2015年度に営業利益2000億円へ。富士通の山本正已社長が、2013年2月に発表した経営方針説明で掲げた中期目標である。過去最高の営業利益は2000年度の2440億円。それに迫る高いハードルだ。その実現に向けて、半導体を含む部品への投資をやめ、ICTのプラットフォームからソフトウェア、サービスに注力するという、ポートフォリオを見直す構造改革を進めてきた。ここまでの取り組みを「2013年は、ホップ、ステップ、ジャンプのホップの段階」と表現し、2015年度の目標に向けてベースはできたとする山本社長。2014年はステップの段階を迎える年となる。
2014年度のクラウド事業は売上高6000億円か
──2013年に進められた構造改革の成果が出てくるのは少し先の話だと思いますが、決算予測をみると、順調な滑り出しのようにもみえます。 山本 2013年は、富士通の成長戦略を着実に実行する1年目と定義してスタートしました。その意味では「新生富士通」「再生富士通」というキャッチフレーズを掲げて推進する段階です。2012年の暮れに安倍内閣が生まれたじゃないですか。まさに日本の再生が始まったわけですが、富士通の再生や成長もこれに同期しました。市場の成長にうまく乗ることができたと思っています。
ICTのサービスの市場は105%くらいの成長率だといわれていますが、富士通は110%くらい。ビジネスのポートフォリオをサービスへともっていくために、社内の人材を異動させたりしてきましたが、今のところはうまく機能しています。
──サービスは、具体的にはどのようなところに力を入れていきますか。 山本 例えばクラウドをはじめ、新しいコンピューティングを活用することで、運用コストを抑えながら、新しい領域にチャレンジしていただけるような仕組みをつくることに取り組んでいて、これを「モダナイゼーション」と呼んでいます。
ビッグデータも大きな話題の一つですが、そうした新しいテクノロジーを活用し、富士通のビジネス領域を広げていく取り組みをしています。この領域を「イノベーション領域」と呼んでいます。
それと、ICTが今まで使われていなかった分野がありますよね。農業とか、医療とか。そこをICTで活性化していくことを「ソーシャルイノベーション」と呼んでいます。こうした領域をきちんと定義して、適切な人員シフトをかけていく。それを2013年度に始めましたが、今後は加速させていきたい。
──ICTが使われてこなかったソーシャルイノベーション分野に、どのように切り込んでいくかという課題があると思いますが。 山本 新しい分野でも、共通のテーマが必ずあります。例えば、タブレット端末を使ったワークスタイルの変革は、どの分野にも適用できます。
ビッグデータもビジネスのやり方を変える可能性がありますが、そこでも共通する新しいサービスをつくって各領域に横展開していくことを進めています。
──クラウドビジネスの進捗についてはいかがですか。 山本 クラウドは、テクノロジーとサービスを分けて考えなければいけない。テクノロジーについては徹底的に磨いて、例えばデータセンターで具現化しています。それは順次進化させていきますが、そのうえでどのようなサービスを提供していくかが重要になります。少なくとも、富士通が提供するソフトウェアは、すべてクラウド対応にするべきだと考えています。
おかげさまで、クラウド関連の売り上げは倍くらいに伸びています。2012年度は約1500億円でしたが、2013年度は倍の3000億円を目指します。
──では、2014年度は6000億円ですね。ここまでの成長は構想の通りですか。 山本 正確にいえば、“国内は”というただし書きがつきます。クラウドのサービスというのは、グローバルにどんどん広がっていくべきものです。しかし、“グローバルに”というところが難しい。2014年以降の課題ですね。
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