中国有力SIerのハイソフト(海輝軟件)グループの世界市場での存在感が高まっている。大連や無錫、広州などに大規模なデリバリーセンターを開設し、日中欧米の世界主要市場での受注活動に力を入れる。ユーザー企業に対して、デリバリーセンターを活用したコストメリットや、グローバルITサポートのメリットを直接訴求することでプライム(元請け)案件の獲得を図る。また、金融・保険、製造分野に強いという特徴を生かして、日本でのビジネスも年率20%ほどの勢いで拡大している。中国本社の副総裁で、日本法人の代表取締役会長を務める李勁松氏に経営戦略を聞いた。
M&Aをテコにグローバル進出を加速
──海輝軟件グループは、売上高の約8割を中国以外でのビジネスで稼ぐなど、グローバル化を急ピッチで進めておられるようですが……。 李 中国・大連でSIerとして創業して間もない90年代後半は、売り上げの9割が日本関連のビジネスでした。当時、大連は日系企業のオフショアソフト開発の一大拠点として急成長していましたが、早い段階で対日オフショア開発の成長の限界を予測して……、いや、正直に申し上げれば、対日オフショアに強い会社がほかにも数多くありましたので、「下請け的な仕事ではなく、ユーザー企業と直接取引に挑戦しよう」と、大きく世界へと舵を切ったのです。
その後、北米を中心にM&A(企業の合併と買収)を積極的に展開するとともに、日本でも有力SIerのラックグループの保険業向けコンサルティングやシステム開発を手がける会社と2010年に合併するなどして、金融・保険領域の事業を強化しました。グローバルでの積極的な投資効果もあり、直近の連結売上高は前年度比約49%増の2億1800万ドル(約175億円)と伸び、私が担当する対日ビジネスだけをみても20%余り伸びています。
──全体に占める日本でのビジネスの構成比はどのくらいなのでしょうか。 李 欧米や、成長市場である中国での売り上げが急速に伸びていて、日本での売り上げの比率はここ数年、相対的に縮小する傾向にあります。直近では、グループの売上高全体に占める日本でのビジネスの構成比率は18.6%と、私が入社した時に比べて比率としてはずいぶん小さくなりました。日本ビジネスの責任を負う立場からいわせてもらえれば、実際は日本に進出してきている中欧米系企業のシステム開発や運用も担っていますから、もうちょっと日本のビジネスの構成比は大きい。ただ、会計上ではそのユーザー企業の本社がある地域でカウントしていますので、この数字は純粋に日系企業向けのビジネスということになります。
──思い切ったグローバル戦略が、今の成長につながったといえそうですね。 李 情報サービスビジネスがどんどん国境を越えていく現状にあって、いわゆるグローバルデリバリーモデルを確立しなければ、グローバル化を推進するユーザー企業にそっぽを向かれてしまいます。中国企業である当社の場合、デリバリーセンターは本国に置き、日欧米市場で注文を取りに行くスタイルが成り立ちます。実際、グループ社員約8500人のうち、中国国内で勤務するスタッフは約7500人で、残り1000人ほどで海外での営業やコンサルティングサービスに当たっている。
デリバリーセンターは大連や無錫、広州などに開設していて、日本の顧客からはシステム開発のコスト低減だけでなく、中国をはじめとするアジア地域や欧米でも、当社のITサポートを活用できる点を高く評価いただいています。
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