スマートデバイスがカギを握る
──スマートデバイスとクラウドは“対”になっているわけですが、御社のクラウドやグローバル展開についてはどうでしょうか。
竹原 正直に申し上げて、IaaS/PaaS的な基盤領域のクラウドは当社には合わないし、この領域へは進むべきではないと思っています。当社はラック換算でおよそ640ラック相当の自社データセンター(DC)を運営し、クラウドサービスには早くから取り組んでいますが、これはあくまでもクラウドを活用したサービス部分が中心で、ただ単にITリソースを販売する趣旨とは違います。基盤系のクラウドは規模のメリットが幅を利かせますし、じゃあ当社が負けじとラック数を増やせば勝てるのかといえば、そうではありませんよね。
グローバルについても、情報サービス業大手SIerのように海外法人を世界各地につくる段階ではまだないとみています。
──御社はグローバルカンパニーである帝人グループですので、グループ連携も可能なのでは?
竹原 帝人向けのシステム開発は手がけていますが、海外市場におけるグローバル連携はまだこれからです。帝人グループも、海外でビジネスをさらに伸ばしていくために世界規模でシステムの見直しを進めており、当社も積極的な提案をしています。親会社に限らず、あらゆるSIで唯々諾々と顧客の指示通りのシステム開発の請負をしていては、滅びるのは明らか。さまざまな提案のなかから、次のチャンスをみつけていくことになります。足下のグループ連携では、例えば医療関連向けの素材と、当社の医療関連システムとの営業面での連携が有望です。
──ヒット商材となったERPの「GRANDIT」をはじめとする企業ユーザー向けビジネスはどうですか。
竹原 「GRANDIT」はコンソーシアム形式で開発しているERPで、当社グループ会社のインフォベックが実質的な運営を担っています。コンソーシアムに関わるビジネスパートナーは80社を超え、パートナー全体で累計で550社を超えるユーザーに納入してきました。基本的に大手ERPのSAPと競合するようなものではなく、SAPを利用している大手企業のグループ子会社や中堅・中小企業に幅広く活用していただくものですので、引き続きこの路線で事業を拡大していきます。
医療分野ではレントゲン画像管理やこれに関連するワークフローシステム、製薬企業向けMR(医薬情報担当者)活動支援などで多くの実績があり、標準化しやすい業務を中心に、なんとか海外で販売できないか検討しているところです。GRANDITも、ユーザー企業がアジア成長市場へ続々と進出している状況を踏まえれば、グローバル対応は必須となります。
グローバル展開では、スマートデバイスが重要なカギを握っています。かつてのパソコンやインターネットと同様に、ソフトウェアのグローバル展開を容易にするインパクトがあるということです。例えば、当社の女性向け写真加工アプリ「Lopicca(ロピカ)」は、日本よりも海外向けの配信数が多い。プリクラをイメージしてもらえればいいのですが、この手の日本のサブカルチャーは海外で根強い人気がある。
今後も引き続きネットビジネスとITサービスの二つを軸に、中期経営計画で掲げる「成長」と「進化」を成し遂げていきます。
・こだわりの鞄 「Calvin Klein(カルバン・クライン)」の鞄。「もともとトートバッグ的なデザインが好みで、それっぽい鞄を探したところ、これに落ち着いた」と話す。ただ、買う前には「デザインにこだわる妻に百貨店までいっしょに来てもらい、実物を前に同意を得てから購入した」そうである。
眼光紙背 ~取材を終えて~
竹原教博社長は、「成長分野で有利にビジネスを展開するのに、M&Aは不可欠」と、企業の買収に意欲を示す。ネット通販のイー・ビー・エスや、日本のネットビジネスの草創期から強い影響力のあるシックス・アパートのグループ化など、インフォコムはこれまでも、「自らにないものをもち、かつ他社にとられては困る会社」を念頭にM&Aを手がけてきた。
とりわけ、同社が重点分野に掲げるネットビジネスは、スマートデバイスの登場で今後大きな変化と成長が期待されるとともに、新しい技術やビジネスモデルを率先して取り込んでいくことが求められている。また、国産スマートデバイス向けアプリの海外展開で、ネットメディアに強いインフォバーンと協業する最初のきっかけとなったのは、「シックス・アパートの人脈によるところが大きかった」と竹原社長。ネット業界ならではの人脈も重要な資産となりそうだ。(寶)
プロフィール
竹原 教博
竹原 教博(たけはら のりひろ)
1957年、仙台市生まれ、千葉県育ち。85年、米カリフォルニア州立大学チコ校コンピュータ・サイエンス学部卒業。同年、日本電気セキュリティシステム(現NECソフト)入社。92年、日商岩井インフォコムシステムズ(現インフォコム)入社。03年、モバイル・インターネット本部副本部長。07年、ネットビジネス事業本部長。09年、取締役。12年4月1日、代表取締役社長CEOに就任。
会社紹介
インフォコムは旧インフォコムと旧帝人システムテクノロジーが2001年に合併して発足。昨年度(2012年3月期)連結売上高は前年度比5.5%増の364億円、営業利益は同11.8%増の34億円と過去最高を達成。今年度は売上高4.1%増の380億円、営業利益は3.0%減の33億円を見込む。2017年3月期までの中期経営計画では年商550億円を目指している。