ここ数年、PC事業の切り離しやスマートフォンからの撤退、売上高3兆円割れといった厳しい話題が続いたNEC。遠藤信博社長は、2010年4月の就任以降難しい判断を迫られる場面の連続だったが、社会インフラ領域への注力を経営方針として打ち出して約3年、ようやく目指す方向が会社の隅々にまで浸透したと実感しているという。そして、ここへ来て訪れたAIブーム。「非常によい追い風が吹いている」と遠藤社長は語る。
痛みを越えて方向性が明確に
──2016年3月までの3か年中期経営計画が仕上げの時期を迎えました。計画には「社会ソリューションへの注力」、そして「グローバル成長基盤の確立」といった大きな柱がありましたが、どの程度達成できたとお考えですか。 方針づくりという意味では、達成できたと考えています。NECが社会インフラを中心にものを考え、人間社会に貢献していくという意識が浸透して、将来的にもこの分野を核にしていこうというかたちが、ようやくできあがってきた。私が就任した当時は、NECはどの領域で人間社会に貢献できるのか、迷っていた時期だったと思います。厳しい判断だったけれども、半導体、PC、スマートフォンの各事業を1年おきに外していきました。ここまで方針を明確化することで、みんな「ああ、こういう方向性で行くんだな」とわかるようになるんですね。そこに至るには時間もかかるし、痛みも相当感じないといけない。ただ、事業の幅や売り上げが減っても、貢献できる領域をしっかりもっていることのほうがよほど大事です。会社というのは、「自負」「自信」をもって顧客満足に対する責任を果たしていくもの。そこに向かって、みんなのベクトルが合わさっていくということが重要なんです。ベクトルが散漫になると決してよいことはない。
──海外事業拡大については、進捗はいかがでしょうか。 海外売上比率は、2015年度上半期で22.8%と徐々に拡大していますが、私自身としてはもっと大きくしたかったし、利益率ももう少しよくしたかったという思いもあります。従来、海外では「パソリンク」のようなネットワーク事業が中心だったので、NECがIT事業をやっているということが理解されていなかったんです。それがここ3年間くらいでかなり変わってきていて、顔認証も海外のいろいろなところで導入いただくようになってきた。「セーフティ・セキュリティのNEC」という認知度はかなり上がってきているので、これからより積極的に提案もできると考えています。
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