アルプス システム インテグレーション(ALSI)は、新たなビジネス領域として、今年度からIoTソリューション事業に取り組む。製造流通、セキュリティ、ファームウェアの既存3事業の融和を図りながら、それぞれの強みを生かして顧客や社会へALSIの新たな価値を提供していく考えだ。今年6月に就任した永倉仁哉社長に、今後の戦略について話を聞いた。
既存3事業を融和する「IoT」
──社長に就任されてから、3か月が経ちました。現在の心境はいかがですか。 就任から3か月、お客様やパートナー様など、社外の方々にご挨拶する度に、ALSIに対する期待の大きさを肌で感じています。改めて身が引き締まる思いです。
──麻地徳男前社長は約10年もの長きにわたって社長を務められました。永倉社長としては今後、どのような方針を打ち出していきますか。 当社はこれまで、「製造流通ソリューション」「セキュリティソリューション」「ファームウェアソリューション」の3事業を展開してきました。基本的にはこれまでの路線を変えることなく、安定的に成長させていくというのがベースです。
ただし、今年度からは新たに「IoTソリューション」事業にトライしていきます。親会社のアルプス電気のセンサ、ファームウェア事業のセンサコントロール技術、製造流通事業のクラウド活用技術を融合し、さらにセキュリティ事業の知見で全体を安全にしていくというようなかたちでシナリオが描けることから、非常に手応えを感じています。新事業は青年のような想いで、チャレンジ精神を前面に推し進めていきたいと思っています。
──IoTソリューション事業の構想自体は、いつ頃から練られていたのでしょうか。 昨年度末頃からです。今年度からスタートした3年間の中期計画の策定にあたり、既存の3事業を融和するような新たな事業がほしいという思いがありました。3事業は性格が違い過ぎて関係性が薄く、会社が3つに分かれるようなイメージとなってしまっていたからです。そこで、世の中の動きをみると、IoTやビッグデータかホットになっている。先ほどお話ししたように、ALSIの3事業の強みを全部足すとできそうなのがIoTだということになり、構想を練り始めました。
もともと、アルプス電気がセンサをもっていることから、「センサからあがるデータをクラウドで拾えないか」というような話が案件ベースではきていたんです。そうしたことも踏まえ、ALSIがIoTの分野で貢献できることがあるのではないかと判断し、今期から正式にやろうということになりました。
今年、来年はIoTにチャレンジ
──今でこそ、IoTに取り組み始めている企業はたくさんあります。このタイミングでの参入は、後発ということになりませんか。 当社としては遅れていると感じていません。むしろタイムリーだと思っています。ハードをもっているところや、IoTで提供できる価値がはっきりしているところが声を上げているのだと思いますが、今は実証実験の段階にあるものがほとんどで、商売になっているところはまだ少ないとみています。
IoTはすべてのものをインターネットにつなごうということですから、裾野が広く大手が独占できるようなビジネスではありません。当社はもともと製造業の子会社ですし、現場の声を聞き、これまでの製造・流通業界での経験を生かしていけば、十分勝負していくことができるでしょう。
──御社にも間違いなくビジネスチャンスがあるというわけですね。どのような計画でIoT事業を進めていきますか。 今年、来年は研究、チャレンジをして行く段階だと考えています。引き合いはさまざまきていますので、今はまずいろいろなことをやっていこうと思っています。そのなかで、自分たちの事業にフィットしそうな領域をみつけていきたいですね。
──IoTに取り組むにあたって、新たに開拓したい協業先などはありますか。 IoTを語るうえでは、必ずといっていいほどAIという言葉が出てきます。デバイスから上がってくる大量のデータを収集、分析、制御するなかで、収集・制御することは得意ですが、分析の部分だけは当社では手が出せない領域です。分析の役割を担うのはAI。ここについては、パートナー様のご協力をいただくことになると思います。

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