近年、オフショア開発の発注先として日系IT企業の注目を集めているベトナム。そのなかでもFPTソフトウェアは、同国最大手のソフトウェアアウトソーシング会社である。日本企業向けに特化したビジネスモデルを構築したことによって、1999年の設立からわずか十数年で従業員数が5000人を超えるまでに成長した。グエン・タン・ラム社長に、日本市場での戦略についてインタビューした。
十数年の間に従業員数は500倍
──御社の2012年度(12年12月期)の業績は、売上高が前年比31%増の8150万USドルと好調でした。これまでの年平均成長率(CAGR)や売り上げの構成比、グローバル比率を教えてください。 グエン 過去10年間でいえば、03~08年度は、売上高のCAGRが約80%で、リーマン・ショック後の09~11年度は約15%となっています。売上高の構成比では、ソフト開発などのアウトソーシング事業が約90%で、残りの10%がITサービスです。グローバル比率は、57%が日系企業で、アメリカが約20%、ヨーロッパが約10%、残りがその他地域となっています。
また、売上高だけでなく、従業員数も前年度比で30%程度増強しており、今年7月には5000人に到達しました。
──急速に成長してこられましたが、成功の秘訣を教えてください。 グエン 簡単にここまでたどり着いたわけではありません。現時点ではおよそ5000人の従業員を抱えていますが、99年に設立した当初は、たったの10人しかいませんでした。当社は、最初はアメリカをターゲットとしてアウトソーシング事業を展開しましたが、はじめのうちは海外でのビジネスのやり方がわからなくて、うまくいきませんでした。
成功のきっかけは、2000年に日本市場に向けて舵を切ったことです。日本では、当時からアウトソーシングが活発で、当社にとって魅力的な市場でした。欧米の企業だと、案件がプロジェクトごとに区切られていて、継続的におつき合いすることが難しかったのですが、日本では、単一の案件だけでなく、長期的におつき合いしていくというスタイルが一般的で、当社にとっても安定した収益が得られるばかりでなく、業務ノウハウを教えてもらえるなどのメリットがあったのです。
ただ、当時は社内に日本語を話せる技術者が一人もいなかったし、納期の要求が厳しくて、中国やインドのオフショア開発会社との競合が激しいなど、困難な局面もありました。そこで、日本語ができる技術者を積極的に育成して、日本式のソフト開発に対応していったことが成功への第一歩となりました。現在では、当社の約3000人の従業員が日本企業向けのプロジェクトに携わっていますが、そのうちの500人が日本語検定の2級以上を保持しています。
[次のページ]