従来型の対策を、AIで補完する
──今年2月、機械学習を使った次世代エンドポイントセキュリティ技術をもつ米Invincea社を買収しました。AIの取り組みに力を入れているようですが。
今後、Invincea社の技術は、ソフォスの製品に組み込まれていきます。今年末頃には、先ほどお話ししたIntercept XにInvincea社の技術を搭載し、新バージョンとしてリリースする予定です。これによって、Intercept Xにはランサムウェア対策やエクスプロイト対策などの機能に加え、シグネチャを必要としないAIベースのアンチマルウェア機能が実装されます。Intercept Xは、すでに導入済みの他社のパターンファイルをベースとしたエンドポイント製品と同居することが可能ですので、従来型の製品をさらに強化する形でご利用いただくことができます。
──従来型の対策と次世代型の対策の組み合わができるということですね。
いま、次世代型のエンドポイントセキュリティが注目されています。しかし、実のところ、例えばマクロが苦手であるとか、AIベースのセキュリティソリューションにも得意不得意があります。AIを使っても、検知率は100%になりませんし、未知の脅威が出てくる以上は、そうだと絶対にいえませんよね。いかに100%に近づけられるかが重要で、防御の多層化が必要になります。当社としては、従来型のシグネチャベースのマルウェア対策と、次世代型のマシーンラーニングベースのセキュリティ対策も提供できる強みを生かし、包括的なエンドポイントセキュリティを提供します。
それに加え、連係するネットワークセキュリティ製品をもっていることも強みです。ただ、シンクロナイズドセキュリティは、当社製品で揃えていただかないと実現できません。現時点では、エンドポイントかネットワークのどちらかで当社製品をご利用いただいているというお客様がかなり多いです。そのため今後は、当社製品をクロスセルで提案することを積極的に進めていきます。
──最後に、この先の目標をお聞かせください。
毎年25%成長を遂げ、3年で現在の倍くらいの売り上げを目標に、取り組んでいきます。そのための大きなトリガーとなるのは、XG FirewallとIntercept Xという二つの製品です。これらは市場に投入してからの日が浅く、日本でまだ浸透していないので、純粋に大きな伸びしろがあると思っています。今後、パートナーを経由してお客様に直接メッセージを届けられるようなマーケティング活動を徹底して行っていく方針です。
従来型のシグネチャベースのマルウェア対策と、
次世代型のマシーンラーニングベースのセキュリティ対策も提供できる
強みを生かし、包括的なエンドポイントセキュリティを提供します。
<“KEY PERSON”の愛用品>かけ心地やデザインがお気に入り」
日本のブランド「999.9(フォーナインズ)」のメガネ。5年ほど前に老眼が始まり、今では「PCやスマートフォンはメガネがないとみられない」という。ちなみに視力自体はよく、「2.0くらいはある」というから驚きだ。


眼光紙背 ~取材を終えて~
長く在籍した日本マイクロソフトや前職のネットスイートでは、ERPなどの業務アプリケーションの日本市場立ち上げに携わった中西氏。その中西氏が次なる新天地として選んだのがセキュリティベンダーであることを当初、意外に思った。
就任を決めた理由を聞くと、「パートナービジネスを推進するソフォスの今後の方向性が、まさしく私自身がこれまでやってきたパートナービジネスの経験を一番生かすことのできるチャレンジだと思ったことが理由」であるそうだ。
シンクロナイズドセキュリティのほか、「Security made simple.」という言葉も、会社として打ち出すメッセージの一つ。製品のシンプルな操作性が評価され、SMBを中心に支持を集めている。今後の方向性として、AIのほか、IoTやFinTechなどのトレンドにも注目している。パートナービジネスを知り尽くす中西氏が、新たな取り組みとともに同社をさらなる成長へと導く。(宙)
プロフィール
中西智行
(なかにし ともゆき)
1971年生まれ。カリフォルニア大学ロサンゼルス校の経済学学士号を取得。米国公認会計士の資格をもつ。約20年にわたり、日本マイクロソフトで勤務。同社では、SMB部門を統括し、Office 365やAzureなどクラウドビジネスの展開をリード。その後、Apple Japanで、法人向けチャネルビジネスを統括。2015年9月、日本のネットスイート代表執行役社長。17年3月20日、ソフォス日本法人の代表取締役に就任。
会社紹介
1985年に英国で設立されたセキュリティベンダー。BtoB向けのエンドポイント、ネットワーク、電子メール、暗号化、モバイルといった幅広いセキュリティポートフォリオを展開し、150か国で10万社以上、1億以上のユーザーを顧客にもつ。日本オフィスは2000年に開設。近年は、グローバルでも掲げている「チャネルファースト」の方針のもと、パートナービジネスに力を入れている。