「LanScope Cat」のヒットで、日本屈指のソフトメーカーになったエムオーテックス(MOTEX)は、創業以来、独立系の立場を守ってきたが、2012年11月に突然、京セラコミュニケーションシステム(KCCS)の子会社になった。それに伴い、KCCSから派遣されたのが河之口達也氏だ。カリスマ性のある創業者の強力なリーダーシップの下で急成長したMOTEXを、どう進化させていくのか。河之口氏の肝いりでスタートするビッグプロジェクト「米国進出」が、創業25周年という節目の年に、いよいよ動き出す。
「リードされる」から「リードする」へ社員の意識を変える
──強力なリーダーシップを発揮した創業者がつくったMOTEXと、河之口社長がキャリアを積んできた京セラグループでは、企業文化が大きく異なるはず。最初はその違いに戸惑ったのではありませんか。 河之口 MOTEXの第一印象は、社員が厳しく育てられてきたんだな、ということ。みんな、鍛えられてきている。製品に対する愛情が深くて仕事に対して真剣です。スタッフの平均年齢は約30歳と若いんですが、優秀な人材が揃っている。その意味で、これまでMOTEXを成長させ、支えてきた先輩方にとても感謝しています。
──違和感なく経営に参画することができた、と? 河之口 創業者のリーダーシップの下で成長してきた会社だけに、社員がリードされることに慣れている感じはあったかな、と。私はこの2年ちょっとの間に、リードされるのではなく、リードするスタイルをみんなに身につけてほしいと思って、京セラの精神も含めていろいろと教えているところです。創業者の下で育ってきた優秀な社員には、どんどんMOTEXの経営に参画してきてほしい。こんなことを言うと、親会社のKCCSから何か苦情がくるかもしれませんが、次の社長にはMOTEXのプロパー社員に就いてほしいと思っています。
──正直にいえば、KCCSの傘下に入ったことによる変化・進化が、外からみているとMOTEXに感じられないな、と思っていたんです。河之口さんが社長に就任されてからおよそ2年半、この期間を振り返ってみれば、KCCSの子会社になったことがMOTEXにどんなメリットをもたらしたのでしょう。 河之口 開発を中心に、人的な支援を受けたことが大きいですね。
──販売面では? 河之口 MOTEXには、KCCSの子会社になる前から、親密で強力な関係を築いているパートナーがたくさんいます。ですから、KCCSの子会社になったことで、変えたことはありません。変化が必ずしも必要とは考えていません。
おかげさまで、私が社長に就任した後も、業績は前年度を上回っています。「LanScope Cat」のお客様の保守契約の更新率は11年連続で90%以上を維持していて、昨年度は92.0%。LanScope Catの価値を伝え切れていない部分があって、それは課題として重く受けとめ、LanScope Catのよさをわかりやすく説明する活動をしっかりとやらなければなりませんが、順調に進んでいます。
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