レノボとAMDの共通点 チャレンジ精神
――プロセッサーベンダーのAMDから、PCベンダーのレノボに移籍したきっかけを教えてください。
二つあります。一つは個人的なことですが、私は日本がとても好きです。高校生の頃に初めて来日し、日本が好きになりました。日本語が好きになり、日本の古典文学を勉強しました。日本人の家族やキャリアを含めて、滞在期間だけではなく、たくさんの時間を費やし、日本に触れてきました。
仕事面では、自分が愛しているPCの業界で非常に大きな仕事を担うことができるチャンスが来たからです。これまで多くの国でさまざまな業務をやらせていただき、そして今回日本に帰ってくることができました。世界で学んだ多くのことを日本に持ち帰り、日本に対する情熱を組み合わせることができる。そう考えると、やらなかったら後悔すると思いました。
――AMDの時代には大きなライバルがいたと思います。それに対してレノボは日本で大きなシェアを握っています。グローバルでもトップシェアの位置にいます。AMDの時と戦い方が異なるのではないでしょうか。
マーケットリーダーと挑戦者、という違いはあると思います。ですが、AMDとレノボはチャレンジ精神という点で共通点があります。AMDはテクノロジーでさまざまなことに挑戦していきました。挑戦したこと全てが成功するわけではありませんが、ユーザーのために、新しいことに挑戦しようという気持ちがありました。そして私も、失敗してもいいから挑戦したい、挑戦しないと何も起こらないと考えています。
レノボはマーケットリーダーですから、こうした気持ちが失われているのではと心配しましたが、そんなことはありませんでした。マーケットリーダーでありながら、挑戦するというドライブを忘れていない、持ち続けていることに感銘を受けました。こういったチャレンジ精神が非常に自分に合っているのではないかと思います。
――ベネット社長のミッションを教えてください。
二つあります。一つはマーケットリーダーとしての責任を全うすること。どうやって日本のPC市場を活性化できるか、ユーザーの満足度を高めることができるか。この課題をクリアすることが重要だと考えています。
二つめはレノボグループと日本の懸け橋になることです。レノボグループから日本へ、という一方通行になるのではなく、日本でやっていることを世界に展開していきたいと考えています。具体的には、NECPCがこれまで培ってきたクオリティの部分です。すでに米沢事業場や群馬事業場で培ったノウハウをレノボ・ジャパンに取り入れ、改善することができました。またアジア太平洋でも改善がみられています。これを世界に拡大していきたいと考えています。

Favorite Goods
入社日に留目真伸前社長から、入社・社長就任祝いとして贈られたペンケース。留目氏とはAMD時代から約3年にわたる付き合いがあり、その心遣いが非常にうれしかったという。
眼光紙背 ~取材を終えて~
日本が育てた秘密兵器を世界に輸出する
PC業界でのキャリアは11年になる。そのほとんどがAMDだ。2007年にAMDに入社し、日本で約3年、その後はシンガポールなどでグローバルや地域セールスの要職を歴任した。学生時代は日本で暮らした経験もある。約1年、日本の高校に通ったほか、早稲田大学や学習院女子大で日本古典文学を学んだ。こうした経験からベネット社長は「日本と海外の懸け橋」を目指すという。
就任後、まず行ったのが、NECPCの米沢事業場と群馬事業場の訪問だ。NECPCの品質の肝を握っている両事業場を見て「感銘を受けた」という。そのこだわりは組み立て工程だけではなく、梱包する段ボール一つにまで行き渡っていた。一秒でも短縮できるよう、作業工程を徹底的に改善することによって実現した納品スピード、修理対応スピードにも驚いたという。「これが日本の品質だ。グループにとってNECPCは秘密兵器になる」と興奮して話す。
今、世界でも高品質を重視する国が増えてきている。NECPCが長年日本で築き上げてきたノウハウをグローバルに展開していくという。世界から日本へ、そして日本から世界へ。今年39歳の若き社長の手腕に注目したい。
プロフィール
デビット・ベネット
(David Bennett)
1979年11月生まれ、カナダ国籍。トロント大学大学院卒。早稲田大学日本語教育センターで日本語を習得。東京でコンサルタントとして社会人キャリアをスタートさせ、2007年にAMDに入社し、10年の間でコーポレートバイスプレジデントおよび同社のレノボアカウントチームのゼネラルマネージャーを務めた。18年5月に中国レノボグループに入社。バイスプレジデント兼レノボ・ジャパン代表取締役社長、NECパーソナルコンピュータ代表取締役 執行役員社長に就任。
会社紹介
中国レノボグループ(レノボ)は2005年に米IBMのPC事業を買収し、これに伴い日本法人としてレノボ・ジャパンを設立した。レノボは11年にNECのPC事業を買収し、NECパーソナルコンピュータが発足。レノボグループは国内最大規模のPCメーカーグループになった。NEC米沢工場でレノボ製品の一部生産も行っている。なお、レノボは17年、富士通グループのPC事業を担っていた富士通クライアントコンピューティングも傘下に収めている。