セキュリティベンダーのチェック・ポイント・ソフトウェア・テクノロジーズ(チェック・ポイント)は昨年10月、日本法人設立20周年を迎えた。ファイアウォールのイメージが強い同社だが、それだけにとどまらない製品展開を推し進めている。近年力を入れているのが、統合的な管理でセキュリティ対策を支援する「Check Point Infinity」だ。2015年9月に就任後、約2年半にわたり指揮を振るってきたピーター・ハレット社長に話を聞いた。
レガシーにとどまらない製品群
──昨年10月、日本法人が設立20周年を迎えました。
この20年間で、かなりの実績ができてきました。まずご理解いただきたいのが、チェック・ポイントはサイバーセキュリティに非常に多くの投資を行っていることです。現在の社員4000人強のなかで、およそ3割がR&Dです。チェック・ポイントのファイアウォールやUTM、マネジメント、モバイル、クラウド関連といったセキュリティ製品は、すべてR&Dと脅威インテリジェンスに投資してきたことによってできています。
──ハレット社長が就任されからは2年半ほどになりますが、振り返ってどのような思いがありますか。
私が入社してからも、チェック・ポイントは変わってきました。入社当時の頃は、チェック・ポイントといえばレガシーなファイアウォールのベンダーというイメージが強かったと思います。他の製品や機能もありましたが、日本でプロモートしているのはファイアウォールが中心でした。そこで、パートナー経由で他の新しい製品をマーケットに訴求していこうと取り組んできました。
IT業界で20年の関係ができているところは非常に少ない。今までお世話になってきたパートナーや、新しいパートナーには、ファイアウォールだけでなく、クラウド、モバイル、インテリジェンス、ICS/SCADAなどでも協業していただいています。また、従来はトップエンタープライズを中心にビジネスをしてきましたが、近年では中堅・中小企業(SMB)などのあまりフォーカスしていなかったマーケットにも提供しています。
──近年はSMB向けのビジネスに力を入れているとうかがっていましたが、実際にどれくらいの実績が出てきたのでしょうか。
具体的な数字については言えませんが、私が入社した時と比べると、10倍くらい大きくなっています。日本ではSMBの市場は大きく、非常に元気。ファイアウォールやモバイル関係の製品が売れています。エンタープライズで提供してきたノウハウをSMBにも提供できていることが受け入れられているのだと思います。
「第五世代」のサイバー攻撃に備える
──今後の製品展開については、どのような方向性を描いていますか。
今、当社では「第五世代」のサイバー攻撃というものを提唱しています。第一世代は、1980年代後半以降のPCへの攻撃。第二世代は、90年代半ばからのインターネットからの攻撃。このあたりで、チェック・ポイントは設立されました。第三世代は、2000年代前半からのアプリケーションのぜい弱性を悪用した攻撃、第四世代は、10年代以降の多様なコンテンツを悪用した攻撃のことを指し、それぞれ、アンチウイルス、ファイアウォール、IPS(侵入防御)、サンドボックスで防いできました。そして現在の第五世代では、オンプレミスから、モバイルやクラウドまでを対象に、業界や国境を越えて大規模なサイバー攻撃が行われています。また、新たな攻撃が出てくるにつれて、エンドポイントやUTM、インテリジェンス、モバイルといった対策製品がでてきますが、対策の方法を簡単にしなければ、利用者も疲れてしまいます。
そこで、チェック・ポイントが第五世代に対抗できるものとして、あらゆる環境を防御する統合型セキュリティアーキテクチャの「Check Point Infinity」を用意しています。セキュリティ対策をシンプルに、どこでもどんなプラットフォームに対しても対策機能を提供でき、簡単にマネージできるということが、Infinityのテーマです。チェック・ポイントは課題を理解して、シンプルに考えやすく提供できるものをつくっていくべきだと思います。
──すると、Infinityは、チェック・ポイントのセキュリティ製品を統合的に使いやすくするものということでしょうか。
そうですね。今までのチェック・ポイントのポートフォリオでみると、ファイアウォールとUTM、モバイル、クラウド、ICS/SCADAなどに対し、脅威インテリジェンスを使ってまとめて管理できるセキュリティ対策のノウハウを提供します。
また、次のマーケットとしてアプリケーションにも注目しています。モバイル端末や、車、医療デバイスのなかに「SandBlast Mobile」のSDKを組み込んだりなど、ファイアウォールだけでなく、われわれのノウハウのうえに接続できるところでマーケットをつくっていこうとしています。そのためのR&Dに投資するためのノウハウや資金もあります。これからのマーケットの新しい将来をつくっていこうとしている会社として、チェック・ポイントのことを理解していただきたいです。
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