有力SIerのインフォコムは、ネットビジネスとITサービスを軸に年商1000億円プレーヤーへの成長を視野に入れる。自らコンシューマ向けのネットサービスを手がけるとともに、コンソーシアム形式でヒット商材となったERP(統合基幹業務システム)の「GRANDIT(グランディット)」事業を立ち上げるなど、情報サービス業のなかでは極めてユニークなビジネスで伸びてきた会社だ。今後は強みや得意分野を中心に、グローバル展開を視野に入れた成長を成し遂げることで存在感をより一段と強めていく。
重点分野を定めて経営資源を集中投下
──御社の商材は、コンシューマ向けのネットビジネスから硬派のERP、医療分野のレントゲン画像管理システムに至るまでとても幅広く、失礼な言い方をすれば少々散漫になっている印象を受けます。
竹原 市場が成長している分野、あるいは自らの強みが発揮できる分野に重点を絞って集中的に取り組んできた結果です。今年4月に私が社長に就いたのと同じタイミングで中期経営計画もスタートしたのですが、キーワードの一つに「進化」を挙げています。先入観や前例踏襲にとらわれるのではなく、何事にも果敢にチャレンジする。一過性の取り組みではなく、利益が循環するようなエコシステムの構築やグローバル規模での発展の可能性など、今のビジネスをより進化させていくことが、当社の成長に欠かせない基本路線と位置づけています。
──直近の2012年3月期で売上高、営業利益とも過去最高を達成されました。これに続く新しい中期経営計画での目標を聞かせてください。
竹原 09~11年度(12年3月期)の中期経営計画では年商400億円を目指していたのですが、着地点は364億円と届きませんでした。とはいえ、過去最高の業績を達成できたのは、前に述べた伸びる分野、得意な分野にうまく経営資源を配分できたからだと自負しています。今期から始まった新しい中期計画では、とりあえず2017年3月期に550億円、将来的にはM&A(企業の合併と買収)も含めて年商1000億円プレーヤーになることを目指します。
重点分野は、大きく分けて「ネットビジネス」と「ITサービス」の二つです。前者には電子書籍やネット通販、ソーシャルメディア関連、後者にはERPの「GRANDIT(グランディット)」や医療関連システムがそれぞれ含まれます。M&Aについては、当社にない技術をもつ会社で、かつ当社の重点ビジネスに欠かせないと判断したケースに絞って積極的に取り組んでいきたい。単に技術的にすぐれているだけなら業務提携で十分なのですが、なかには「他社には絶対にとられたくない」と思うものも少なからずあります。
──ネットビジネスでの具体的な成果を教えていただけませんか。
竹原 まず注目しているのはモバイルです。当社は従来型携帯電話向けに主に漫画を配信する電子書籍サービス「めちゃコミックス」で業界トップクラスのシェアを獲得した実績があります。調査会社などの調べによれば、従来型携帯に向けの電子書籍サービス市場は2011年に572億円程度まで拡大しましたが、iPhone/iPad、Androidなどのスマートデバイス向けサービスは、2015年に3倍近い1600億円規模に伸びる見込みです。私自身、2000年代中盤に30億円もなかった当社のモバイル向けビジネスを直近では100億円規模まで拡大させてきました。スマートデバイス時代はさらに3倍の市場になるわけですから、当然、ここでもトップを目指します。
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