2013年10月10日、10年間にわたってインテルのトップを務めていた吉田和正氏が退任し、江田麻季子氏が社長に就任した。江田氏は吉田氏の部下として、アジアでのビジネス経験が豊富。日本法人として初の女性社長であることでも注目を集める。インテルは、今後、どのような方向に進んでいくのか。社長就任からおよそ6か月が経過し、「総合力にすぐれた日本の技術をアジアに広める」と力を込める江田氏に展望を聞いた。
“アジアとの架け橋”として価値を加える
──社長就任会見の際、江田社長は「自分なりのインテルをつくっていく」と話しておられました。前社長の吉田さんは10年という長い間、トップに就いておられたわけですが、そのようななかで“江田色”をどのように出していかれますか。 江田 私は、吉田の部下として長く働いていましたので、吉田がどのような意識で今のインテルをつくってきたのかを理解しています。吉田は10年かけて、国内のさまざまなメーカーやSIerなどとのパートナーシップに力を入れてきました。このパートナーシップは継続して深めていくつもりですが、これに“アジアとの架け橋”としてビジネスを手がけるという価値を加えています。
実は、私自身、インテルに入社して14年目を迎えています。いつの間にか長く籍を置いていたわけですが(笑)、長く働いているからこそ、当社がどのような方向に進むべきなのかということを把握しています。しかも、アジアパシフィックでの仕事が長かったので、アジアのなかで日本が何をしなければならないのかを実感しています。今、アジアは外せない地域です。パートナーもアジアでのビジネスを拡大しようとしていることから、当社もアジアを見据えなければならない。そこで、まずは当社の社員とアジア拠点のスタッフが交流する場を設けて、情報を共有するネットワークの構築に力を入れています。
──人と人とがつながるネットワークを構築する環境づくりとして、実際に取り組んだことは? 江田 今年3月12日、つくば本社に「コラボレーション・センター」を設置しました。このセンターでは、将来のコンピューティングの利用モデルやコンセプトを積極的に発信していくことを目的に、車載や医療をはじめ、次世代UI技術「RealSense」を使った目・耳・音声・タッチによるセンサ、自然な目の動きを用いた視線入力システムなど、さまざまなデモンストレーションを行っています。
さらに、日本とアジアの企業によるコラボレーションの環境も整備して、日本とアジアの技術者が膝を突き合わせて新しいテクノロジーをディスカッションする場も提供しています。
──外資系の日本法人は日本国内でのビジネス拡大を重視するイメージがあるのでうかがいますが、日本法人でありながらアジアでのビジネスを拡大していくという意識は社員の間にも強くあるのですか。 江田 最初はとまどった社員もいましたが、アジアを見据えることが当社の成長につながることを理解させたので、今は問題ありません。
──となると、1年以内には日本法人によるアジアでのビジネス展開や戦略的なアライアンスの発表があるということですね。 江田 さあ、どうでしょうね(笑)。今は、お話しできませんが、楽しみにしていてください。
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