国内ITベンダーの海外展開を支援
──日本のITリーダーからみて、製品力が補完できること以外に、御社と提携するメリットとして何がありますか。
吉田 私が考えている提携モデルの特徴は、「バイディレクショナル」であるということです。バイディレクショナルというのは、一方的に、当社が日本のITベンダーとの協業によって日本市場を開拓するのではなく、提携先の日本のITベンダーもBTのグローバル販売網を活用したり、当社との連携を通じて海外ビジネスを強化することができることを意味しています。
富士通やNECなど、国内の大手ITベンダーはこのところ、事業を拡大するために海外展開に力を注いでおり、海外各国で強い販売力をもつパートナーを必要としていると思います。当社は、およそ170か国でビジネスを展開していて、国際企業と現地企業の両方を得意とする幅広い販売のネットワークをもっています。さらに、販売に関してだけではなく、海外で需要が急拡大しているユーザー企業のグローバルプラットフォームづくりにあたって、BTはネットワークのグローバル対応を実現する技術ノウハウを提供することができます。
販売と製品でのコラボレーションに関して、日本のITベンダーにとって当社とのパートナーシップが有意義なものになると自負しています。
──BTは成長が著しい中国で、数年前から現地市場の開拓を推進していると聞いています。今回、吉田社長の就任をきっかけとして、BTジャパンも日本企業向けビジネスに拍車をかけて、アジア各国のICT市場を急ピッチで開拓しようとしている印象を受けます。
吉田 BTの英国本社は、今夏、ロンドンで開催されるオリンピックのネットワーク構築を担当しており、これを機に、BTの知名度がアジアを含めて全世界で高まると期待しています。アジアは、クラウドコンピューティングの普及が速いスピードで進み、さらに、「スマートシティ」や「ビッグデータ」といった話題性の高いICTトレンドに関しても、非常に大きな需要が期待できます。アジアでBTとして事業を拡大するために肝心なのが、各国の市場に適したアプローチ手法をとることです。その一環として、今回の販売体制の再編に取り組んでいます。日本のITリーダーと提携して、BTが単独では気づかなかった日本のユーザー企業のニーズを指摘してもらい、たとえてみれば、日本で生まれた照り焼きチキンバーガーのように、当社の製品・サービスを日本にローカライズしたかたちで提供していきたい。
──インタビューの締めくくりとして、BTジャパンの売上目標を聞かせてください。
吉田 数年のうちに、日本法人の売り上げを倍増したいと考えています。それに向けて、販売体制を強化することに加え、本社と緊密に連動するかたちで、スマートシティとビッグデータ関連の新しい製品・サービスを開発しているところです。日本でのこれからの経営戦略については、ロンドンからフルにサポートを受けており、早いうちに事業の拡大を実現したいと考えています。
・お気に入りのビジネスツール 社長室の壁にかけているベル。一見するとビジネスツールには思えないが、吉田社長はこのベルを使って、社員の士気を高めているそうだ。「社員が受注するたびにベルを鳴らして、次の受注に向けて頑張るスピリットを培う」と、闘志を高めるためのツールとしての活用法を説明してくれた。
眼光紙背 ~取材を終えて~
BTは2010年秋、香港でプレス向けのイベントを開催し、英国本社の幹部らがアジアで積極的に事業を伸ばしていくことを表明した。記者は、そのイベントを踏まえ、2011年、BTの中国法人のキーパーソンに取材をする機会を得て、ローカル市場の開拓を柱とする中国でのビジネス戦略についてたずねた。今回のインタビューで吉田晴乃社長が述べているように、BTはアジア各国で、現地のユーザー企業を獲得することに力を入れている。
BTは海外で、もともと大手の国際企業をターゲットに、ネットワーク構築からITサービスの提供までのフルサービスを提供して、ビジネスを拡大してきた。今後、各国の現地市場を開拓するために、いかに販売パートナーを獲得することができるかが、喫緊の課題。
吉田社長が描く、日本のITリーダーとのパートナーシップは、一つの成功モデルとなりそうだ。(独)
プロフィール
吉田 晴乃
吉田 晴乃(よしだ はるの)
大学を卒業して日本のモトローラ社に入社。その後、カナダの通信会社に転じた。2000~08年、NTTコミュニケーションズ(日本本社)とNTT America Inc.(ニューヨーク事務所)でさまざまな役職を歴任。さらに、ベライゾンジャパンの営業本部長を務め、日本での企業向けサービスを統括して、IT市場進出の成長戦略の推進を担った。2012年1月、BTジャパンの社長に就任。
会社紹介
英国大手のICT(情報通信技術)ベンダーであるBT(ブリティッシュ・テレコム)の日本法人。BTで国際ビジネスを展開する「BTグローバル・サービス」部門の傘下にあり、大手の外資系企業を中心にネットワークサービスや電話会議システムなどを提供している。2006年、KDDIとの合弁会社「KDDI&BTグローバル・ソリューションズ」を設立した。従業員数はおよそ100人。東京・赤坂に本社を構える。