東日本大震災とその後の電力供給問題は、情報通信やデータセンター(DC)が不可欠な社会インフラであることを改めて認識させた。震災に遭遇しながらも、日本のDCがほぼ正常にオペレーションを継続できたことは、日本のDCの強さと、エンジニアの能力の高さを世界に証明したともいえる。  BCNは、DCを取り巻く環境が大きく変化するなかで、昨年に引き続き、国内主要DC事業者のキーマンにお集まりいただき、座談会を開催した。モデレータに、日本と世界のDC事情に精通する日本データセンター協会(JDCC)理事の江崎浩東京大学大学院教授を迎え、「事業戦略」と「設備・インフラ」の2セッションで、それぞれの立場からDC事業の現状、その担う役割や重要性、さらにはBCP(事業継続計画)、電力料金問題などをキーワードに、活発な議論が展開された。

出席者(順不同)

【セッション1――事業戦略】
・IIJ 執行役員 サービスオペレーション本部長 データセンター業務運営統括 山井美和 氏
・IDCフロンティア ビジネス推進本部 カスタマーコミュニケーション部 部長 粟田和宏 氏
・エクイニクス・ジャパン 代表取締役 古田敬 氏
・KVH 営業本部 上席執行役員 日置健二 氏
・さくらインターネット 代表取締役社長 田中邦裕 氏
・関電システムソリューションズ ITサービス事業本部 ITサービス統括部 データセンター営業G 営業部長 福嶋利泰 氏
・ビットアイル マーケティング本部事業推進部 部長 高倉敏行 氏

【セッション2――設備・インフラ】
・IIJ サービスオペレーション本部 データセンターサービス部長 久保力 氏
・IDCフロンティア 事業企画本部 事業企画部 部長 山中敦 氏
・エクイニクス・ジャパン 営業本部 シニアコンサルタント 大槻顕人 氏
・関電システムソリューションズ ITサービス事業本部 ITサービス統括部 部長 河田謙一 氏
・KVH システム&テクノロジー本部 サービスストラテジー&デザイン部 データセンターグループ マネージャー 市川秀幸 氏
・ビットアイル総合研究所 所長 長谷川章博 氏

【モデレータ】
東京大学大学院教授/日本データセンター協会理事 江崎浩 氏


【セッション1――事業戦略】

●ユーザーニーズの多様化で単価の意味が変化

さくらインターネット
代表取締役社長
田中邦裕 氏
江崎 東日本大震災をきっかけに、BCP(事業継続計画)というキーワードとともに、DCの役割が改めて見直されました。事業の変化を含めて、この1年でどんな動きがありましたか。

田中 震災後に多くの企業でBCPの見直しが進み、地方のDCへの関心が高まりました。一方で、都市型DCへのニーズも根強いものがあります。現在、当社は東京以外へのシフトを進めており、比率でも過半数になりました。
 もう一つの動きとして、以前は主流だったハウジングの売上が3分の1程度になりました。また、この3年で大型案件が減り、小口のお客様が多くなったことから、成長率は鈍化しています。この結果や他社の状況をみると、都市型DCがハウジング中心に需要を引っ張る構図は変わっていません。今後の3~5年を考えると、都市型DC以外のビジネスをいかに構築していくか、これが当社の石狩DCに投げかけられた課題です。

高倉 当社の都市型DCのニーズは堅調です。そのニーズに対応するために品川区の施設を拡張し、文京区の施設も拡張する計画です。ユーザー層は、これまで中心だったベンチャー系から大口へとシフトしています。
 最近は、BCPの案件が検討段階から実行段階へと移り、大阪のDCへのニーズも増えています。BCPを考えたときには、万一の際にいち早く駆けつけたいというニーズもあるので、大阪のDCも中心地に設置しています。

ビットアイル
マーケティング本部
事業推進部 部長
高倉敏行 氏
日置 当社は東京と千葉が関東の拠点で、これまで東京をプライマリDC、千葉をセカンダリDCに位置づけてきましたが、震災以降は地盤が強固な千葉をプライマリDCとしてご利用、ご検討するユーザーが増えました。ユーザーの4割は外資と金融ですので、香港やシンガポールなど、ファイナンスのハブ都市にDCを展開していますが、事業としても国際化を進める流れが強くなっています。
 今年は韓国・釜山で地場の大手SIerと提携して、ファイナンス向けDCスペースの提供と日本の金融機関に向けてDR(災害復旧)サイトの販売を開始しましたが、思った以上に反響がありました。

古田 当社はDCを中核にユーザー企業同士がネットワークを相互接続して、生態系を形成するエコシステムを標榜しています。
 いま、さまざまな業種でネットワーク(キャリア)中心のエコシステムが確立してきています。IT業界では、DCを含めサービスの価格低下が進行していますが、当社では逆に単価が上昇する傾向にあります。このことは、当社の顧客拡大の状況とあわせて考えると、エコシステムが日本を含むグローバルな市場で評価されていると捉えています。

KVH
営業本部 上席執行役員
日置健二 氏
粟田 クラウド事業者のようなユーザーが増えているなかでは、ハードからサービスまでを包括的に提供するケースが少なくないので、ラックやネットワークの提供といったパーツ単価の意味が変わってきています。
 こうしたユーザーの増加は、DC全体の収益へのインパクトも大きいですね。都市型DCと地方型DCの比較では、ユーザーは地方が安いと考えがちですが、地方だからこそKVA(電源容量)を大きくできて、高密度・高集積ができるというメリットがある。当社が双方を軸にしているのは、このような多様なニーズに応えるためです。

福嶋 昨年3月の大震災を境に、東京のユーザーからの問い合わせが急増して、8~9割を占めるようになりました。これはやはりBCPの見直しが大きく影響したといえます。
 最近目立っているのは、「東京に置いているシステムを、万が一のときに本当に関西に切り替えられるのか」といった具体的な運用面の問い合わせです。それが可能なら、「コストをかけてでも関西にDRサイトを設置する」という案件もあります。

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