「モノ売りからコト売りへ」というコンセプトの下、複写機単体を売るビジネスから、ソリューション・サービス販売へのシフトを進めてきた富士ゼロックス。昨年末には、持株会社である富士フイルムホールディングスが2016年度までの新中期経営計画を発表し、この動きをさらに加速させる構えだ。就任以来、事業構造の転換をリードしてきた山本忠人社長に、これまでの改革の成果と、これからの同社の成長ビジョンをうかがった。
大事な節目の年、目標はクリア
──2014年度末までに、ソリューション・サービスの売上比率30%、海外売上比率50%などを達成するという目標を掲げておられました(インタビューは3月23日)。率直なところの手応えをお聞かせください。 山本 5年間かけて、「モノ売りからコト売り」へ、事業構造の転換を大胆に進めてきましたが、2014年度は、それが業績にどれだけ貢献するかが問われる、非常に大事な節目の年でした。目標そのものは、何とかクリアできるところまで来たと思っています。ソリューション・サービス事業の売上比率は、34~35%まできています。
また、当社はこれまで、どちらかというと日本の国内需要が潤沢で、しかもハイエンド・マーケットというか、大手のいいお客様に恵まれていました。それはそれでこれからも大事にしていかなければなりませんが、少し外に目をやると、近傍には中国やASEANなどの新興市場もある。こうした新しい市場に当社製品を浸透させることにも注力してきました。これが、海外売上比率の目標達成にもつながっています。
国内でも、複写機を中心としたハードウェアだけでなく、クラウドという新しいキーワードで、IT商材もラインアップするようになりました。中小企業のお客様を多方面からご支援し、地域経済の活性化に貢献することも、当社の大事なミッションになってきています。こうした新しい市場へのアプローチも、成果となって現れてきています。
──ソリューション・サービスへのシフトや、箱売りからの脱却のような考え方は、プリンタ、複写機の競合ベンダーも打ち出していますし、もはやIT業界のバズワードのようになっています。 山本 そう、だからこそさらにその動きを加速させなければならないのです。持ち株会社の富士フイルムホールディングスが、昨年11月、2016年度末までの新しい中期経営計画を発表しました。事業会社である当社としては、ソリューション・サービス事業の売上比率をこれからの実質2年間で、50%までもっていきます。また、海外売上比率、これは日本、中国、アジア太平洋地域以外で当社製品・サービスを販売する米ゼロックス社への出荷分も含みますが、この5年間と同じくらいの成長を向こう2年で達成し、16年度末までに6割に引き上げたいと考えています。
──なかなか意欲的な目標ですね。達成が容易ではないように思えます。 山本 この5年間で成果は得られましたが、今のままの変革のスピードではダメなんですよ。感覚的には、スピード倍増くらいの意識でやらないと、さらなる成長はままならないと思っています。
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