日本市場での高い成長率を維持
──日本市場の可能性については、どのように捉えていますか。
ピンチェフ グローバルの売り上げでは、日本は米国に次ぐ規模をもつ市場で、しかも成長率ではトップで、非常に重要な市場です。今後もますます拡大すると捉えていますので、これまで以上に日本への投資を増やしていきます。
──具体的に、何に投資するのですか。
ピンチェフ オフィスが東京だけですので、拠点を増やすことを検討しています。具体的な地域は未定ですが、ユーザー企業が多い場所などで検討しています。
もちろん、営業担当者やサポート人員の補強も考えていますが、それには条件があります。昨年度(11年12月期)、日本法人の売上成長率は30%でした。この成長率を維持することです。日本法人のスタッフが、どれだけ頑張るかにかかっています。
──製品の拡販には、SIerなど、販社とのパートナーシップも必要といえます。協業の強化に取り組む予定はありますか。
ピンチェフ アクロニスは、グローバル市場で国によって直販と間接販売の比率が異なっていて、日本と同じように間接販売を重視している国もある。当社が直接パートナーシップを結んでいる約2万8000社の販売パートナーに対しては、技術的なトレーニングや拡販のための研修などを行っていますので、これらは引き続き実施していきます。また、案件によっては、当社とストレージメーカー、販売パートナーが組むことも考えられる。こうしたかたちのパートナーシップを強めるなど、常にベストなソリューションを提供できる環境を整えます。もちろん、マイクロソフトやヴイエムウェア、シトリックスなど、仮想OSメーカーとのパートナーシップも深めていきます。
──販社向けの販売パートナープログラムなどに、改善の余地は……。
ピンチェフ すでに販売パートナーが十分に利益が確保できるような販売プログラムを策定しています。当社の製品は、ユーザー企業から「他社製品に比べてリーズナブル」と評価されるなど、ベストなバリューで提供しています。ですから、現在はプログラムの変更は考えていません。
──バックアップソフトの可能性については、どのように考えていますか。
ピンチェフ 先ほど市場環境を申し上げましたが、ユーザー企業が所有するデータ量は今後も増えるため、バックアップソフトが企業にとってますます必須のアイテムになります。日本では昨年、3月11日に東日本大震災が発生し、BCP(事業継続計画)の観点から多くのユーザー企業がバックアップの必要性を再認識するようになりました。
データをバックアップしたいという流れは一過性のものではなく、今年に入ってからも続いていますので、市場が拡大することは間違いない。そのなかで、当社の優秀な技術者がユーザー企業の求める使いやすい機能を開発し、誰でも簡単にデータをバックアップできる環境を構築することが重要だといえます。バックアップを身近なものにすることがメーカーの使命だと考えています。今後も、製品強化のスピードを速めていき、さらに市場を活性化していきます。
・お気に入りのビジネスツール アップルの大ファンで、iPhoneをはじめ、iPadやMacをこよなく愛する。とくに、「iPhoneはビジネスでは欠かせないツールだ」という。海外出張が多いことから、iPhoneで移動中にウェブ会議を行うこともしばしば。肌身離さず持っているアイテムだ。iPhone内のデータは、もちろんアクロニス製品でバックアップしている。
眼光紙背 ~取材を終えて~
内側からパワーがみなぎっていて、アグレッシブな印象。それでいて、言葉は冷静沈着だ。昨年度の日本法人売上成長率30%を維持しながら、さらにスピードを求める。日本法人のあるスタッフは、「アレックスがトップになり、会社が変わった」と語る。「(日本法人は)すでに市場での認知度があるが、さらに存在感を高めたい」と意欲的だ。
製品の品質を高めることに対しても、徹底的に追求する。誰でも使うことができる製品をモットーに、最新技術の駆使に余念がない。
バックアップソフトは、これまでサーバーやストレージを導入する際に同時購入するいわばサブアイテムのような存在だった。しかし、データ量の増大やDR(災害復旧)の要請で、バックアップのニーズが高まった。そのなかで、トップ交代をきっかけにアクロニスが進化を遂げようとしている。(郁)
プロフィール
アレックス・ピンチェフ
Alex Pinchev(アレックス・ピンチェフ)
欧州などでソフトメーカーを立ち上げた後、2002年6月、米MROソフトウェアの上級副社長に就任。その後、米レッドハットでグローバルセールス上級副社長、インターナショナル部門の担当社長などを務める。10年11月、米アクロニスの取締役に就任。12年1月、社長兼CEOに就任。現在に至る。
会社紹介
データバックアップ・障害復旧・ディスク管理ソフトウェアを開発するメーカーとして2002年に設立。日本法人のアクロニス・ジャパンは、08年に誕生した。個人向けにパソコンのデータのバックアップや復元、丸ごとイメージの作成、データの完全消去を実施する「Acronis True Image」シリーズ、法人向けに仮想マシン、Windows/Linuxのサーバー/ワークステーション用バックアップ「Acronis Backup & Recovery」シリーズなどを提供する。