スモールビジネス向けの業務ソフト市場が急成長している。新たな潮流を導いたのは、クラウドネイティブな新興ベンダーだ。トップベンダーの1社に駆け上がったマネーフォワードは、クラウド会計ソフトのリリースからわずか1年で、12万社を超えるユーザーを獲得した。さらに、昨年末、新たに15億円の資金調達を行い、総額約22億円の資本金を確保。事業拡大のプロセスはまだまだ序盤と言わんばかりだ。この成長は、どこまで続くのか。辻庸介・代表取締役CEOが描く青写真は、既存の業務ソフト市場の枠を超えて広がる。
中小企業での導入が多くて驚いた
──昨年1月に法人向けクラウド会計ソフト「MFクラウド会計」(当初のサービス名はマネーフォワード For BUSINESS)をリリースされて、1年で12万社のユーザーを獲得されました。この伸びを、ご自身ではどう評価されますか。 辻 クラウド会計では、freeeが先行していて、1年遅れでMFクラウドが世に出たかたちですが、最初の1年の伸びは僕らのほうが大きいと思います。順調に伸びているといっていいでしょう。
──やはり、freeeと比較されることが多いと思いますが、意識はされますか。 辻 意識していないわけではないですけど、freeeは個人事業主向けがメインという印象で、設計の思想が少し違うかなと感じます。ただ、クラウド会計の市場がここまで盛り上がったのは、freeeとマネーフォワードがいたからというのも事実です。1社だけではここまでの市場にならなかったと思うので、戦友ではありますね。
驚いているのは、MFクラウドが、中小企業、つまり、ある程度しっかり経理をやるユーザー層に浸透していることです。もちろん、取引入力や仕訳、帳簿作成を自動化するという基本的なコンセプトはfreeeと通じるものがあるし、複式簿記の知識がなくても使えるのですが、一方で、経理の専門家でも使い込めるしっかりとした製品であることがMFクラウドの特徴です。会計士などもスタッフに加わり、そうしたユーザーを意識した機能向上にはとくに力を入れています。
そういう意味では、むしろ弥生を意識していますね。弥生は素晴らしいソフトだと思います。
──ソースネクストと提携され、MFクラウド会計・確定申告を家電量販店でも展開し始めました。ここはまさに弥生と真っ向からぶつかる戦場です。 辻 量販店の店頭にディスプレイされている商品は、これまで確かに弥生が多かったですが、MFクラウドに置き換わっているケースもかなり出てきていて、びっくりしています。予想以上に量販店チャネルでの売り上げは好調です。
──家電量販店以外のチャネルの状況は? 辻 現在の当社のチャネルは、量販店のほか、ウェブ、会計/税理士事務所、あとは業務提携しているソリューションパートナーの計四つですが、どのチャネルがとくに強いということはありません。業務提携パートナーはまだ数がそれほど多くないということはありますが、どれも順調に成長しています。とくに、会計/税理士事務所のパートナーについては、2月に大阪支店を開設して、関西の会計/税理士事務所もサポートしやすい体制を整えましたので、西日本でのユーザー拡大は加速すると期待しています。
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