富士通ビー・エス・シーは、富士通の100%子会社とは一線を画す独自の取り組みがとくに目立つベンダーだ。主力事業のシステムインテグレーション(SI)こそ、富士通案件が7割を占めるが、組み込みソフト分野でも強みを発揮し、長年安定した業績を保っている。しかし、小島基社長は、この「安定」に満足していない。殻を破り、さらなる成長を遂げるための戦略をいよいよ実行に移そうとしている。
SIの幅を広げ、他事業とのシナジーも出す
──まずは、小島社長が就任されてから2年間の自己評価をお聞かせください。業績は、よくいえば安定しているわけですが、十数年にわたって、長期間ほぼ横ばいの状態が続いています。 IT市場全体でみれば、決して事業環境は悪くないだけに、当社が置かれている状況を考えると、まだまだやり残していることがあるというのが正直なところです。
──やり残していることとは何でしょうか。 まずは、主力事業であるシステムインテグレーション(SI)の変革です。わたしたちが得意なのは、基本設計や詳細設計など、上流工程が終わるところあたりから仕上げて、テストする直前くらいまでの範囲です。しかし、もはやお客様がフォーカスしているのは、「システムによって自分たちの事業をどう変えていけるか」というもっと上流のところと、当社の得意領域よりさらに下流の「今あるシステムをどうしてくれるのか」というところなんです。もう少し幅を広げて、プロジェクトマネジメントやコンサル、さらには運用、アウトソーシングなどにも力を入れないと、大きくはなれないということです。
──すると、SIの幅を広げて、上流から下流まで手がけるという方向に舵を切っていくということでしょうか。 重視する取り組みの一つというのが正確な言い方ですね。SIの幅を広げてLCM(ライフサイクルマネジメント)全般をカバーできるような人材をつくっていかないといけないのは確かなんですが、実はそれだけでは当社の特色が出づらいと考えています。
──確かに、富士通グループに限っても、LCMを事業の核にしたいという企業は多いですよね。 当社はSIのほかに、「エンベデッド(組み込み)」と、運用サービスやBPO、クラウドなどの「サービス」という二つの事業の柱があります。売り上げ構成比率は、いずれも15%ほどですが、これらとSIを組み合わせて、お客様に新しい価値を提供することが重要になると思います。
例えばこれからどんどん広がっていくであろうIoTの世界は、ハードがなければ成立しませんから、組み込みソフトの重要度は依然として高いですし、取得したデータをお客様のビジネスに活用できるシステムをつくるには、SIのノウハウが必要です。両方のノウハウがある当社が、まさに独自の強みを発揮できる事業だと自負しています。また、小規模ですが、自力でクラウドビジネスができるようにデータセンター(DC)なども整備していますし、こうした資産を生かしたサービスとSIの組み合わせで独自のソリューションを打ち出し、成長につなげていくこともできるという気がしています。
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