インド最有力SIerグループの日本タタ・コンサルタンシー・サービシズ(日本TCS)は、日本のユーザー企業との関係強化を進めるとともに、日本の少子高齢化や産業構造の変化を機敏に捉えることでビジネスを伸ばしていく。旧TCS日本法人と旧アイ・ティ・フロンティア(旧ITF)の合併から半年余り、新生日本TCSは旧ITFが長年にわたって培ってきた優良顧客との関係をより深めていくことで、日本市場に深く根ざしたビジネスを展開する。一方で、TCSグループの強みであるグローバルでの知見を国内でも生かしていくことで競争力を一段と高める。アムル・ラクシュミナラヤナン社長に話を聞いた。
M&Aで国内主要SIerへと台頭
──おさらいを兼ねて、まずはインドのタタ・コンサルタンシー・サービシズ(TCS)とはどんな会社なのか教えてください。 ラクシュミナラヤナン(以下、ラクシュミ) ええ、いいですよ。大手SIerがひしめく日本では、これまで存在感を十分に出せていたわけではないですからね。ただ、グローバルでみれば、当社グループの従業員数は約31万8000人、昨年度(14年3月期)の連結売上高はドル換算で前年度比16.2%増の134億ドル(約1兆6000億円)。日本を含む世界44か国・地域に進出している名実ともにグローバル規模の大手ITベンダーです。タタという名前を冠している通り、インド最大の工業コングロマリット(複合企業)のタタグループに属しています。
──国内SIer最大手のNTTデータの年商が1兆3437億円(14年3月期)ですので、売り上げでは同規模という感覚ですね。 ラクシュミ それぞれの生い立ちが違いますので単純な比較はできませんが、TCSグループの最大の強みは当社独自に構築してきたグローバル・ネットワーク・デリバリ・モデルにあります。海外進出先で個別にソフトを開発するのではなく、受注した案件を最もコストパフォーマンスがいい場所でつくり、世界中に届けるネットワークを指しています。
このデリバリ・モデルを駆使することで、コスト競争力や集中的な品質管理で優位性を存分に発揮でき、これを原動力として当社は世界トップクラスのSIerとしての地歩を固めてきたのです。営業エリアの広さもさることながら、顧客層も世界の大手金融機関や航空運輸、食品製造、社会インフラ、ハイテクなどさまざまな業種・業態に広がっています。
──日本でのビジネスで大きな転機となったのは、昨年7月の三菱商事系SIerのアイ・ティ・フロンティアの買収ですね。 ラクシュミ そうです。旧TCS日本法人と旧アイ・ティ・フロンティア(旧ITF)が合併によって年商600億円を超えるSIerとなりました。私も新生日本TCSの発足のタイミングで社長に就いています。
──前任社長に当たる旧TCS日本法人社長のカマラ・カンナン氏に昨年3月にインタビューしたときは、早いタイミングで「社員を1000人にまで増員し、売上高500億円を目標に掲げている」と話しておられましたが、当面の目標はM&A(企業の合併と買収)によってクリアしたと。 ラクシュミ 年商は先述の通り、社員数は約2300人規模になりましたので、目標をクリアしていますね。私としては、前任社長から引き継いだ成長の勢いを鈍らせることなく、日本でのビジネスを引き続き拡大していく考えです。
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