オープンであることの大切さを学ぶ
──これまでの北岡社長のキャリアのなかで、「つなぐ」ことの大切さを実体験としてお感じになったことを教えてください。
またVAN事業の話になってしまいますが、90年初頭にISDNを使った通信サービスを始めました。これまた若い人には馴染みがない話になってしまいますが、インターネットが登場する前、音声通話は音声通話、データ通信はデータ通信でネットワーク網が分かれていたのです。ISDNは音声とデータを一つの回線に統合した、当時としては画期的な規格で、マルチメディア時代に役立つ通信サービス。私が新卒で入社してまだ10年も経っていない頃でしたので、今でもとても印象に残っています。
当時、カナダのノーザンテレコム(現ノーテルネットワークス)から高価なISDN用の交換機を購入して、私は現場でビジネスを推進していました。今でこそ、ネットで音声や映像、データといったマルチメディア通信はあたりまえになっていますが、当時はコンテンツがほとんどなかった。そこで、同業のVAN事業者に「いっしょに市場を創っていきましょうと」と声を掛けたのです。このプロジェクトは当時の経営トップ同士で話をまとめたもので、私はライバル他社と互いの商品を「つなぐ」担当者をしていました。
──ライバル他社と「つなぐ」とは、また意外ですね。
現場では、その会社とVANの受注競争を繰り広げていましたから、内心では「よりによって競合他社と組むことになるとは」と、腑に落ちないものがありました。ですが、このとき、ビジネスを伸ばすには「たとえライバル他社であっても組むときは組む」ということを学んだわけです。正直、目から鱗が落ちる思いでした。
その後、コンピューターそのもののオープン化が進み、インターネットによって通信もオープンになりました。ISDNを使ったマルチメディアサービスは、残念ながら主流にはなりませんでしたが、このときに学んだ「つなぐ」経験が、その後のオープンビジネスで大いに役立ちました。オープンな世界では、いろいろな会社と組んでビジネスの可能性を最大化する手法が、とても有効ですからね。
──90年代は、まだまだ系列意識が強かったですからね。独立系のインテックだから先行できたのかも知れませんね。
究極的には顧客のビジネスに役立つことであれば、どんなことにも挑戦すべきです。ベンダーだからといって、つくったものや仕入れたものを一方的に売るだけでは通用しません。自分たちの専門性を生かしつつ、顧客のビジネスをもっと伸ばせるよう、いろいろな会社と手を組んでいく。何だったら顧客といっしょにビジネスを興してもいい。そうしたインテックならではの柔軟な発想力を、これからも大切にしていきたいと考えています。
顧客のビジネスに役立つことであれば、どんなことにも挑戦する。
何だったら顧客といっしょにビジネスを興してもいい。
<“KEY PERSON”の愛用品>父親から贈られたオメガの腕時計
課長昇進のお祝いに父親から贈られたオメガの腕時計。高度経済成長期に第一線で活躍した敏腕ビジネスマン。「仕事にも家族にも人一倍厳しい人」だった。そんな父親が「自分のことを気にかけてくれていた」ことがうれしくて、以来18年間、大切に使っている。
眼光紙背 ~取材を終えて~
インテックは、TISインテックグループの中核事業会社の一角を占めている。北岡社長は2012年からの一時期、持ち株会社のITホールディングス(現TIS)経営企画部のメンバーとして出向した経験をもつ。
TISをはじめ事業会社からの出向者で構成する経営企画部門で、グループの経営戦略を立案する仕事に就いていた。「事業会社の専門性や強みをグループ経営に反映させること」で、グループ全体の成長につなげる仕事だ。
インテックからの出向者として、自社の強みを主張しつつ、一方で各事業会社の強みもつぶさに観察。「互いの相乗効果を最大化」できるよう務めてきた。強みを「つなぐ」ことで、グループ全体の強みにしてきた。
今はインテックのトップとして、グループ同士の連携、ビジネスパートナーや顧客と連携した新ビジネスの創造に全力を注ぐ。(寶)
プロフィール
北岡隆之
(きたおか たかゆき)
1960年、兵庫県生まれ。84年、同志社大学商学部卒業。同年インテック入社。2005年、プロダクトソリューション営業部長。08年、N&O事業推進部長。12年、ITホールディングス(現TIS)経営企画部担当部長。15年、BPO事業本部長。16年、執行役員企画本部長。17年、常務執行役員企画本部長。18年4月1日、代表取締役社長就任。
会社紹介
インテックはTISインテックグループの中核事業会社。グループ全体の昨年度(2018年3月期)連結売上高は、前年度比3.1%増の4056億円、営業利益は21.2%増の327億円。うちインテックの売上高は1150億円。TISインテックグループ全体の21年3月期までの中期経営計画では連結売上高4300億円、営業利益430億円を目指す。