけるのは、類似するSI会社にとっては、今後の事業体制を考えるうえでの試金石になるはずだ。(木村剛士)