クラウド/データセンター(DC)事業を手がけるIDCフロンティア(中山一郎社長)は、パートナー販売の体制づくりに取り組んでいる。4月1日付で、販社支援の専任部隊を立ち上げたほか、システムインテグレータ(SIer)や独立系ソフトウェア開発事業者(ISV)と共同でサービスを開発・販売する「IDCフロンティア パートナープログラム」を開始した。これによって、企業の社内システムを構築する案件の獲得を狙う。現在、約100社のパートナーをもち、この先3か月で、「パートナー1社あたり案件一つ」(ビジネス推進本部の霜鳥宏和本部長)の獲得を掲げ、ビジネス化を進めていく。

ビジネス推進本部
霜鳥宏和本部長 ヤフーの100%子会社で、北九州市や福島県白河市など全国で大型のDCを運営するIDCフロンティアは、これまで直接販売をメインに事業を展開してきた。大手のオンラインゲーム事業者などに、サービスを運用するためのクラウド基盤やDCでのバックアップといった商材を提供することによって、ビジネスを拡大した。
しかし、直接販売だけでは限界がある。CRM(顧客管理システム)やSFA(営業支援システム)など、企業の社内システム構築―いわゆるプライベートクラウドの案件には、これまでリーチすることができないでいた。
同社は、600ラックまで拡張することができる白河DCを2012年10月に開設した。今春には、北九州DCで5号棟の稼働を開始する。これらのスペースを埋めて効率のよいDC運用を実現するために、ターゲット市場を企業の社内システムに広げることが欠かせない。パートナー体制を築き、販社を活用することによって、社内システムの案件獲得を目指す。
「IDCフロンティア パートナープログラム」では、自社のクラウド基盤やDCリソースをパートナーに提供し、パートナー商材のクラウド移行やDCとの連携を可能にする。IDCフロンティアとの提携によって、従来の商材で他社との差異化が難しいSIerやISVは、自社製品に価値をつけ、高度なソリューションを提案することができるようになるわけだ。
プログラムに参加するパートナーは、案件ごとに「リセール」と「取次」のいずれかの契約形態を選択することができる。さらに、IDCフロンティアの検証環境を無償で利用し、サービス検証を行うことができるほか、エンジニアの技術支援を受けることが可能になる。
霜鳥本部長は、「単にパートナーにクラウド基盤を提供する仕組みではない。DCとの連携も可能なので、システムのバックアップや運用コストの削減を提案に入れた展開ができるのが強み」とアピールする。
霜鳥本部長によれば、パートナープログラムへの反響が上々のようだ。中堅・中小規模のSIerやISVを中心に、現時点ですでに約100社をパートナーとして獲得している。今後は、彼らとの関係を強化し、共同サービス展開の事例をつくることが課題になる。
「販売のノルマは設定しない」。霜鳥本部長は、プログラムに参加するハードルを低くして、パートナーの数を増やすとともに、関係の強化に注力するという。
DC事業者は、大手に続き、中堅・中小規模の企業もプライベートクラウドの構築に取り組み始めていると捉え、市場開拓に必死だ。IDCフロンティアも、今回のパートナー販売の本格的な立ち上げによって、この市場を狙うプレーヤーに加わることになる。
霜鳥本部長はビジネスの目標について「これから先の3か月、パートナー1社あたり案件一つを獲得し、これら共同サービス展開の事例を踏まえて、100倍に増やしたい」と、ビジネスを迅速に拡大することに意気込みを示している。(ゼンフ ミシャ)