2014年度から16年度までの3年間を対象とする新中期経営計画をスタートした2014年。14年度上半期は前期比増収増益で、滑り出しは好調だ。IBMがx86サーバー事業を売却し、NECはスマートフォンから撤退、PC事業もレノボと統合するなど、ハードウェアを巡る総合ICTベンダーの戦略は、高収益事業へシフトする傾向が顕著だ。しかし、富士通はハードビジネスの不安定な要素を丸抱えしながらも、成長への道筋を整えつつある。16年度には、2500億円という過去最高の営業利益を目指すと、意欲的な目標を掲げた山本正已社長。他の総合ICTベンダーとは一線を画す戦略で、2015年はさらなる飛躍を期す。
新中計のスタートダッシュに成功
──新中期経営計画のスタートの年となった2014年ですが、どう自己評価しますか。 山本 12年度、13年度の構造改革を踏まえ、14年は、新中計実現のスタートダッシュを切る再飛躍の年と定義しました。結果として、種まきはほぼ予定通りにできて、刈り取りも一部始めることができました。14年度上期の業績をみても、増収増益ですから、富士通の新たな成長を確実なものにできるという手応えはあります。
──Windows XP特需や消費税改正など、ICT業界にとっては浮き沈みの激しい年でしたよね。 山本 経済指標はよくなかったですが、ICT投資は堅調だと感じます。日本企業もグローバル市場で戦わなければならない状況ですので、ビジネスを差異化して、新しい価値を生み出すためにどうICTを活用するかを考えるようになっています。こうした「攻めのICT投資」は着実に増えていくでしょうし、その傾向はすでに現れています。
──御社は海外市場への注力も目立ちます。13年度の海外売上比率は36%ですが、16年度には39%まで高める計画ですね。 山本 欧州、米国は一時の落ち込みを脱しつつあり、とくに米国は上向きです。14年度上期の売り上げは海外市場がかなり引っ張っています。
新中計の三本柱の一つにグローバルビジネスをしっかり拡大していくという方針を掲げましたが、2014年3月には、その準備として、海外ビジネスのセールス、デリバリ体制を改めました。オセアニア、アジア、米州、EMEIA(欧州、中東、インド、アフリカ)、そして日本という五つのフラットな社長直轄のリージョン体制に再編したんです。事業軸で横串を通してグローバルビジネスができるようになり、その成果が現れ始めています。

‘富士通はあくまでもサービスプロバイダなんですよ。そこに差異化できるポイントがあると思っています。’ ──クラウドビジネスの状況はいかがですか。 山本 売上高2500億円という14年度の目標には届きそうです。16年度には3500億円を達成したいですね。また、そのうち3割は海外での売り上げにしたいと考えています。クラウドは、国内偏重傾向が強いのが課題です。
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