2012年にNTTデータグループの一員となった日本電子計算(JIP)。当時、NTTデータ側でM&Aを推進した山田英司氏が社長に就任して、まもなく3年が経とうとしている。山田社長は「デジタル」をキーワードに、自社の体質改善を促し、デジタル化時代の顧客のビジネスを支援する体制整備に注力している。
課題改善を着実に遂行
──15年6月にJIPの社長に就任されました。当時のJIPの印象はどのようなものでしたか。
JIPに来て、およそ3年弱になります。前任の社長が見える化をずいぶん進めてくれていたので、会社の状況は非常によくわかるかたちになっていました。ところが、それを紐解いていくと、不採算プロジェクトの発生や、企画型ビジネスの低迷、システム故障が多発しお客様からクレームをいただいていたり、労働時間が長く開発生産性が低いなど、本当に問題山積の状況でした。
JIPの社員は非常にまじめで、業務に精通しているSEが多い。それがJIPの強みだと思っています。
ただ、逆にいうと、お客様のいうことを聞きやすく、求められたことにそのまま応えようとする体質で、それが長時間労働の原因にもなっていました。それをもっと積極的に、アグレッシブにお客様と議論しながら仕事を進めていく、要件のすり合わせが不十分な場合には次の工程に進めない、といったことをしっかりと打ち出せるような社風に変えていけるように、JIPのよさを生かしつつ、アグレッシブさをもたせるようなかたちで進めてきました。
──こうした問題の解決に向け、どのような施策に取り組まれてきたのですか。
16年度から18年度までの新しい中期経営計画では、重点5施策というのを打ち出しています。
一つめは、「マーケティング力の強化」です。これは不採算プロジェクトの発生や企画型ビジネスが低迷している原因として、十分にお客様の動向やマーケットを把握できていなかったからではないかということが背景にあります。
また、問題プロジェクトの原因を洗い出すと、上流工程におけるお客様との要件のすり合わせが不十分であったことが明らかになりました。そこで、「上流工程における徹底した品質のつくりこみ」を二つめの施策としています。
システム品質を高める「開発の自動化と標準化」が三つめ。それから、長時間労働を改善する「働き方の変革」を四つめに挙げ、さらにお客様のビジネスをけん引するためには、人材が非常に重要だということから「人材の育成」を五つめとしました。これらを重点施策として推進しています。
──現状の手応えはいかがですか。
17年度の状況としては、まず長時間労働はかなり減り、業界平均よりもやや下回る程度にまではきました。問題プロジェクトも17年度に入ってからは1件も発生していません。企画型ビジネスについても、企画段階でしっかりとマーケティングを行い、本当にそれはお客様が望んでいることなのかどうかということをきちんと踏まえたうえで、ビジネスを展開できるようになってきています。そうした面で、開発の自動化・標準化も非常に手応えを感じているところです。まだまだ満足できる水準ではありませんが、確実に前進しています。
ミッションは、国内ビジネスの推進
──JIPは、12年にNTTデータグループ傘下に加わりました。その当時、山田社長はNTTデータ側のM&A責任者だったとうかがっています。
当時、私は公共分野と金融分野のカンパニー長という、両分野の事業責任者をやっていて、M&Aの際にはその責任者的な立場で関わっていました。
JIPをNTTデータグループに加えたのは、NTTデータとJIPのビジネスマップを重ね合わせたときに、JIPがうまい具合に補完するような位置づけにある会社だったことです。当時、NTTデータグループは証券業についてそれほど多くの知見をもっていなかったのですが、JIPは証券分野に強みがあります。また、NTTデータは公共分野は強いものの、中規模以下の自治体については必ずしもそうではありませんでした。一方でJIPは、小規模自治体を中心に、中規模程度の自治体の間でもかなりのお客様をもっていて、それも魅力的でした。
さらに、産業分野や一般事業者向けでもさまざまなソリューションをもっていて、こうしたものがNTTデータグループに入ることによってシナジーを生み、さらなる発展につながるのではないかと考えました。
──JIP側としては、どのような課題があったのでしょうか。
JIPは当時、日本証券金融という会社が1番の株主で、そのグループ会社でした。日本証券金融はもともと、証券金融の会社なので、ITの専門家ではないわけです。その傘下で長年の歴史を重ねてきたわけですが、これからの成長を見据えるうえでは、ITを専門とする会社のもとでJIPのよさを発揮するほうがいいのではという考えから、NTTデータとの思惑が一致したかたちになります。
──NTTデータグループにおけるJIPの役割は何でしょう。
1番のミッションは、国内ビジネスを中心に、ビジネス拡大をけん引していく役割です。グローバルなビジネスを展開するわけではなく、あくまでドメスティックな分野において公共、金融、産業、証券、BPOという各事業分野において国内ビジネスの発展に貢献していきます。
NTTデータグループの一員となり、新しい技術の活用や、銀行・証券業界で進む銀証連携における銀行を中心とした金融機関向けの証券系ビジネス、中規模自治体向けビジネスなど、グループ企業との連携によるシナジーが出てきていると感じています。
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