無停止型コンピュータ(フォールトトレラント=ftServer)を開発・販売する日本ストラタステクノロジー(ストラタス)は、ミッションクリティカル領域に加え、「エッジ・コンピューティング」市場を開拓する。大手流通卸のシネックスインフォテック社長から転身し、昨年4月に就任した松本芳武社長は、ソリューション・パートナーとの協業を強化するなかで、このミッションに挑む。国内のIoT(Internet of Things)市場で存在感を示せるか注目だ。
堅牢で導入容易なIoT
──クラウド市場の盛り上がりを受け、サーバーなど、ハードウェアの需要が年々低下しています。主力製品であるftServer(無停止型サーバー)の市場は、どのような状況ですか。
サーバー市場は年間数%ずつ落ちていくと想定しています。ですが、ftServerを提供するストラタスは、いい意味でも、悪い意味でも、こうした市場動向の影響を受けにくい。標準サーバーの市場でマジョリティを占めるメーカーは、クラウドなどのトレンドに左右されます。当社は「無停止型コンピュータ」というニッチな領域に限ってビジネスをしていますし、今後も成長を見込んでいます。
──ftServerは、ニッチな領域で戦っている限り、市場の影響を受けにくく、勝ち続けられるとみているのですか。
もう少し詳しく話します。当社にとっても、クラウドなどのトレンドの影響がまったくないわけではありません。当社の製品は、スーパーミッションクリティカルな領域と高可用性が求められる領域の両方をカバーしています。前者を求める顧客で、いますぐにクラウドやハイパー・コンバージド・インフラ(HCI)などに移行するケースは少ないでしょう。ただ、ERP(統合基幹システム)をストラタス製品に搭載して高可用性を追求したり、BI(ビジネス・インテリジェンス)のデータベース・サーバーとして使っている場合などは、クラウドや当社と別形態のサーバーとの競争に晒されるでしょう。
──競争に晒される領域は、市場を失うのを待つのですか。
そうではなく、ここを補完するため、当社では、IoTのエッジ・コンピューティング製品の提供を拡大し、ストラタスのプレゼンスを高めるための各種施策を打ちます。高可用性の製品領域が減少する一方で、エッジの領域で市場を拡大していく戦略を打ち出しています。
──グローバル戦略では、ftServerと「コンバージド・エッジ・システム」と呼ぶシステムを組み合わせ、堅牢で導入が容易なIoTのシステムを実現するとしていますね。
オンプレミス環境で成長性が高い領域を検討していくなかで、エッジ領域に方向性を定めました。米本社の分析では90%の企業が「エッジ・インフラストラクチャ」を必要としています。
変わらず、中・低価格帯が主力
──手をつけているIoTの領域としては、センサ・データを扱う領域を担うということでしょうか。
クラウドとセンサ、デバイスの間に入り、かなりリアルタイム、かつ直接的に反応が求められる領域と、集約したデータをクレンジングしてクラウドに上げていく領域で、当社製品の果たす役割が増えています。現場のセンサから発生したデータをすべてクラウドにアップして処理する、ということはアーキテクチャとしてあり得ない。その間に入り、顧客の課題解決に貢献するソリューションを提供します。
──そのエッジ・コンピューティングのビジネスは、すでに立ち上がっているのでしょうか。
エッジ・コンピューティングの領域では、第一フェーズとしてはかなり市場に入り込めています。欧米では、「インダストリアル・オートメーション」と呼ぶ領域である医薬品や石油精製、化学、上下水道などのプロセス産業や、公共インフラなどでストラタス製品の需要が高まっています。
こうしたプロセス産業などで使われるプラントは、システムが長い間使われています。そのシステム刷新時には、デバイスでセンサをコントロールしたり、データにもとづき人間系で判断するといったシステムを採用する傾向にあります。このようなシステムを統合化、あるいはモダナイゼーション(近代化)する際、ヒストリアン(現場で発生するデータの高速収集と大容量データの蓄積に最適化したシステム)に集約するうえで、当社のエッジ・コンピューティング製品が選ばれ始めています。
──企業内のデータ、あるいはセンサから出たデータなどを統合し、新たなデータ活用をするニーズに応える領域において、無停止型のシステムが選ばれているんですね。
「スーパーバイザリーシステム」といっていますが、データを使って、例えば商品の品質の変化をモニタリングするシステムを付加したい場合、異なるシステムにあるバラバラなデータを一つに統合するニーズが高まっています。当社のハイエンドからローエンドのサーバー製品を使い、仮想化技術を搭載して最新の環境にしていくというご用命をいただくことが多いです。
──とはいえ、一般的にftServerというと高額なイメージがあります。手の出しにくい製品になっていませんか。
ストラタスの製品は、数千万円以上する高価な製品をラインアップしているイメージがあるようです。しかし、ストラタスビジネスの過半数は、価格が200~1000万円強のミッドレンジからローエンドの製品で占められています。一般オフィスや製造工場などでも使われていますよ。
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