「働き方改革」がキーワード
──プログラムの刷新は、日本ではVDIの売上比率が高いからですか。
その通りです。米国ですとVDI関連とネットワーク関連の製品で売上比率が、60%対40%であるのに対して、日本は80%対20%です。別の言い方をすれば、ネットワーク関連製品に伸びしろがあるということです。しかも、働き方改革という点ではVDI関連は確実に伸びる。日本では、働き方改革で重視しているのは「何時間働いていたか」を管理するという、人事制度や勤怠管理の改革がメインといえますが、本当の働き方改革というのは、いかに時間を効率的に使って生産性を上げるかということです。当社の製品を導入して、社員がどこにいても管理できることを提案しながら、成長に導けるということを訴えていきます。
──製品を総合的に提供するため、組織の再編なども行うのですか。
今は、金融系、製造系、官公庁系と業種別にユーザー企業を獲得するための組織があって、これとは別にネットワーク関連とパートナー関連のビジネスに特化した専門部隊があります。いわば、業種別の“縦”と、製品やパートナー支援に特化した“横”の体制を敷いていますので、これを変えなくても、十分に成長できると捉えています。
──「踊り場を迎えている」ということですが、現在、かなり厳しいということですか。
いや。実は、売り上げは地味に伸びているんです(笑)。なぜ「踊り場を迎えている」という表現を使ったかというと、パートナー企業から「もっとこうやれば伸びるのに……」との声をいただいているからなんです。つまり、もっと伸びる要素があるのにもかかわらず、当社のスタッフが「今のままで大丈夫」と意識している。堅実ではあるのですが、もう一歩を踏み出さない。働き方改革で当社が一気に成長する流れがあるので、社員を奮起するためにも「踊り場を迎えている」という表現を使っているんです。
クラウドビジネスの拡大も
──今までの話は、「オンプレミス」がメインでした。今に始まったことではありませんが、クラウドサービスの導入があたりまえになりつつあるなかで、ビジネス拡大に向けて強化することはありますか。
当社はクラウドとオンプレミスの両方を統合して管理できる「Citrix Cloud」を提供しています。オンプレミスを残しておきながら、クラウドも導入したいというハイブリッドのニーズが多いので、日本でCitrix Cloudを発表してから3か月以上が経過した今、ユーザー企業からの問い合わせが多いのは確かです。また、すでに取り組んでいるのは、マイクロソフトとのパートナーシップの強化です。マイクロソフトとはパートナーシップの歴史が長く、今回、クラウド分野でも連携強化に踏み切りました。日本でも、さらにパートナーシップを深めています。他にもクラウドサービス事業者がいますが、まずはマイクロソフトとのパートナーシップを深めていってビジネス拡大を図ります。ユーザー企業によるクラウドサービスの導入が増えていることも、一気にビジネスを拡大するチャンスとみています。
──そういった意味で、「踊り場を迎えている」と捉えているのですね。
お客様を回っていると、本当に働き方改革の話題が多い。一方、シンクライアントの提供に長けた当社は、働き方改革の“老舗”といっても過言ではありません。当社の製品を使えば外出先からでも社内にいるようにストレスなく業務が遂行できる。働き方改革を必ず成功に導きます。しかも、当社では働き改革に関して困ったことを解決するコンサルティング的な要素の個別ワークショップ「働き方改革ワークショップ」を提供しています。ユーザー企業とパートナー企業に参加いただいています。ユーザー企業ごとに要望は異なります。パートナー企業も、それぞれ売り方が異なる。そのため、一社ごとに話し合って問題を払しょくしています。このような取り組みで、働き方改革の先駆者になることを目指します。
──ワールドワイドで、日本法人はどのようなポジションなのですか。
日本は、まだまだ売り上げが伸びる可能性を秘めています。しかも、クオリティを求めるユーザー企業は、どの国よりも多い。日本の声を吸い上げて機能強化を実現し、加えてパートナー企業との関係をさらに深めていけば、ワールドワイドのビジネス拡大にもつながります。今後は、“日本発”の新しいソリューションを創造することも視野に入れて、ビジネス拡大が継続する環境を整えていきます。
外からみていて、何よりも製品がいいと感じていたんですよね。
ただ、正直いって踊り場を迎えている。では何をすればいいか。
働き方改革の先駆者になることを目指します。
<“KEY PERSON”の愛用品>やすらぎの空間づくり
「やすらぎの空間をつくりたい」という考えから、いつも香を社長室に置いている。平常心を保ちたいからか。一方で、別の効果も出ている。爽やかな香りが漂い、社員からも好評。社員が社長室に入りやすい環境を整えているわけだ。

眼光紙背 ~取材を終えて~
社員や社内の雰囲気を表してもらうと、「全体的に落ち着いた感じ」という答え。働き方改革の“老舗”で安定した業績を維持しているからだろう。一方、時代の移り変わりは早い。さらに環境に対応していくため、「冷静な面はそのままで、ガツガツして熱い部分も出す社風にしたい」としている。
ネットワーク関連業界で複数のベンダーを渡り歩き、多くの製品をみてきたなかで、「NetScaler」を高く評価する。シトリックス・システムズ・ジャパン全体に、もっと製品を売って欲しいというパッションが加われば、「仮想化製品だけでなく、ネットワーク製品も多く売れる」と自信をもっている。働き方改革へのニーズに対応するため、総合的なソリューションの提供を拡大することができれば、「(ネットワークベンダーという)もう一つの顔でも知名度を高めることができる」とかみ締めている。(郁)
プロフィール
青葉雅和
(あおば まさかず)
1984年、日本IBMに入社、SEとして業務に従事。94年、シスコシステムズに入社、エンジニアやセールスなどの部門でマネージャーやディレクターなどを歴任。08年、ファウンドリーネットワークスジャパン社長に就任。09年のブロケード コミュニケーションズ システムズとの統合後も、同社の代表取締役社長として指揮する。17年2月、シトリックス・システムズ・ジャパンのリージョナル バイス プレジデント カントリーマネージャーに就任。現在は、代表取締役社長として手腕を振るう。
会社紹介
米シトリックスの日本法人として、1997年に設立。当初は、「MetaFrame Access Suite(メタフレーム・アクセス・スイート)」を提供し、情報へのアクセスをシンプルにする製品としてユーザー企業を多く獲得した。今は、「XenDesktop」「XenApp」「XenServer」などの仮想化を実現する製品、ファイル共有「ShareFile」、ネットワーク製品の「NetScaler」を提供している。また、クラウドビジネスにも着手しており、クラウドワークスペース「Citrix Cloud」も提供している。