ソフトで可用性、everRunが浸透
──他のIAサーバーやHCIは、日々技術の進化を遂げています。ストラタス製品はどうなのでしょうか。
インテルやマイクロソフトなどの技術進歩に追随し、つねに最新のプロセッサやミドルウェアを実装するのは基本です。当社ではこれに加え、サーバー製品だけでなく、ソフトウェアで高信頼性仮想化システムを実現する可用性ソリューション「everRun」という製品を提供しています。例えば、顧客が標準ハードウェアを某社のサーバー製品にしていた場合でも、システム全体の可用性を高めるためにeverRunが採用されるケースが増えています。everRunは頻繁にバージョンアップを重ね、技術の進化で顧客の便益を高めています。
──日本法人の社長に就任して1年が経ちました。ストラタスには、どんな力が備わっていると感じておられますか。
もっとも強く感じたのは、当社にはSEが多くいて、頑張っているということです。当社の製品だけでなく、例えば、当社SEがノウハウのあるカード決済で、他社製品上でのシステム開発を頼まれる。つまり、特定分野で活躍するプロフェッショナルが揃っているんです。そういうリソースがあるため一部直販も成り立っていますが、ビジネスの大半はパートナー・ビジネスです。当社製品を扱うパートナーで技術的にもコミットしているベンダーが多いのも特徴です。
──グローバルでは、IoT、エッジの領域を重要視しています。これからどんな施策を展開しますか。
ほぼ1年間のサイクルを経験して思うのは、当社は人材が定着し安定感があるということです。しかし、いままでのやり方を変えたり、サーバー製品のラインアップが増えているのにビジネスのスピード感が変わっていない。グローバルで「エッジ・コンピューティングのプレイヤーになる」という時に、切迫感がない。この1年間、私が、ギャーギャー言ってきたので、だいぶ変わってきたと思っていますが。
ソリューション関連では、製造データを収集、蓄積、解析し品質向上する「YDC SONAR」をもつワイ・ディ・シーやフォグコンピューティン
グの先端技術をもつ米ベンチャー、フォグホーン社とコミュニケーションしています。これらを実際のビジネスにすることが重要なテーマです。顧客の課題に応じ、他社のソフトやミドルウェアのソリューションと合わせて、当社の高可用性を追求した製品の販売拡大をねらいます。
──パートナーリングの重要性が増しているわけですね。
伊藤忠テクノソリューションズなどの既存パートナーとアライアンスも強化していきます。当社のftServerの価格帯がこなれ、everRunなどの認知も高まっていますが、まだ手を付けられていない領域が多いことを相互に認識しています。中堅・中小企業の領域では、富士ゼロックスとパートナーを組んでいますので、全国をカバーする素地がある。まずは、既存パートナー経由の市場ボリュームを上げます。そのうえで、IoT、エッジの領域は、プラスαで伸ばします。今年はエッジ・コンピューティング関連で、200万円を切る価格帯、高可用性を担保したローエンド製品を出します。ITではなく、オペレーションの「OT」の領域で使われる製品になります。私のもっとも重要なミッションは、IoT、エッジの市場を伸ばすことです。
クラウドと、センサ、デバイスの間に入り、かなりリアルタイム、
かつ直接的に反応が求められる領域と、集約したデータをクレンジングして
クラウドに上げていく領域で、果たす役割が増える。
<“KEY PERSON”の愛用品>7年愛用、サイン時の必需品
老舗ブランド「Pelikan(ペリカン)」の万年筆「4001」とボトルインク。2011年に当時の日本HPを退職する際、部下らからプレゼントされた。それから7年愛用。外資系のシネックスインフォテックの社長時には、契約のサインで多用したという。
眼光紙背 ~取材を終えて~
立派な体格で筋肉質。現役のラガーマンだ。加えて、眼光も鋭く、最初に会った人は萎縮することが予想される。松本芳武社長と最初に相対したのは、BCNの周年懇親会であいさつを依頼した時。正直、非常に緊張したのを記憶している。
日本ストラタステクノロジーにきてからも、「社内では厳しく言うことが多い」と、檄を飛ばしているようだ。だが、よく知る人からすれば、気さくでやさしい。一度、ゴルフを一緒に回ったが、ずっと冗談を言い、笑いをくれていた。前述の懇親会あいさつも、見事であり感嘆した。
日本ヒューレット・パッカードで高可用性コンピュータの技術を、前職のシネックスインフォテックでIT流通を経験している。
先端技術はすぐにキャッチアップする。ニッチだが、日本ストラタスを成長に導く適任者であろう。IoT、エッジの新領域に挑み、ここで頭角を現すことが、松本社長の最大のミッションだ。(吾)
プロフィール
松本芳武
(まつもと よしたけ)
1957年12月9日生まれ、東京都荒川区出身。60歳。1982年3月、横浜市立大学商学部経済学科を卒業。同年、横河ヒューレット・パッカード(当時)に入社。ミニコンピュータのシステム・エンジニアとしてOS、データベース、ネットワークを数年間担当したのち、生産管理パッケージの導入コンサルティングを経験。2000年から日本ヒューレット・パッカードでUNIXサーバーのマーケティング・マネージャーや執行役員を歴任。11年からはIT流通大手のシネックスインフォテックの代表取締役社長。17年4月から現職。趣味はラグビー(現役)。
会社紹介
無停止型コンピュータ(フォールトトレラント=ftServer)のメーカーとして1980年創業した米ストラタステクノロジーの日本法人。86年に日本進出(当時の社名は「ストラタスコンピューター」)、91年に現社名に変更。89年にはNECと業務提携。FTシリーズとしてOEM供給しNTTに納入。2005年にはNECがftServerのハードウェアを開発・製造し、ストラタステクノロジーがソフトウェアを開発、両社で分担している。10年には、ftServerシリーズ全モデルでマイクロソフトの仮想化ソフト「Hyper-V」に対応するなど、他社アライアンスを強化してきた。