「Hatohol」を世界に広める
──サーバー領域では、どのような取り組みを。 OSSの活性化にもつながる取り組みとして、統合運用ソフトウェア「Hatohol」が決め手になると考えています。この統合運用ソフトウェアは、システム監視やジョブ管理、インシデント管理、ログ管理など、さまざまな運用管理ツールのハブとなって、複数のZabbixとNagiosなどで監視を行っている際、それらの蓄積する監視情報を集約して表示する機能をもっています。Hatoholによって、監視規模・拠点の拡大、ハイブリッドクラウド環境の監視などの要望に応えることができます。今年に入ってからは、Hatoholとほかのシステムとの相互接続性を向上するインターフェース「HAPI(Hatohol Arm Plugin Interface)」の開発にも着手しました。
Hatoholは、コミュニティで公開されており、参加する開発者を広く募って機能を高めています。現段階では、ZabbixやNagiosなどとの連携を意識したユーザーインターフェースとなっていますが、今後はクラウドの統合を意識した設計も視野に入れています。コミュニティの参加者を対象に、勉強会やワークショップなどで形のあるものにしていき、Hatoholを世界で通用する統合運用ソフトウェアに育てていきます。
──これらの取り組みによって、競合他社に勝てますか。 野球でたとえるなら、ストレートで勝負というよりは、変化球で勝負というところですかね。競合さんは大規模な会社ですから、真っ向勝負をしたところで勝ち目がない。ただし、競合のように大きいから逆にできないことがあって、当社にはできることがある。
当社のエンジニアは日本にいますので、密にコミュニケーションを図ることができ、しかもカスタマイズ性にも優れている。だからこそ、組み込み領域で、さまざまなお客様を獲得したり、さまざまなベンダーとアライアンスが組めたりするのです。日本品質も評価されています。今後は、このような当社の強みをさらにアピールしていきたい。
──数値的な目標を教えてください。 昨年は、売上成長率が10%程度、利益が10%を超える水準でした。今年は、前年比12%増の売上高、10%増の利益を目指します。

‘Hatoholによって、監視規模・拠点の拡大、ハイブリッドクラウド環境の監視などの要望に応えることができます。Hatoholを世界で通用する統合運用ソフトウェアに育てていきます。’<“KEY PERSON”の愛用品>社員からのプレゼント 会議や打ち合わせの際、いつも4色ボールペンを使っていた。「色を分けてメモの意味を分類していたから」で、そのことは社内で周知のこと。そこで、スタッフ全員で社長就任の際に、PILOTの多機能ペンをプレゼントした。
眼光紙背 ~取材を終えて~
社長に就任する前は、副社長として児玉前社長の“右腕”となり、新たな領域でのアライアンスを積極的に進めてきた。これは、「上司がいるという安心感があったから。いろいろなことが思い切ってできた」という。今年4月からは、会社のトップとして、自身が一番の上司になる。児玉氏が取り組んできたように、「社員が会社の成長のために、自分の力を最大限に発揮できる環境を、さらに整えていく」という。
柔らかな口調だが、胸に熱い想いを秘めている。「うちは技術力なら、どこにも負けない」など、エンジニア気質の頑固でこだわりのある言葉が端々に出てくる。加えて、「あくまでも『技術の会社』として、今後も業界にアピールしていく」という。販売は、パートナーに任せるというわけだ。販売パートナーとともにビジネス拡大に力を注ぐ。(郁)
プロフィール
伊東 達雄
伊東 達雄(いとう たつお)
1970年4月19日生まれ。大阪府出身。95年3月、大阪大学基礎工学部情報工学科修士課程修了。同年4月、NECに入社、コンピュータ・ソフトウェア事業本部で業務に従事。00年7月、ミラクル・リナックスに出向。01年3月にミラクル・リナックスに転籍し、コアテクノロジー部長やコアテクノロジー本部副本部長、Advanced Technology本部長、取締役執行役員技術本部長などを歴任し、10年6月、取締役副社長執行役員に就任。15年4月、代表取締役社長に就任。現在に至る。
会社紹介
NECと日本オラクルが主体となって2000年6月1日に設立。国産Linuxベンダーとして、Linux OSなどサーバー領域で外資系メーカーに負けない技術力をもち、ユーザー企業を確保している。とくに組み込み系の開発では、ニーズに柔軟に対応することが評価され、大企業から多くの案件を獲得している。最近は、組み込み系で「IoT」「IVI」などをテーマとした開発に力を注いでいることに加え、サーバー領域で独自の統合運用ソフトウェア「Hatohol」を生かした取り組みを進めている。