富士通グループで最も多くのSEを抱える富士通システムズ・イースト。東日本地域のSE会社4社が統合して今年4月1日に誕生した新会社だ。富士通グループのなかで、東日本エリアのソフト開発事業を統括するのが役目だが、新社長の石川享氏の視線は海外市場に向いている。「4社の強みを融合した日本発のソリューションを海外で売りたい」。その言葉の裏には、「今やらなければ、5年後に会社と社員が苦労する」という危機感がある。
SE会社の総本山として中核を担う
──石川社長は、富士通で自治体・公共機関向け事業を統括する立場を長く務め、1年ほど前からは、グローバル事業を兼務してこられました。富士通システムズ・イーストは、東日本地域が営業エリアで、民間企業向けビジネスが売り上げの約70%を占めます。これまでとは顧客ターゲットが異なり、いろいろと勝手が違うのではありませんか。 石川 確かに、私は日本の民間企業向け事業からしばらく遠ざかっています。ですから、就任直後から多くのお客さんのオフィスにお邪魔し、みなさんの生の声を聞いて、国内の民間企業向けビジネスの感覚を取り戻そうとしています。ただ、公共機関向け事業では全国の顧客を相手にしていましたから、東日本エリアのお客さんとパートナーの事情については、詳しいですよ。
それはそれとして、富士通システムズ・イーストの社長就任の話を聞いた時は、ドキドキしましたね(笑)。富士通システムズ・イーストは、東日本エリアの四つのSE会社が統合して今年4月1日に生まれたばかり。富士通グループのSE会社の総本山で、役割は非常に大きいですから。
──同じグループ企業とはいえ、生い立ちも文化も違う4社の合併。従業員数は約4500人で、富士通のグループ会社のなかで最多のSEが在籍しています。社内の意思統一を図るために、神経を遣うことも多いのではないかと思いますが…。 石川 スタッフには「これまでのみんなのやり方を尊重する。そのなかで、4社が一緒になったシナジー(相乗効果)を出していこう」と伝えています。働きやすい環境づくりには、かなり力を入れています。お客さんへの訪問と同じくらい、社内のスタッフと会話することを重要と捉えていて、可能な限り拠点を回っています。
──富士通グループは、NECや日立製作所、東芝などの他のコンピュータメーカーと比較して、国内にSE会社が多いですね。今回の統合は、どのような狙いがあるのですか。 石川 富士通には、汎用機のサポート業務も含めて、地域に根ざしたサービスを提供するために、一都道府県にSE会社を一社設置するという方針が過去にはありました。それで、各地域のSE会社がどんどん増えていったのです。そのおかげで、地域に密着したビジネスを展開することができたと思っています。
ただ、技術の進化が速くて、各SE会社がそれぞれで高い技術力を身につけて、それを維持するのが難しくなったのです。そこで、スキルを集約し、強みをより強く、弱みは補完するために、東日本地域の4社をまとめた富士通システムズ・イーストをつくったのです。それと同時に、西日本エリアでは6社のSE会社を統合して富士通システムズ・ウエストを設立しました。
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