リセラー、メーカー双方のビジネスを補完する
――ディストリビューターは他社との差異化がなかなか難しいビジネスかと思いますが、成長戦略を教えてください。
シネックスでは、「ハイブリッド・ディストリビューター」というスローガンを掲げています。商材をただ販売する昔ながらの商社機能に、付加価値サービスを組み合わせた形で、ソリューションカットで商材を提供していく取り組みを数年前から開始しています。また、一部メーカーのデジタルトランスフォーメーションを支援する取り組みにも力を入れています。
――バリュー・アデッド・ディストリビュータ(VAD)を指向せよといった考え方は、IT以外の卸売業でも以前から言われていると思いますが……
より具体的にご説明しましょう。例えば、大手SIerであれば、メーカーや私たちのようなディストリビューターとお取引があり、お客様の課題に対応するソリューションを自社で作り上げることが可能だと思います。そのような企業には、ご要望いただいた商材をタイムリーかつリーズナブルなお値段でご提供する、というこれまで通りのビジネスを継続します。
しかし、ある領域に特化してビジネスを展開されてきたリセラーの場合、ソフトウェアには強いが、ハードウェアは本格的に取り扱ったことがないといったケースがあります。しかし、IoTのような分野が拡大してきたことで、自社の尖った技術や強みを生かすためには、これまでは売ってこなかった商材もそろえないと、お客様に価値を提供できないという時代になってきました。そういうときに、当社が扱っている商材を補完的に組み合わせることで、より多くのパートナーが、お客様に対して課題解決のための提案をしていただけるようになります。
――もう一つの戦略として挙げられた、デジタルトランスフォーメーションはシネックスのビジネスとどのように関係するのでしょうか。
これも先ほどのお話と似ているのですが、大手メーカーは自社で十分なマーケティング施策を実行する力がありますが、すべてのIT商材のメーカーにそこまでの体力やノウハウがあるわけではありません。また、大手メーカーであっても、海外から日本へ初進出する場合、日本特有の商習慣を理解するのに時間がかかったり、あるいは理解できても、日本市場だけのためにいきなり新たな販売体制を構築したくはないというケースは少なくありません。そこで、ECサイトに掲載するコンテンツを最適化したり、デジタルマーケティングの手法でユーザーにリーチし、フィードバックを集めたりと、デジタル技術を活用し、比較的低コストで行えるビジネス支援を強化しています。これらのサービス自体で大きく利益を出すというよりは、こういう活動を通じてメーカーの皆様のビジネスや商材をより深く理解し、ディストリビューターとしての取扱い量を増やすことがねらいです。
――米国からのノウハウ移転では、どのようなことを考えられていますか。
クラウドのソフトウェアライセンスなど、月額課金の商材を簡単に扱えるシステム「CLOUDSolv(クラウドソルブ)」をすでに日本のリセラー向けにご提供していますが、米シネックスでは他にもさまざまなプラットフォームを用意しているので、国内にも順次展開したいと考えています。例えば、米国ではデジタルサイネージのニーズに対して、ディスプレイだけでなく、コンテンツを再生するPCやモバイル回線などをパッケージ化して販売しており、必要なパネルの種類や数、回線を選ぶだけで見積りが出せるツールもご用意しています。日本でも同様に、「こんなプラットフォームがあると、商材の流通がうまくいくよね」という機能を、できるだけ早期にご提供していきたい。
国内では、われわれは同業他社と比べて規模は大きくないので、ボリューム勝負になると不利です。一方でIoTのように、メーカーやカテゴリの違いをまたいで商材を連携させないと、それらの価値をフルに発揮できないソリューションが次々生まれている。このような組み合わせにいかに早く気付き、パッケージ化できるかに、この業界での当社の生き残りがかかっていると考えています。
Favorite Goods
携帯電話をデスクに置いたまま席を離れても、電話を取り逃す心配がないことから、Apple Watchを愛用している。機械式クロノグラフを集めていたこともあったが、機能性ではスマートウォッチに勝るものはないと痛感。過去のコレクションは思い切って売却したという。
眼光紙背 ~取材を終えて~
コンセプトよりも現実の活用シーンを描きたい
事業戦略として「プロダクトからサービスへの転換」を掲げる企業は多い。日本においては、ビジネスパーソン個々人のキャリアもこれに似たような傾向が見られ、多くの人は個別の製品を販売する営業担当者や、それを開発する技術者からスタートし、次第に戦略立案や組織づくりなど、形がない領域の仕事に移っていく。
しかし國持重隆社長のキャリアは、むしろ「形がある」方向へとシフトしてきた。大学卒業後に就職したのは、外資系の大手コンサルティングファーム。その後ソフトウェアベンダー、ハードウェアベンダーを経て、モノの流通自体を生業とするディストリビューターで社長の椅子についた。「コンセプトづくりよりも、情報システムがユーザーの業務を実際にどう変えていくのか、ITへの興味はより現実的なほうに向いていった」
流通業は「間に入って調整をする泥臭い仕事」だが、ITをどのように市場へ届けていくか、活用の現場に近いポジションで考えられる面白さがある。一足飛びに大きな絵を描くような話し方は決してせず、着実に実行できる施策の積み重ねでビジネスの成長を目指す。
プロフィール
國持重隆
(くにもち しげたか)
コンサルティング会社でサプライチェーン管理システムのプロジェクトなどに携わった後、ピープルソフトでコンサルタント、マイクロソフトでDynamics AXのプロダクトマネージャー、デルで法人向け事業戦略などを担当。2017年にシネックスインフォテック(当時)入社、執行役員に就任。18年12月1日付でシネックスジャパン代表取締役社長に就任。
会社紹介
1962年、電子機器・部品商社の関東電子機器販売として設立。89年に丸紅が経営権を取得し、2001年に社名を丸紅インフォテックとした。10年に米IT商社大手シネックス・コーポレーションの完全子会社となり、シネックスインフォテックに社名変更。18年12月1日、現社名に変更。17年11月期の年商は898億6000万円。12月1日現在の従業員数は589名。